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第五十九姉嫁 姉がリトルでリトルが俺で、の巻 そのご

「良いことした後は気持ちが良いわね。」


 うんうんと一人頷くさきねぇ。

 ・・・まぁ結果よければ全て良し、か。

 あとはリムルちゃん次第やね。頑張れ。




「さてと。じゃあ次のカモ、じゃなかった。イケニエを探しにいきましょう!」

「今のそれ、言い換える必要性あった?」

「あら、ヒロの持ちネタの『イケニエは、いけにぇ!』はいいの?」


 俺はそれ好きなんだけど、それやるとみんな悲しそうな切なそうな目で見てくるからつらいんだよ・・・


 また手を繋いで歩くことしばし。

 通りから漂ってくる香ばしい匂いが感じられた。

 これは・・・


「ホーンラビットの串焼きはほんといい匂いするわねー。」

「ね。買って食べようか。」

「ちょい待ち。せっかくだから私に任せなさい!」


 言うや否や串焼き屋の屋台に向かって走り出すさきねぇ。

 そして身振り手振りで串焼き屋のおっちゃんに何かを伝えている。

 ロリさきねぇとおっちゃんは何らかの話をして盛り上がっている。

 そして手を振りながら串焼きを二本持ってこっちに戻ってくる。


「チョロい。」

「またタダでもらってきたのか・・・」

「うわっ・・・、私のカリスマ、高すぎ・・・?」

「それは世界で一番この俺がよく知ってるけどさ。」


 ええ、生まれた瞬間から知ってますとも。


「あとでちゃんとお金払うからね?」

「んー、いいんじゃない? 私だってわかった上でくれたし。」

「マジすか。」

「おじちゃーん! くしやきくださぁーい!って幼女風に言ったんだけど、すぐ『お前、もしかして嬢ちゃんか?』って。」

「あの人何者なの?」

「さぁ? でも私の目を見た瞬間に『この肉を狙う魔獣のような鋭い目つきはムラサキ・・・!』ってわかったらしいわ。」


 ほんとに何者なの? 歴戦の古強者なの?



 串焼きを食べさせあいっこしながら通りを進むことしばし。


「お、ええところにええワンちゃんおるやんけ!」

「なぜ突然関西弁に・・・」


 さきねぇの視線の先には仲良く会話するヴォルフとカチュアさんの兄妹がロックオンされていた。

 ご愁傷様です・・・


「では、行って参ります!」

「ご武運を!」


 敬礼し合う俺たち姉弟。

 周囲の人たちはそれを見て微笑ましい表情を見せている。

 皆さん、この姿に完全に騙されてますね。

 普段のアルゼン住民なら祭りの神輿が動き出したレベルで盛り上がるか、俺たちから距離をとりつつこっそりと何が起こるのか覗くかどちらかだ。


「ん? なんだこのガキ。ムラサキそっくりで気持ち悪ぃな。」

「わ。ほんとにムラサキさんそっくりだね。妹さんかな?」

「アレに妹がいるとか恐ろしすぎて考えたくもねぇわ。ヒイロがかわいそうだ。」


 しかめっ面のヴォルフとは対照的にロリさきねぇに興味津々な感じのカチュアさん。

 いや、ロリさきねぇ(妹)とかいたら俺多分常にヘヴン状態よ?

