第五姉嫁 外伝『遥か彼方の物語 そのさん』
今回の更新で一月分の投稿は(多分)終わりです。次回更新も何話かまとめて投稿できたらいいな。
問題は、ヒロくんとムラサキさんの結婚前の話を思いついたらあねおれに追加するべきなのか、あねおれFDで書くべきなのか・・・なんも考えてません!防具の話どうしよう!?
「りんぴょーとーしゃーかいじんれつざいぜん!来るんだナ!≪火炎王蛇≫!」
コハクくんが空中に指で何かを描きながら叫ぶと、目の前にコハクくんよりも大きな炎の蛇が現れたのだった。
その炎の蛇はコハクくんの足にからみつき、そのまま体を這うように右腕に移動する。
そして剣に巻き付くと、真っ赤に燃え盛る炎の剣が出来上がった。
「ばーちゃん直伝!炎剣プンプン丸!」
ダサッ!見た目はかっこいいしコハクくんもドヤ顔だけど、名前ダサッ!
誰かは知らないけど、おばーちゃんネーミングセンスないな・・・
「ハク、それ絶対あの母に騙されてると思うわ。気に入ってるんなら別にいいけど・・・」
呆れながらもマシロちゃんは呪文を詠唱する。
「我は水。我は黒。我は生と死を司るモノ。我は世界に零れ落ちた、命の始まりの一滴・・・玄武様、どうかその御力をわたしに御貸しください・・・≪四神招来・玄武変≫!」
マシロちゃんの存在感が爆発的に増えると同時に、マシロちゃんの周囲に黒い霧のようなものが立ち込める。
なんなんだこの二人は・・・俺より強いとかそういうレベルじゃないんだけど。
「合わせなさいハク!」
「ガッテン!」
風のような速さでキューティーベアーに接近したマシロちゃんが、やつの顔面を殴りつける!
「ギャウ!?」
「まだまだぁ!」
すさまじい速さの連打がキューティーベアーに突き刺さる。
あれ、俺だったら一発でアウトだろうな・・・
「てりゃあ!」
マシロちゃんが全力でキューティーベアーの顎を蹴り上げると、やつの上半身が浮き上がる。
「ハク!」
「任せるんだゾ!必殺、コハクストラーッシュ!」
コハクくんの炎剣が、キューティーベアーの胸元に隠されていた魔石を斬り裂く!
魔石に徐々にヒビが入り、そして。
「グ、グォォォォォォォォォォ・・・」
この森で最強と言われるキューティーベアーは、断末魔を上げながら光となって消滅したのだった。
「しろねぇ、やったんだナ!」「ハク、やったわね!」
姉弟も抱き合って喜んでいる。
俺は助かったのか・・・?
情けないことだが、俺はへなへなと地面に座り込んでしまった。
「しろねぇ!決め台詞の出番だナ!」
「そうね!いくわよー!せー、の!」
「斬刑に処す。その六銭、無用と思いなさい・・・」「お前はオレを怒らせたんだナ・・・」
「「・・・・・・」」
「この前これにしようって決めたじゃない!」「オレはこっちのがいいんだゾ!」
今度はケンカし始めた。
これだけ見てるとホントに子供だな。
「ま、まぁまぁ二人とも。せっかく勝ったんだし、決め台詞を決めるのは森を出てからでいいんじゃないかな?」
「・・・はぁ。それもそうですね。さすがにわたしも魔力がカラッポでフラフラですし。」
「今ベッドに潜ったら一瞬で寝れる自信があるんだナ。」
「・・・ハク、あなた、いつもベッドに入った瞬間眠ってるわよね?」
「・・・・・・・・・ハッ!? ね、寝てないんだナ!?」
「おうちに帰るまでは頑張って起きてよね?」
「が、がんばるんだナ・・・」
その時、後ろでパキッと木の枝が折れる音がしたので振り向く。
そこには。
「グルルルルルルルルルルル!」
「「「・・・は?」」」
さきほどの個体よりも大きいキューティーベアーがいた。
「とぉぉぉちゃぁぁぁぁぁん!キューティーベアーは『めったに出現しないレア魔物』じゃなかったんだナー!?」
「・・・まさか連戦になるとは思わなかったわね。運がいいのか悪いのか・・・」
「ふ、二人とも・・・どうする?」
俺が震える声で尋ねると、マシロちゃんは一瞬目を閉じ。
「・・・わたしがこいつをひきつけるから。二人は先に逃げて。」
そう答えた。
「い、いくらしろねぇでも一人じゃ無理なんだナ!?」
「そうだよマシロちゃん!」
マシロちゃんは俺とコハクくんをかばうように前に出ると、こちらを振り向き、笑った。
「ふふ、無理だろうとなんだろうとね。弟のためにがんばっちゃうのがお姉ちゃんなんだよ?」
黒のグローブをはめなおし、構えを取るマシロちゃん。
「わたしが相手よクソ熊・・・『姉』の力、思い知れ!」
マシロちゃんがそう叫んで踏み出そうとした瞬間。
「その年齢でその力、その度胸、そして、その覚悟。素晴らしい。」
声が聞こえた。
暖かい何かに包まれるような、けれど冷たいナイフを突きつけられているような、形容しがたい感覚に襲われる。
いつのまにか、俺たちのすぐそばにタキシードに三角帽子とマントをつけた、おかしな格好をした背の高いイケメンが立っていた。
「突然失礼。あの方たちにそっくりの気配と匂いだったので来てみたのですが、どうやら人違いだったようで。ですがここまで瓜二つとなれば、きっとご家族か親類縁者なのでしょう。これも精霊様のお導きですね。」
そう言うと男はキューティーベアーへと歩いていく。
警戒のためかマシロちゃんもコハクくんも声を発しないので、俺が声をかける。
「あ、あなたは?」
「私は・・・一言で説明するのは難しいですが、あえて一言で言うなら『あなた方の味方』です。」
「・・・なぜ?」
「実は昔、あるお方に命を救われましてね。そのご恩を返すためにここまでやってきたのですよ。」
マシロちゃんは怪訝な顔をしている。
知り合いじゃないのか?
