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第五十八姉嫁 姉がリトルでリトルが俺で、の巻 そのよん

「おーい! 無理だとは思うが、イタズラするにしても出来るだけ人の迷惑にならないようになー!」

「タイチョーめっちゃ理解ある大人じゃーん! そういうおっさん好きよー!」

「頑張りまーす!」


 手を振ってタイチョーさんたちと別れたのだった。




 二人仲良く手を繋いで街の中を歩く。

 子供目線だから慣れ親しんだアルゼンもなんか新鮮だわ。

 てゆーか、子供視点だと歩いてる時にすれ違う冒険者こえーな。

 でかい大人が武器持って歩いてると威圧感がすごい。

 あと声でかいし口調も乱暴だし立ち振る舞いも粗野だし格好も雑というか清潔感があまりない。

 冒険者が人気ない理由がこれかー。

 あとでレポートにしてラムサスさんに提出するとしよう。

 人に優しく、クリーンで暮らしやすい街を目指していきたいですね。

 冒険者向けにマナー講座でも開くか? でも参加するやついるかな?

 うーん・・・


「お、カモはっけーん。」


 色々考えていると、さきねぇの嬉しそうな声が俺の耳に届く。

 さきねぇの視線の先にはスレイとリムルちゃんが。

 可愛い後輩をカモ扱いはやめようね?