 まぁさきねぇ(姉)とロリさきねぇ(妹)から『どっちが好きなの!?』とか言われて板ばさみになった結果、胃潰瘍で倒れそうだけど。


「かっこいー!」

「・・・俺?」

「うん!」


 突然笑顔でヴォルフを褒めだすさきねぇ。

 罠だな。いきなり背中を見せて逃げ出した島津兵くらい怪しい。


「・・・ふふふふ。見た目はムラサキのアホそっくりでも中身は全然別物みたいだな。この俺のかっこよさがわかるとは。」

「・・・兄さん?」


 鋭い目つきでヴォルフを睨むカチュアさん。

 やっぱりどこの姉弟兄妹きょうだいもそうなんだね。


「わんちゃん、おて!」

「・・・・・・・・・あ?」


 キラキラ輝くおめめのさきねぇとポカンとした表情のヴォルフ。

 普通にやったのではスルーされると思ったのか、まず『かっこいー!』でアゲてこちらに興味を持たせてからの『おて!』。

 さすがさきねぇ、策士やでぇ。


「わんちゃん、おて!」

「・・・・・・・・・おいガキ。俺は狼人族だ。狼だ。わんちゃんじゃねぇ。わかったか?」

「うん! わかった! おーかみちゃん、おかわり!」

「そういうことじゃねぇよ!」


 ガルルと威嚇するヴォルフ。

 子供相手に大人気ないなあいつ。


「はぁ~、おてもおかわりもわからないの? だめなわんこねぇ」

「こ、このクソガキ・・・!」

「落ち着いて! 兄さん、お願いだから落ち着いて! 小さな女の子だよ!?」

「わかってる、わかってはいるが見た目がムラサキそっくりのガキだから余計に腹が立つ・・・!」


 カチュアさんに宥められながら歯軋りするヴォルフ。

 こえーよ。普通の子供だったら泣いてるわ。

 まぁ今相手にしてるのは明らかに普通の子供じゃないからキレ気味なのかもしれんが。


「おーかみちゃん、おすわり! ちゃんとできたらほねあげるほね!」

「・・・なぁカチュア。このガキ、もしかしてムラサキ本人とかいうオチじゃねぇーだろうな?」


 お、ヴォルフ鋭い! 正解! 横取り40万!


「さ、さすがにそれはないんじゃないかなぁ・・・?」

「おーかみちゃん、おすわりもできないの? じゃあおーかみちゃんはなにができるの? なにもできないの? ばかなの? けんをふりまわすことしかのうのないのうきんなの?」

「こいつムラサキだろ絶対! この煽り方絶対そうだ! 正体を現せコラァ!」


 沸点の低いヴォルフ氏、キレかける。

 しゃーない、ここいらで終了かな。

 三人に近づいていき、陽気な調子で声をかける。


「と、ここでネタばらし! 実はここにいる幼い姉弟、二人とも仕掛け人!」

「これにはさすがのわんちゃんも苦笑い!」

「なぁ、お前ら殴っていいか?」


 元気よく腕を上げるさきねぇに、口角が若干ぴくぴくしているヴォルフ。


「それにしてもこのわんちゃん、ノリノリである。」

「黙れ。」

「怒れるヴォルフ氏。しかしこの後、驚くべき事実が明らかになる!」

「その妙なノリやめろムカツク!」


 地団太を踏むヴォルフ。

 俺たち姉弟には鉄板のネタなんだが、やはり異世界人には通じないようだ。残念。


「はぁ、はぁ・・・くそ、やっぱりお前らなのか。」

「おっすぼるきち!」「カチュアさんもこんにちわ。」

「こ、こんにちわ・・・子供になっちゃうなんて異常事態でも普通に挨拶するんですね?」

「まぁ小さくなっただけだしね?」

「ねぇ?」

「「ワハハハ!!」」


 俺たちが二人揃って大笑いしている中、『こいつらメンタルやばいな』みたいな顔をしている獣人兄妹。

 一応かくかくしかじかと事情を説明する。


「なるほど・・・えっと、大変?です、ね?」

「ん? いやー別に。楽しんでるわよ?」

「ですよね・・・」


 さきねぇの返事に苦笑いのカチュアさん。


「まぁさきねぇの知的好奇心を満たすいしずえになってくれてありがとな親友!」

「今度から黒髪の人間を見かけたらいつでも攻撃に移れるように準備しとくわ。」


 同じことついさっき言われたわ。


「しかし、そんな姿で戦えんのか?」

「あーいや、けっこう弱体化してるから外にはいかん。今日はアルゼンで遊ぶだけ。」

「・・・なんか危なっかしいからついていてやろうか?」


 急に心配そうな声を出すヴォルフ。

 ヤダ、優しい! ちょっとキュンときたわ。サンキュー親友。


「は? デートの邪魔すんなし。」

「てめぇが最初にちょっかいかけてきたんだろうが、ボケ!」

「あぁ? やんの?」

「おぉ? やるか?」


 ガンつけ合うさきねぇとヴォルフ。

 仲がよろしくて何より。


「まぁ遅くても今日中で元に戻るらしいから大丈夫。ありがとな。」

「・・・ならいいんだけどよ。」

「気をつけてくださいね?」

「ふっ、この私を誰だと思ってるかしら?」


 心配してくれる兄妹に髪をかきあげて答えるさきねぇ。

 いや、あなたがどんな人物かよくわかってるからこその心配ですよお姉さま。


「じゃあ俺らはもういくわ。メンテに出してた防具取りにいかないといけなくてな。」

「了解。んじゃまたなー」

「それじゃあ失礼します。」

「ちゅーべえばいばーい!」


 手を振ってヴォルフたちと別れる。


「・・・さて、次はどうしますか姉上。」

「決まってるでしょ。いつ元に戻るかわからないし、目指すはあそこしかないわ。」

「ですよねー。」


 二人で目的地を目指して歩くことしばし。

 俺たちの前にはお馴染みといっても過言ではない場所、冒険者ギルドがあった。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


実は串焼きのシーンはもっといちゃラブ感を出す予定だったのですが、力及ばずあの短さに。

最近良質ないちゃラブげーが全く出ないため、私のいちゃラブゲージが全く溜まりません。ちくしょう。

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