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第五十三姉嫁 どきどき!あねおれ学園!の巻 そのさん

「ねぇ、あなたはバカなんですか?」

「バ、バカじゃないです・・・」


 足を組んでイスに座っているノエルさんと、震えながら床に正座しているマリーシアさんの姿があった。




「生徒にいかがわしい行為を強要しようとしてたって報告があるんですよ。これ、普通に懲戒免職ものですよ?」

「じ、事実無根です! そんなことしてません! 証拠はあるんですか証拠は!?」

「ふーん・・・」


 ノエルさんはおもむろにスマホを取り出し、何かしらの操作をする。

 するとスマホから音声が流れ出す。


『全く。緋色くんは先生にひどいことをいったので放課後職員室に、いや、美術室・・・むしろ体育倉庫にきてください!』


「な!? なぜそれが!?」

「匿名で私のスマホに送られてきました。」

「匿名って、あの場にいた人間でノエル先生の連絡先知ってるのなんて二人しかいないじゃないですかぁぁぁ!! ジュース奢ったのにぃぃぃ! よくも騙したムラサキィィィィィ!!」


 血涙を流しながら絶叫するマリーシアさん。

 うちのお姉さまを見ると、とても楽しそうな笑顔を浮かべていらっしゃいました。


「・・・で? 申し開きは?」

「殿、この藤吉郎めが小粋なジョークで教室の場を暖めておきました!」

「殺すぞ。」


 半笑いのマリーシアさんの軽い冗談、か~ら~の~『殺すぞ(真顔で即答)』。

 ノエルさん、容赦ないですね。

 マリーシアさんもガクガク震えだしている。


「申し訳ありませんでしたー!」

「お前さ、マジふざけんなよ? 今のご時勢、それで許されると思ってんの?」

「どうか、どうかご容赦を・・・!」

「もう一度聞くぞ。お前、バカだろ?」

「はぃぃぃ、バカですぅぅぅ・・・お許しをぉぉぉ・・・」


 泣きながら土下座するマリーシアさんだが、ノエルさんの目は養豚場のブタを見るかのように冷ややかだった。

 さすがにかわいそうだな。


「ちょーっと失礼しまーす!」

「緋色。」「緋色くん!」


 声を張り上げて生徒指導室の中へ突入する。

 ちょっと困った顔のノエルさんとは対照的に輝く笑顔のマリーシアさん。

 とりあえずまぁまぁみたいな格好で二人の間に割ってはいる。


「あのー、ノエルさん。マリーシアさ、先生も本気で言ってるわけじゃないですし、俺も冗談だってわかってるのでその辺で許してあげてください。」

「しかし・・・」「緋色くん女神かよ!」

「女神じゃねーわ。」


 よくわからないことをほざきだすマリーシアさん。

 この人もぶれねぇな・・・


「・・・はぁ。被害にあった生徒がこう言ってるので今回は見逃します。が、次は潰すぞ。」

「ははぁー!」

「職員室に戻ってよし。」

「ハッ!」


 敬礼をした後、疾風のように走り去るマリーシアさんだった。


「いやーさすがエルエルよね。素晴らしい対応だったわ。」

「校内だからちゃんと先生と呼べ。」

「はいはい。」

「はいは一回!」

「はーい!」

「伸ばさない!」


 母親かよ。


「全く、もう時間もないから早く食べよう。」

「おーいえー!」


 そう言うとかばんの中からお弁当箱を三つ取り出すノエルさん。

 この世界でもノエルさんがご飯作ってんのかよ。

 大変だろうし、夕飯は俺が作るか。


「では、いただきます。」

「「いただきます!」」

「はい、召し上がれ。」


 こうして、生徒指導室で先生のノエルさんと学生服姿で生徒のさきねぇと三人で摩訶不思議な食事をとるのだった。




 そして、放課後。


「さて、帰りますかねー。あ、その前にちょっとお花摘みいってくるわね。」

「あいよー。」

「先に帰っちゃダメよ? 怒るし泣くわよ?」

「帰んないよ。早くいってきな。」


 さきねぇが教室を出ようとするが、Uターンして戻ってくる。


「あと私がいなくなった隙に女が近づいてきたら全員首をへし折りなさい。」

「なんで!?」

「人に擬態したエイリアンだからよ?」

「世界観がわからないよ! 学園ものなの!? SFなの!?」

「ジャンル分けするなら、人生とは人の夢と書いて儚いファンタジーなのよ?」

「もはや何の話かわからない!!」


 やっと教室から出て行くさきねぇ。

 すると。


 ピロリン!ピロリン!ピロリン!ピロリン!