突如現れた変人は話をしつつも歩みを止めず、ついにはキューティーベアーの目の前で立ち止まった。
「実は先ほどからお話は聞かせていただいておりました。『義見てせざるは勇なきなり』。とても良い言葉です。ですが・・・」
「グォォォォォォォォォ!」
突然キューティーベアーが変人に向かって右手を叩きつけた!
変人はぺしゃんこになって死んだ。俺はそう思った。
だが。
「残念ながら、今のお二人ではまだコレには勝てないでしょう。先ほどの個体は発生したばかりで弱かったのと、たまたま運が良かっただけです。勝ち目がない、もしくは勝てるかどうかわからないのに特攻することは、勇気ではなく蛮勇というものですよ。・・・私が言うのもなんですがね。フフッ。」
変人は何事もなかったかのように話し続けている。
信じられないことではあるが、変人はキューティーベアーの攻撃を指一本で止めていた。
嘘だろ・・・
キューティーベアーも俺と同じように考えたのかもしれない。
怯えるように一歩後ろに下がる。
「・・・・・・・・・ゥグォォォォォォォォォォォォ!」
だが、プライドが傷ついたのか、怒ったキューティーベアーが立ち上がり、両腕を高く持ち上げ一気に振り下ろそうとする。
「愚かですね。いくら今の私が人の姿だとはいえ、力量差もわからないとは。所詮は人語を理解できなければ話すこともできない、ただの魔物ですか。いえ、この姿では威圧すらできない私の未熟さゆえ・・・ですかね。では一瞬だけ本気を見せてあげましょう。」
変人はそう言うと。
「・・・・・・ブヒ。」
なぜか聞こえたブタの鳴き声とともに、俺は巨大な岩に叩き潰されたような圧力を受け、気を失ったのだった。
「・・・うぅ。」
「お、気が付いたか。」
「こ、ここ、は・・・?」
「ここはギルドの休憩室だよ。」
ギルド・・・?
確かにギルドの匂いがするし、この場所も見覚えがある。
あれ、この人って・・・
「・・・あ!ス、スレイ副支部長!」
「やっとお目覚めかルーキー。」
「お、俺は一体?」
「覚えてないのか? 森で気を失ってたところを担ぎ込まれたんだよ。」
・・・あれは現実の出来事だったんだろうか。それとも夢だったんだろうか。
「あ、あの!スレイ副支部長!実は聞いていただきたいお話が・・・!」
「ん? ああ、いいぜ。聞こうじゃないか。」
俺は森での出来事を話した。
二人の少年少女に出会って助けられたこと。
キューティーベアーに襲われたこと。
謎の変人のこと。
「・・・というわけなんです。あれはもしかして、森の精霊だったのでしょうか?」
だって、あんな危険な場所に子供がいるはずがない。
なのに。
「・・・は? クククク、ぶわーはっはっはっはっは!」
「ほ、ほんとなんです!今話したことは!信じてください!」
「クククク。いやいや、信じるよ。というより、その変人が何者かは知らんが、子供たちはれっきとした人間族だ。まぁ普通の、とは言いがたいけどな。なんてったってあの二人の子供だし。」
「あの二人・・・?」
俺の言葉に、スレイ副支部長は目をパチクリしている。
まるで常識はずれな事を聞いたかのように。
しかし、すぐに合点がいったように頷く。
そして俺は。
「そういやお前はこの街に来て日が浅かったな。なら仕方ない、教えてあげようか。この街で『あの二人』っていったらある姉弟、いや、夫婦? まぁある男女を指すんだよ。その二人っていうのは、かの有名な・・・」
彼らの正体を知るのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
謎の変態紳士の正体とは?そして『あの二人』とは一体・・・!?
続きは・・・どうしましょうかね(笑)
作者の好きな展開その3
・謎の助っ人が颯爽と現れる
・姉力、全開!