第四十六姉嫁 とびだせ、えるふの森!の巻 そのに
感想と評価いただきました。やっぱり作品を投稿して何かしらの反応があると嬉しいですね。
ありがとうございます。
「ほい、ここが大森林入り口前だよ。」
「ありがとうございましたー。」
馬車がゆっくり遠ざかっていく。
それなりの日数はかかったけど、なんとかエルフの森の近くにたどり着きました。
到着地点は森から数百メートルは離れてるが、なんかの協定があって普通の馬車ではここまでしか来ちゃいけないらしい。
しかし、遠目からでも森のでかさがわかるってすげぇな。
「エルフの森、でかいね。」
「なんか探したらトトロとか十匹くらいいそうね。一匹くらい捕まえられないかしら?」
「いやぁ絶対強いでしょアレ。気合ためからの痛恨とか普通に放ってきそう。防御力無視の4倍ダメージ。食らったら即死でしょ。」
「何を言ってるのかよくわからんが、さっさといくぞ。」
ノエルさんに連れられて森を目指すことしばし。
森の目の前にやってきた。
「さて、入るぞ。」
「え、入るぞってここ入り口じゃないですよね。」
「いや、ここが入り口だ。」
そこには森の奥へ続く、馬車が一台なんとか通れるくらいの道があった。
でもここは入り口じゃない。他を探さないと。
「さすがにここは入り口じゃないですよノエルさん。迂回して入り口を探しましょう。」
「ん~? なんかおかしくない?」
さきねぇがしきりに首をひねっている。
なんぞ?
「何が? なんかおかしいとこでもあった?」
「いや、入り口じゃないんだけど、どうも入り口のような気がするのよね・・・?」
「なにそれなぞなぞ?」
何が言いたいのかさっぱりわからん。
だから、ここは入り口じゃないんだって。
「ふむ。やはりムラサキなら感じ取れるか。」
「「え?」」
ノエルさんが息を吸い込む。
そして。
「んっんん、ら~♪」
かわいい声で歌を歌いだす。
なんだ、歌を歌うと入り口が開くのか。風の魚の歌なのか。
「・・・さて、これでいいな。ヒイロ、目の前にある道はなんだ?」
「え? そりゃあ・・・」
俺の目の前には森の奥へ続く、馬車が一台なんとか通れるくらいの道がある。
「・・・どう見ても入り口ですよねこれ!?」
「ああ、入り口だな。でもさっきまではこれが入り口だと思わなかっただろう?」
「・・・あ!?」
さきねぇが声を上げる。
「もしかして、これが噂の≪エルフの詩≫の結界?」
「ふっふっふ、その通りだ。」
(※『エルフの詩』に関してはあねおれ本編の第十九姉や第九十二姉に出てきたよ! すごい昔だね!)
ノエルさんが両腕を組み、背筋を伸ばす。
あ、これは説明モードだ。
「≪エルフの詩≫は生物の意識を逸らすエルフ固有の結界魔法だ。どういうことかと言うと、この森の入り口には『ここは入り口じゃありませんよ』という結界が張られている。なのでほとんどの人間が目の前にある入り口を入り口だと思わず素通りしてしまうのさ。さっきのヒイロみたいにな。」
「な、なるほど・・・あれ。じゃあさっきのさきねぇの反応は?」
俺の質問に苦笑いで答えるノエルさん。
「たまにいるんだよ、ムラサキみたいに異常に勘が鋭い人間がな。まぁそれでも『なんかおかしい』程度の違和感しかなかっただろうが。」
「いやー実はちゃんとわかってたんだけどねーエルエルの説明するパートを奪ったらかわいそうだなーっていう私の、なんつーの? 心意気? よね!」
「あっそ。」
ノエルさん、COOL!