 俺のかばんの中から電子音が鳴り響く。

 不審に思って中を探ると見慣れないスマホが入っていた。


「誰のだこれ・・・?」


 取り出して画面を確認する。

 そこには『放課後になったよ! どこにいこうかな?』という文字と、デフォルメされた学校の中っぽい地図が表示されていた。

 加えて『二年生の教室』『一年生の教室』『廊下』『職員室』『保健室』『屋上』『下駄箱』という選択肢も浮かんでいる。

 まさか・・・


「まさかこの世界、ただの学園ものじゃなくて学園恋愛アドベンチャーゲームの世界なのか・・・!?」


 とりあえず『二年生の教室』をタップすると、めちゃくちゃかわいい黒髪の女の子のSD絵が出てきた。

 黒髪ロングだし巨乳だし腕を組んで自信満々そうなところから見てもこれはさきねぇだろうな。

 ということは『一年生の教室』をタップするとクリスとかか? でも『保健室』は誰が出てくるんだ?

 ちょっとドキドキしながら『保健室』をタップする。

 出てきたのはめちゃくちゃかわいい黒髪の女の子のSD絵だった。


あんたかい。」


 つい口に出して突っ込んでしまった。

 気を取り直して『一年生の教室』をタップしてみる。

 出てきたのはめちゃくちゃかわいい黒髪の女の子のSD絵だった。

『廊下』をタップ。

 出てきたのはめちゃくちゃかわいい黒髪の女の子のSD絵だった。

『職員室』をタップ。

 出てきたのはめちゃくちゃかわいい黒髪の女の子のSD絵だった。

『屋上』をタップ。

 出てきたのはめちゃくちゃかわいい黒髪の女の子のSD絵だった。

『下駄箱』をタップ。

 出てきたのはめちゃくちゃかわいい黒髪の女の子のSD絵だった。


「さきねぇしか出ないんですけど!?」


 何これすごいな。攻略ヒロイン姉オンリーとかマニアックすぎるというか潔すぎるだろ。

 バグなんだろうか、それとも仕様なんだろうか。

 俺は全然困らないけど、一般ユーザーからはすごいクレームきそうだなこれ。

 つーかどれ選んでもさきねぇなら選ぶ必要なくない?と思っていると、ブッブー!という音がした。

 スマホの画面を見ると『残念! 時間切れ!』という文字が。


「時間制限あんのかよ!? どこにも経過時間書いてねぇぞ!?」


 クソゲーじゃねぇか。せめてマニュアルよこせや。


「ただーまー。よーし、帰るわよー!」

「ういー。」


 さきねぇがお花摘みから戻ってきた。

 やっぱ時間切れでもさきねぇか。フルコンプですね。




「ありがとうございましたー。」


 さきねぇと二人でスーパーで買い物をして帰る。

 人は異世界基準なのに、スーパーの場所とか売ってるものは日本のやつなんだよな。

 なんか頭がこんがらがってきた。


「今日はカレーね?」

「にんじんとじゃがいもとたまねぎと豚肉とカレー粉を買って夕飯がカレーじゃなかったら逆に恐ろしいけどね。」

「わからないわよ? 鍋で煮込んでる時に合体事故を起こして外道スライムカレーが生まれる可能性も・・・?」

「結局カレーだ!?」


 まぁ頭がこんがらがっていようと会話はいつもどおりなんですけどね。




「ただいまー。」


 家に帰り夕食を作っているとノエルさんが帰ってきた。

 玄関まで出迎える。


「おかえりなさいノエルさん。」

「今日はカレーだな? いいにおいが外まで漂ってたぞ。いつも夕飯を作らせてすまんな緋色。」

「いえいえ。いつもお世話になってますし、朝昼とご飯作ってもらってるしこれくらいは。あ、お風呂沸いてますよ。先に入っちゃってください。」

「じゃあお言葉に甘えようかな。今日も疲れた・・・」

「お疲れ様です。」


 そんな会話を交わしていると、ドアの向こうからさきねぇが顔だけ出してこっちを睨んでいた。


「な、なんだ紫。なんだその顔は。」

「・・・私の目の前でヒロと新婚ごっことかケンカ売ってる? 喜んで買うけど? いくぞコノヤロー!」

「べ、べべべべべべ別にそんなのしとらんわっ!!」


 イノキみたいな顔になってるさきねぇと、顔を真っ赤にしてプルプル震えながら大声をあげるノエルさん。


「はいはいはいはい。ノエルさんは先にお風呂に、さきねぇはテーブル拭いて待機。オーケー?」

「はぁーい。」「う、うむ。」


 そそくさと風呂に向かうノエルさん。

 さきねぇはちょっと不満顔だ。


「新婚さんごっこに関してはあとで部屋でやるので機嫌直してください。」

「まぁ! なんて素晴らしい弟なのかしら! 良い子に育ってくれてお姉ちゃん嬉しいぞっっっっっ!」


