第四十七姉嫁 とびだせ、えるふの森!の巻 そのさん
感想いただきました。ありがとうございます。
そのさんにきてやっとあねおれらしくなってきた!多分!
「ムカツクわね。私、無理やり従わせられるのって嫌いなのよね。この森燃やそうかしら。」
「それもアリといえばアリだな。」
いや、どう考えてもないでしょ。
ムカツクから燃やすとかテロリストかよ恐ろしいわ。
それに同意するノエルさんもノエルさんだが。
「ぐ、ぐぬぬぬ・・・!」
「ヒロ、がんば!」
「ヒイロ、もうちょっとだ!」
あれからいくつもの看板を通り過ぎた。
加えて、ただ歩くのも暇なので<エルフの詩>突破訓練を実施している。
まずエルフの詩の結界内に入った時にさきねぇが違和感を覚えるかどうか、そしてその違和感を疑惑に変えて結界を突破できるかどうかを試した。
結果だけいえばこれはけっこう簡単にできてしまった。
今ではさきねぇは気合を入れておけば結界内の暗示を無視して普通に思考して行動できる。
さすが俺のお姉さまや!
そして、俺。
えー、めっちゃ難しいです。
結界にひっかかると、例えば『カラスは白い』が当然の常識として頭が認識してしまう。
結界を突破するということは『カラスが白い』ことが常識の人間に『カラスは本当は黒い』と納得させるようなもんなのだ。
個人的感覚としては『1+1=2が間違っていることを証明せよ』と言われてる感じ。
意味がわからないと思うが、俺も意味がわからない。
「ウオォー! ウオォー! 右! 右! 俺は右にいくぞぉぉぉぉぉ!!」
「「みーぎ! みーぎ!」」
カンバンには『← エルフの里』と書かれている。
俺個人としてはめっちゃ左にいきたいのだが、さきねぇとノエルさんは右を応援してる。
俺の中では今『すごく左にいきたい』という欲求と『右にいかなくてはいけない』という姉愛と祖母愛が壮絶な戦いを繰り広げているのだ。
「がんばれ♥ がんばれ♥ ほら、エルエルも一緒に! ジャンプも忘れず!」
「が、がんばれ! がんばれ!」
さきねぇとノエルさんは応援で使うポンポンを両手に持ち、ジャンプしながら応援してくれている。
さらにさきねぇはわざわざ丈の短い服に着替えてジャンプするごとにおへそチラリさせている。
ここまで応援されて負けるわけにはいかない!
「うおー! シスコニックオーラ、全開ぃ!!」
右の道に向かって走り出す俺。
気分は崖に向かってダイブ状態だが、そんなの関係ねぇ!
「ッダァァァー!」
「イェー!」
右の道を数メートル進んだあと、後からやってきたさきねぇとハイタッチをかわす。
「よくやったなヒイロ。応援があったとしても、自力でエルフの詩を突破できる人間なんてそうそういないからな。」
「ありがとうございます!」
つらい試練を乗り越えて、俺のレベルがまたひとつ上がったのだった。
まぁエルフの詩の結界は大森林以外ではノエルさんの森くらいしかないらしいので、この試練に意味があったかは謎だが。
「はいヒロ、疲労回復の姉玉よ。」
「さんくー。」
さきねぇから姉玉をもらい口に含む。
姉玉とはさきねぇが作った特製の飴玉である。ちなみに材料は秘密らしい。
美味しいので砂糖とはちみつと姉の愛とかだろう。多分。
深くは考えないようにしている。
今まではくねくね曲がった道ばかりだったが、ついに真っ直ぐな道に出る。
そして道の向こうには民家が見えた。
「あそこがそうなん?」
「ああ、あそこが大森林のエルメリアの里だ。人間が里に入るなんて数十年ぶりだろうからビックリするだろうな。フフフフ。」
「アレかしら、『キャー、人間よ!人間がきたわ!すぐ逃げないと!』みたいな感じかしら。」
「だろうな。まぁ私がいれば危害を加えられることはないから安心しなさい。」
そんな話をしながら、ついにエルフの里に到着する。
「なんかアレね。まんまRPGに出てくるような森の中の集落!って感じね。」
さきねぇの言葉通り、たしかに木の家だったり巨木の上に家が建ってたりとファンタジー臭がすごい。
しかし、ある一点だけRPGには絶対存在しないものが異臭を放っていた。
「・・・ハンモック多くね?」
そう、木の家だったり巨木の上に家が建ってたりとファンタジー臭がすごいのに、なぜかそこかしこに大量にぶらさがってるハンモックがそれを台無しにしていた。
「エルフどもの生活は大体家の中のハンモックから起きて、外でハンモックで昼寝して、家の中のハンモックで就寝する感じだ。」
「エルフ、ハンモック大好きだな!?」
なんか逆に疲れそうな気もするが・・・
「エルエルはハンモック使わないわよね?」
「どうしても里を思い出すからな・・・それにハンモックで昼寝なんて無警戒なことはできん。」
「さすがS級冒険者ですね。」
「ふっ、まぁな。」
ドヤ顔のノエルさん。相変わらずかわいい。
その時、ハンモックで昼寝していたエルフの人がこっちを見たと思ったら急いで櫓っぽい建物に登り出す。
すると。
カンカンカンカン!