「ちなみにさっきの歌は私の魔力を声にして結界にぶつけてかき消したのさ。そのうち修復されてしまうからさっさと先に進んでしまうぞ。」
「「ラジャー!」」
ノエルさんを先頭に森の中へ入っていく。
「しかしすごいですね、エルフの詩。いつ術中にはまったのか全然わかんなかったっす。」
「これの恐ろしさは、術にかかった本人がいつエルフの詩の影響下におかれたのかわからないところだからな。」
「汚いなエルフさすがエルフ汚い。」
そんな感じで道をまっすぐ進んでいくとしばし、無人の広場に出る。
そして広場の左右にはさらに道が。
「エルフとの交易許可が出ているものはこの広場でエルフと物や金のやりとりをする。」
「ここで、ですか? エルフの里じゃなくて?」
「ここだ。あの超排他的でクソ引きこもりのエルフどもが人間を里にいれるわけがない。」
「でもエルエルは私たちを里まで案内してくれるのよね?」
「当然だろう。やつらの静寂をぶち壊してやるわ。」
「「クククククク!」」
もうテロリストに近いな俺ら。
おっそろしい話やでぇ・・・
あたりをキョロキョロ見渡していると、広場の奥に看板が立っているのが目に入る。
そこには・・・
「『→ エルフの里』?」
超排他的なのになぜ道案内の看板が?
「ノエルさん、これは右にいけばいいんですか?」
「いや、左だ。」
「え」
だって、『→ エルフの里』って書いてあるけど・・・
「あれ、もしかして、俺、エルフの詩にかかってます?」
「いや、かかっていない。あの看板は単純にエルフの里に誰も来て欲しくないから置いてあるフェイクだ。」
「最悪だなエルフ!」
「これから先に進むといく先々で看板があるが、エルフの里にいきたいなら書いてある方向と真逆にいけばたどり着く。」
「クッソ簡単じゃない。つーかいじわるクイズみたいなのでそんなんなかった?」
とりあえず左に歩を進める。
歩くこと数分、T字の分岐点にたどり着く。
看板にはまた『→ エルフの里』の文字が。
「じゃあこれは左で?」
「そうだな。」
「ゴーゴー!」
また左に進むことしばし。
今度はY字分岐点に『→ エルフの里』の看板が。
「これも左か。」
「ずっと森の中だから同じような道ばっかねー。」
「まぁ迷路みたいなもんだろうしね。迷いの森ってやつでしょ。」
「じゃあ隠しゴールに入らないとクリアできないわね。ヨッ○ーと鍵と羽マント用意しなきゃ。」
「マ○オかよ。」
懐かしいなおい。
またまた左に進むことしばし。
さっきと同じようなT字分岐点に『← エルフの里』の看板が。
「左ですね。」
「う~ん・・・」
さきねぇが看板をツンツンしだす。
「どったの?」
「ん~・・・なんか変な感じなのよね?」
「そう? でも看板には左って書いてあるから左でしょ?」
「まぁそれもそうなんだけどねー。」
といいつつ看板ツンツンをやめないさきねぇ。
なんか不審な点でもあるんかね?
「んん・・・ら~♪」
突然ノエルさんが歌を唄いだす。
「さて、ヒイロ。私はさっきなんと言ったかな?」
「えっと、『看板に書いてある方向とは逆にいけ』と。」
「そうだな。じゃあ看板にはなんて書いてある?」
そりゃさっきはっきりと確認したからわかるよ。
『← エルフの里』の文字だよね。
「「・・・右だ!?」
俺とさきねぇが衝撃を受ける。
そうだよ逆なんだから右だよ当たり前じゃん!
「だからさっき話したろう? 『これの恐ろしさは、術にかかった本人がいつエルフの詩の影響下におかれたのかわからないところだ』とな。」
「いや、これ普通に無理ゲーでしょ!?」
いつ洗脳されたかわかんないとか恐ろしすぎるわ!
「じゃあアレじゃない? 道とか看板無視して森の中突っ切るのは?」
「それも難しいな。エルフの詩の第二結界は『茂みの中には入らず道に沿って歩こう!』と『看板に書いてあることは正しいよ!』だ。絶対に道を歩きたくなる。道を歩けば看板にいきつく。看板が目に入ったらもう終わりだ。いつのまにか入り口に戻ってる。」
「ムカツクわね。私、無理やり従わせられるのって嫌いなのよね。この森燃やそうかしら。」
「それもアリといえばアリだな。」
いや、どう考えてもないでしょ。
ムカツクから燃やすとかテロリストかよ恐ろしいわ。
それに同意するノエルさんもノエルさんだが。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