 どこぞのだだ甘お姉ちゃんみたいなことを言いながら抱きついてくるさきねぇ。

 まったくまったくもう。


「あ、カレー煮立ってる。」

「はわわ!」


 カレーを煮込みながらいちゃつくのはやめましょう。




「さて。二人とも、もう遅いからそろそろ寝なさい。」

「あ、はい。わかりました。」「まだ23時過ぎじゃーん。早くなーい?」

「子供は寝る時間だ。」

「まぁ!」


 ノエルさんの言葉に手で口を押さえる仕草をするさきねぇ。

 その目は『今からジェットストリームアタックを仕掛ける!』とでも言いたげな妖しい輝きを放っていた。

 何をする気だ。


「大人なエルエルは私たちが寝た後いったいどんなことをなさってるのかしら?・・・エロ。」

「エ、エロ!? エロくないし! 普通に明日の準備だし!」

「エロ。あーエロい。ヒロ、早く寝ましょ? エロいのがうつったら大変よ。」

「だからエロくない!」


 ニヤニヤしているさきねぇと、顔を赤くしながらアタフタするノエルさん。

『エロい』という単語だけで赤くなるとか、この人純情すぎるな。かわいいけど。

 うちのお姉さまは立ち上がるとき普通に『よっこらセッ○ス』とか言っちゃうからな。

 この反応は新鮮ですね。


「 ・・・緋色! 違うからな! 別にエロいことしてないからな!?」

「わかってますから落ち着いてください。エロいエロい連呼しすぎです。ヤツの術中にはまってますよ。」

「クッ・・・」


 顔を赤くしてプルプル震えるノエルさん。


「さて、エルエルもからかったことだし一緒に寝ましょうか。」

「別々の部屋だぞ!」

「えー、姉弟だし別にいいじゃーん。イミフー。」

「姉弟でもダメ! 緋色の教育に悪い!」


 俺の教育方針をめぐって争うのはやめてー。


「でも私23時過ぎに寝ないといけない子供だからヒロと一緒に寝るー! はーい! ちゃーん!」

「大人だからダメ!!」

「もう、子供って言ったり大人って言ったり、大人ってほんと汚いわ。あとエロい。」

「だからエロくない!!」


 言い合いを続ける二人。

 俺はいつになったら寝れるんでしょうか。




 結局さきねぇとノエルさんは廊下に立ちっぱ20分近くやりあっていたが、さすがに疲れたらしく各自の部屋に入っていった。

 そして俺も自分の部屋に入り、ベッドで横になり目を閉じる。

 ・・・なんか疲れたな。

 さて、今日の出来事は夢なのか、それとも現実なのか。

 異世界での出来事は事実なのか、幻なのか。

 ・・・まるで胡蝶の夢だな。

 まぁいい。どちらにしてもさきねぇがいるのだ。

 夢だろうが現実だろうが、さきねぇがいる場所が俺の世界だ。

 それ以外のことは、とりあえず寝て起きてから考えよう。

 では、おやすみなさい。




 ――――――――――――――――――――


「・・・これ、売れますー?」

「バッカヤロー大人気で完売御礼だっつーの!」

「マジっすかー?」


 さきねぇと朱雀さんが言い合っている。

 なんでもゲームに飽きた朱雀さんが自分でゲームを作りたいと言い出して、なぜかそのツクールゲームのシナリオをさきねぇに依頼してきたのだ。

 そして出来たシナリオを朱雀さんが読んだのだが、微妙そうな顔をしている。

 まぁそうだよね。攻略ヒロイン姉一人のAVGとか狙いがピンポイントすぎだよね。


「じゃあとりあえずこれで作るっすー。」

「ボイス入れる時は声かけてね! あ、でもエロボイスは事務所的にNGなんでゴメンネ!」

「全年齢だから大丈夫っすー。じゃあ頑張るっすー。」

「売り上げは半々でいいからねー!」


 ばっさばっさと羽を広げながら飛び立つ朱雀さん。

 すげぇ目立つけど、噂とかになんないのかな。『アルゼンにフェニックスが!?』みたいな。


「よーし、今から印税の計算するわよー!」

「気が早いな!?」


 ルンルン気分のさきねぇなのでした。



 ・・・ちなみに、作品の出来と結果に関してはノーコメントで。

 人生、そんな甘くはないのでしたとさ。

 ちゃんちゃん。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


これにて学園編の終了です。

頑張ればもっと話は広げられたと思うんですけどね。体力と時間の限界でした。無念。

次の更新は・・・年内にもう一回あねおれSSでも投稿できたらいいな、という願望です。

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