「ちょっと遊んでくるわ。ヒロはここで待ってて。」

「あんまりいじめないようにね。」


 手をひらひらさせながらスレイたちに向かっていくさきねぇ。

 不安だ。不安だが、それ以上に面白そうなので物陰からじっと眺める。

 お、スレイたちの会話が聞こえてきたぞ。


「なー、何も買わないなら俺いる意味なくね?」

「別にいいじゃん、暇でしょどうせ。」


 ウインドウショッピング中か。

 スレイももうちょっとリムルちゃんの気持ちを汲み取る努力を・・・いや、難しいか。

 すぐ怒鳴るし殴るしな、あの子。あれで『実は大好き!を汲み取れ』は酷だな。

 スレイ、無罪。


「いや、こんな街中ブラブラしてるだけだったらヒイロさんにお願いして訓練でも付き合ってもらいたいわ。」

「はぁ!? 何それ!! 私とヒイロさん、どっちが大事なのよ!」

「え、なんで突然キレてんの? つーかヒイロさんに決まってるだろ普通に。めっちゃお世話になってるし。」


 で、出たー。暴力ツンデレの必殺技の一つ、『どっちが大事なのよ』ー。

 つーかスレイ、お前、俺のこと好きすぎだろ。


「そ、そうかもしれないけど! 私だってお世話してあげてるじゃない!」

「・・・誰も頼んでないっての。」

「なんですってぇ!?」


 スレイの胸倉を掴むリムルちゃんとめんどくせぇって顔してるスレイ。

 はぁ・・・なにあの鈍感難聴主人公と暴力系ツンデレ幼馴染の鏡みたいなやり取り。

 どっちの頭も棍棒ちゃんで殴りたい。んで説教したい。

 頼まれてもいないのに人の恋路に頭突っ込む気はないからしないけど。

 そんな痴話げんか中の二人にリトルさきねぇが近づいていく。

 そして。


「だいた「おとうさん! あいたかった!」・・・え?」


 両手を組み、うるうるした目でスレイを見上げているリトルさきねぇ。

 固まるスレイとリムルちゃん。


「おとうさん? えっと、人間違いじゃないかな?」

「・・・おとうさん、すれい・えんはんすって名前だよね?」

「え、どうして俺の名前を?」

「やっぱり! おかあさんがいったとおりのひとだわ! あいたかったよおとうさん!」

「え? え?」


 さきねぇの美幼女演技にめっちゃキョドってるスレイ。

 一方、リムルちゃんはというと。


「す、すすす!? どっどどどどどどどどど!?」


 多分『ス、スレイ!? 一体どういうことよ!?』と言いたいんだろうが、あまりの動揺で『す』と『ど』しか発音できていない。

 あのもなー、リアクションはめっちゃ面白いんだけどなー。

 もうちょっと素直に好意を伝えられたら脆いスレイ砦なんてすぐ陥落すると思うんだがなぁ。


「おかあさんが『わたしになにかあったらあるぜんにいるすれい・えんはんすというひとにあいなさい。あなたのおとうさんよ』って。」

「い、いやいやいやいやいやいや! え、君、俺の娘なの!? お母さんは誰なの!? 俺まだ女性経験ゼロだけど!?」


 女性経験ゼロならじゃあお前の娘じゃないだろうが。アホか。


「ス、スレイ・・・せ、せせせ責任はとととらなくちゃダ、ダメだとおもうにょ?」


 顔面蒼白ながら正論を紡ぐリムルちゃん。

 最後の『にょ?』はちょっとかわいかった。3ポインツ。


「母親は誰なんだ・・・いつ出来た子供なんだ・・・」

「えっと、お名前は? 歳は? どこから来たの? 大丈夫よ、お姉さんはあなたの味方だからね。」


 テンパり中のスレイと、必死に子供に語りかけるリムルちゃん。

 こういう時は女性の方が強いというか頼りになるね。

 俺の中のリムルちゃん株がグーンとアップしたわ。

 ・・・さて、そろそろいいだろう。


「ドッキリ、大成功ー!」

「デッデデーン!」

「「・・・・・・」」


 三人に駆け寄り声をかける。

 さきねぇは勝利のダブルピースだ。

 スレイとリムルちゃんはキョトンとしている。


「・・・えっと?」「・・・どゆこと?」


 ~説明中~


「・・・とまぁこんな感じですたい。」

「「・・・・・・」」


 俺の説明が終わると二人は死んだようにグッタリしていた。


「せっかく子供の姿になったんだったら色々やりたいじゃない!?」

「なんかドッと疲れました・・・」

「普通に考えればスーの年齢でこのくらいの子供がいるわけないでしょ? 観察力と洞察力不足ね。家によってはバッカモーン!とかたるんどる!って怒られてるわよ?」


 どこの昭和のお父さんですかね。


「今度から黒髪の人間が近づいてきたらどんな容姿であろうとムラサキさんとヒイロさんと仮定して戦闘態勢をとることにするっす・・・」

「それはいいな! 常在戦場の心構えや良し!」

「「・・・・・・」


 あれれー、二人の目が淀んでるぞー?


「よし、ではかわいい後輩たちにドッキリ参加賞としてこれをあげましょう!」

「なんすか・・・?」


 さきねぇの差し出した紙を嫌そうな顔をしながらもちゃんと受け取るスレイ。

 お、あれは・・・


「いつもの店の『カップル限定バニャニャパフェ無料券』よ!」

「え・・・!?」


 さきねぇの発言にめっちゃ食いつくリムルちゃん。

 俺たちが使おうと思ってたやつを譲渡するとは珍しい。

 さすがに少しは罪悪感はあったらしい。ほんとにちょっとだけど。

 まぁ俺たちは無料券使わなくても普通に食べてるからいいしね。


「でもこれ、カップル限定じゃないっすか。」

「別に二人でいって『カップルーでーす』って言えばいいじゃない。」

「でもなぁ・・・」

「スレイ! ムラサキ先輩たちの好意を無駄にする気! 後輩としてそんなことは決して許されないわ!」


 目がめっちゃキラキラしてるリムルちゃん。

 しゃーない、援護射撃してやるか。


「スレイ、いっとくけどバニャニャパフェめっっっちゃ美味いぞ。普通に食べたら500パルくらいするけど。」

「ご、ごひゃくパル・・・! それが無料・・・いくか!」

「そうこなくっちゃ! さぁスレイ、さっそくいくわよ!」

「お前甘いもの好きだなぁ。じゃあムラサキさん、遠慮なくいただくっす。あざっす!」

「ムラサキさん、ヒイロさん、あざっす!!」


 ルンルン気分でスキップするリムルちゃんに引きづられるように遠ざかるスレイ。


「良いことした後は気持ちが良いわね。」


 うんうんと一人頷くさきねぇ。

 ・・・まぁ結果よければ全て良し、か。

 あとはリムルちゃん次第やね。頑張れ。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。

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