第五十五姉嫁 姉がリトルでリトルが俺で、の巻 そのいち
皆さんとてもお久しぶりです。藤原ロングウェイです。
その遅筆ぶりから飛べない不死鳥の通り名もあるよ。
仕事や私生活で色々ありましたが更新です。
ノエル宅。
いつものようにキャッキャウフフと遊んでいた俺たちだが、ノエルさんがチョコマカと動き回っていることに気付いた。
「ノエルさん、なんか忙しそうですけどなにかあったんですか?」
「あー、二人とも。急ですまんが今日から出かけることになった。二週間か三週間か、そのくらいは帰らんと思う。」
あら、けっこう長い。
普段ノエルさんが出かける時はどんなに長くても一週間くらいで帰って来てたからな。
「けっこう長いですね。アレですか、ダンジョン攻略とかですか?」
「!? ダンジョン攻略といえば私の出番ね!」
自信満々に胸を張るさきねぇ。
なんでやねん。あんた中級者ダンジョン一回潜っただけやろが。
「いや、違う。そっちの方がずっと気楽だったんだがな・・・もうすぐ種族大会議の時期でな。それに参加することになった」
「「「種族大会議?」」
さきねぇと顔を見合わせる。
やはりいつ見ても俺の姉はかわいい。
「ニコ生のアレみたいなもんかしら?」
「絶対違うということだけは断言できる。」
にこなまって何?って顔してるノエルさん。
説明がめっちゃ難しいのでスルーしていただけると助かります。
「十年に一度くらいの割合で各国の王と各種族の長たちが集まって話し合う会議があるんだ。それに呼ばれててな。あぁめんどくさい・・・」
「じゃあいかなきゃいいじゃん? じゃんじゃん?」
さも当然のように仰るお姉さま。
あなたじゃないんだから・・・
「それもそうなのだが、さすがにこればかりはな。」
「もしかしてエルフの代表でいくんですか?」
エルフは引きこもりだから、森の外で生活してるノエルさんなら適任かな?
しかし、ノエルさんは俺の発言をハンッ!と鼻で笑い一蹴した。
「まさか。もし仮に私がエルフの代表で会議に参加するなら第一声は『上質な木材を大量に用意して各国、各種族の繁栄に役立てよう』だな。」
「あの、多分俺が想像している通りだとは思うんですけど、一応聞きますね。その木材はどこから調達するんですか?」
「?? エルフどもの森に決まってるだろ?」
輝くような笑顔を見せるノエルさん。
破軍炎剣ェ・・・
「どうせクソエルフどもは引きこもっているだけなんだ。森の98%くらいは切り開いても文句はあるまい。」
いや、あるよね。絶対文句あるよね。黙殺してるだけだよね。
「そ、それはさすがにやりすぎでは?」
「そうか? じゃあ97%くらいなら平気かな?」
首をかしげながら、曇り気のない純粋な目で俺を見るノエルさん。
平気じゃないでしょ。98%から97%ってほぼ誤差の範囲でしょ。
「ひょっとしたら95%くらいならエルフも譲歩してくれんじゃない?」
「95%か~。うーん、千歩譲っても嫌だなー」
名推理!みたいな顔のさきねぇと納得いかなそうな表情のノエルさん。
鬼かこいつら。そもそもあんたらの土地じゃないでしょ。
あとノエルさん、千歩譲っても嫌ってつまり絶対嫌ってことですよね?
そしてさきねぇの『ひょっとしたら』発言の意味がわからないよね。
何がどうひょっとしたら自分たちの土地の95%を奪われることに同意してくれるんだよ。
天才たちの考えることは凡人にはわからないよ・・・
「まぁあり得ない話をしてても意味はないな。話を戻そう。私は冒険者枠だよ。一応数少ない現役のS級冒険者だからな、ギルドの要請で参加するのさ。恐らく他のやつらも来るはずだ。」
「なるほど~」
つまり三王国の王様にエルフ、ドワーフ、獣人の偉い人が来るのか。
ギルドも参加するってことは教会の人たちもくるんだろうし、大商人とかも来るのかな?