金属音が周囲に響き渡る。
そして。
「ノエルだー! ノエルが出たぞぉー!」
・・・ん?
あれ、『人間が来たぞー!』じゃないぞ。
エルフの人の叫び声が続く。
「すぐに避難しろぉー! 逃げ遅れたら死ぬぞぉー!」
「キャァー! ノエルよー!」
「家の中に入れ! 鍵を忘れるな!」
「早く子供を中に入れろ!」
「いい、何があっても絶対に外に出ちゃダメよ!」
「精霊王様、どうかご加護を・・・!」
ハンモックで寝ていたエルフたちが一斉に起き出し家の中に篭る。
ハリウッド映画並みのパニック&パニック。
そして数分後、エルフの里は静寂ではなく無音が支配する空間となった。
「・・・リアルで『そして誰もいなくなった』状態だね。」
「つーかエルエル、何したの?」
「ベツニナニモー?」
明後日の方向を向いてピーピーと口笛を吹くノエルさん。
うさんくせぇ。
そう思っていると、大きな家の中からエルフのおじいちゃんが出てきてこっちに近づいてきた。
「まだ生きてたかクソジジイ。」
「相変わらずじゃのうお前は。」
苦々しい顔のノエルさんと苦笑しているエルフのおじいちゃん。
もしやこの人が・・・
「あー、このジジイがグリム・エルメリア。一応大森林のエルフの長老の一人だ。」
「付け加えると、ノエルに魔法の手ほどきをしたのはワシじゃ。」
「え!? じゃあノエルさんの先生ってことですか?」
「違う。」「そうじゃな。」
二人の声がかぶる。どっちやねん。
「・・・ところでノエル。この人間の子供たちはなんじゃ。身の回りの世話でもさせているのか?」
困惑気味のグリム長老。
いえ、逆に身の回りのお世話をしてもらってる者です。
「・・・・・・私の家族だ。」
「・・・・・・は?」
顔が真っ赤なノエルさんと、ポカーン顔の長老。
「だ、だから。わ、私の、か、かかか、家族だ。」
「・・・・・・・・・ノエル、お前、ついにボケたのか?」
「それはてめぇだろクソジジイ燃やすぞ。」
あぁん?って感じで詰め寄るノエルさん。
ノエルさんがすげぇヤンキーみたいになってる・・・
これがアレか。レイリアさんとかラムサスさんとかが言ってた荒れてた頃のノエルさんなのか。
「あの、ノエルさん。抑えて抑えて。俺、いつものノエルさんが好きですよ?」
「エルエル、ヤンキーみたいよ? うちの弟に悪影響だからやめてもらえるかしら?」
「むっ!? そ、そうだな。すまんなヒイロ。」
んんっ、と顔を真っ赤にしながらも咳払いをするノエルさん。
「ちょっと、私には?」
「お前はそんな繊細な性格ではないだろうが。」
「はいはい女親女親。」
「だから親ではない!」
ポカポカと叩き合うさきねぇとノエルさん。
そして何が起こっているのか全く理解できてない顔の長老だった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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人生で初めて♥マーク使いました。