とにかくかなりの規模の会議みたいだな。
「そんな会議に呼ばれるなんて、さすがノエルさんですね!」
「ま、まぁなまぁな! このくらいはな!」
長いお耳がピコピコ動いている。かわいい。
「まぁというわけで少しの間留守にするが、いい子にして待ってるんだぞ。いいな? 特に具体的に誰とは言わないが約一名。」
「だってよヒロ。いい子にして待ってなきゃダメよ? お姉ちゃんとの約束chu!」
「「・・・・・・」」
無言の俺とノエルさんだった。
「それで何をチョコマカしてんの? 会議の時の服装に悩んでるとか? 私が選んであげようか? ランドセルとか。」
「絶対に断る。」
ノエルさんがランドセル背負ったらめっちゃかわいいだろうけど、ランドセルがどんなものか知ったら大炎上事件が発生しそうだ。
「いや、何。一応王族どもと会う訳だからな。あいつらの先代とか先々代からもらった国宝のサークレットやら腕輪やらを持っていかないといけない、んだが・・・」
「・・・だが?」
「どうでもよすぎて魔法袋じゃなくて奥の倉庫に突っ込んでてな。さっきやっと見つかったよ。あっはっはっは!」
おいおい、笑とるで。
国宝を別荘に放置とか、俺みたいな小市民と比べてスケールがでかすぎますね。
「ノエル様ー! いらっしゃいますかー!」
外から声が。
この声は・・・
「ラムサスさんですか?」
「ああ。一応連れていこうと思ってな。」
「なるほど。元A級冒険者で現ギルド支部長ですもんね。いらないとは思いますけどノエルさんの護衛的な?」
「まぁ役割としてはどれぃ、じゃなくてげぼ、でもなくて、アレだ。えーっと・・・し、使用人?」
なんとかして良いイメージの言葉を捜した結果が、使用人。
つまり雑用兼面倒事丸投げ担当ですね、わかります。
「ノエル様ー!」
「わかってる! 今いく!」
「・・・エルエル、奥の倉庫覗いていい?」
「ん? 別にかまわんが、変なのには触るなよ?」
「うん!」
良い返事をして力強く頷くさきねぇ。
良い返事すぎて恐ろしさしか感じない。
ノエルさんも苦い顔をしながらも『まぁいっか』的な感じで席を離れた。
「よっし、探検よ!」
「なんか怖いなぁ・・・」
「大丈夫、お姉ちゃんがついてるゾ!」
人差し指をピンと上げるさきねぇ。
そのお姉ちゃんが恐怖の原因なのです・・・
倉庫に入る。
奥の倉庫はなかなかの大きさなのだが、物が乱雑に置かれている上に埃まみれなので今まで中に入ったことはなかった。
今は人が通れる程度のスペースが出来ていた。
「お! いきなり年代ものっぽい宝箱発見!」
「あ、ほんとだ。」
倉庫の隅に古めかしい感じの小さな宝箱っぽい箱が置いてあった。
さきねぇが宝箱に駆け寄る。
「・・・むらさきは ふるびたたからばこを みつけた!」
「ちょっと待て。変なのに触るなっていってたでしょ。」
「古びた宝箱は変なのじゃないですー。レアアイテムが入ってるやつですー。」
そんな屁理屈を捏ねながらさきねぇが宝箱を開けた瞬間、箱の中から大量の黄色い煙が噴出した!
「ぶふぁ!」
「さきねぇ!」
何かを考える前に俺の体はさきねぇに向かって突撃していた。
煙が充満しているせいでよくわからないが、さきねぇらしき体に触れたのでそのまま抱きしめる。
そして状態異常回復効果のある≪聖杯水≫を飲ませるために魔法袋からコップを取り出した。
のだが。
「コップでかいな!?」
いつものコップを取り出そうとしたはずなのだが、かなりでかいコップを出してしまった。
まぁコップの大きさなんてどうでもいい。今はさきねぇに≪聖杯水≫を飲ませるのが先だ。
もしこの煙が毒で俺が手遅れになったとしても、さきねぇだけは助けなければ死んでも死にきれん。
「さきねぇ、コップ! ≪聖杯水≫入ってるから飲んで!」
「ヒロ先に飲んで!」
「さきねぇが先! さきねぇが飲まないんだったら俺も飲まない!」
「まったくもう!」
室内に煙が充満しているので前も見えないが、なんとかさきねぇの手にコップを渡す。
「コップでかいな!?」
「俺も思ったけど! とりあえず飲むだけ飲んで!」
すぐにゴクッゴクッという音が聞こえる。
「プハー! 飲んだわよ! ヒロも早く飲んで!」
「もちろん!」
俺も≪聖杯水≫を飲むためすぐにマイコップを取り出す。
「コップでかいな?!」
「それさっき私がやった!」
「その前に俺がやってるし! 俺の著作権的なやつだし!」
どんな時でもアホな俺たちだった。
それから少ししてフッと倉庫から煙が消える。
「おお、煙消えた。もう、なんなのよあれ! 判決はエルエル有罪!」
「まず人の家にあった人の箱を開けたさきねぇが有罪ですよね。」
そんな話をしながら室内を見渡すと、先ほどとは違う場所にいた。
いや、厳密に言えば違うというよりは『そっくりだけど何か違和感がある』というか・・・
「なんか変じゃねさき、ね・・・」
「・・・・・・」
さきねぇは俺を見て固まっている。
そして俺もさきねぇを見て固まってしまった。
「「なんじゃこりゃぁぁぁ!?」」
そこにはまるで子供のように小さくなったさきねぇの姿があった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
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またも『悪徳領主ルドルフの華麗なる日常』で有名な増田匠見(旧master1415)先生とコラボしました(笑)
その名も『続・あくおれ!~悪魔?と弟の楽しい異世界生活~』!
そして同じ話がはしらちゃん視点で書かれている『続・あくおれ!~悪魔な妾(おれ?)の華麗なる異世界生活~』を増田匠見先生の方で書かれています!
なんと向こうの一話では初月姉弟の部屋の中が公開chu!
どんな部屋か予想はできても実際に読んでみると「マジで言ってんの?」って感じです(笑)
よろしくお願いします!




