第四十五姉嫁 とびだせ、えるふの森!の巻 そのいち
いったい誰が同月に二度更新すると思っていたでしょうか。私も思ってませんでした。
というわけで久しぶりに筆がノリノリだったので更新します(笑)
ノエルさんの故郷、大森林のエルフの里のお話で全五話になります。
あねおれFDに足りなかったノエルさん分を補給できたらいいなと思っております。
よろしくお願いします。
「あ、ヒイローさん! お手紙が届いてますよー!」
「手紙?」
ギルドにいくとマリーシアさんが手紙片手に走り寄ってきた。
そこに颯爽と割ってはいり仁王立ちる我らがお姉さま。
「私がもらうわ。」
「え。いえ、ヒイロさんに手渡すのでちょっとどいてもらっていいですかムラサキさん。」
ジリジリと間合いを計るさきねぇとマリーシアさん。
なんかバスケの試合みたいだな。
「へいパス!」
「!? ヒイロさんパス!」
「甘い!」
マリーシアさんのへなちょこパスがさきねぇによってカットされる。
そして。
「しゅーと!」
「100ポインツ!」
「ああ! ずるい!」
さきねぇが俺の手をぎゅっと握り手紙を俺に手渡す。
つーかずるいってなんや。俺はアイドルか。
「ん~・・・って俺じゃなくてノエルさん宛てか。」
「そうです! だからムラサキさんに渡したくないんですよ! 途中で手紙なくしても『そもそも私そんな手紙なんて受け取ってないわ! マリすけの陰謀よ!』とか言い出しかねませんし!」
「「確かに。」」
同時に頷く俺とさきねぇ。
本人が確かにって頷くのもどうかと思うが。
さきねぇが手紙を覗き込む。
「誰から?」
「えっと差出人は・・・『グリム・エルメリア』だって。」
「ふ~ん・・・ん?」
・・・ん?
「「・・・エルメリア!?」」
ノエルさんと同じ苗字を持つ人からのお手紙でした。
これは一大事と思ってすぐに家に帰る。
「ノエルさーん! お手紙が届いてますよ!」
「ん? 私宛てか? ガイゼルのやつには別に命れ、お願いしてないんだが」
「いえ、ノエルさんのお父様ではないかと・・・」
「私の? そんなはずは・・・ゲッ」
ノエルさんに手紙を渡すと、露骨に嫌な顔をする。
「あー、ヒイロ。これ、ゴミ箱に捨てておいてくれ」
「え、まだ読んでないのでは?」
「いや、読む必要とかないから大丈夫だ。捨ててくれ。」
「・・・」
困ったな。捨てた後にやっぱりさっきの手紙読む~ってなったら大変だし。
さっきの手紙のお返事なぁに状態になってしまう。
そんな感じで俺が困っているとノエルさんが苦笑いする。
「ははは・・・いや、すまない。まじめなヒイロには酷なお願いだったな。こういうことはそれに適したやつに頼むべきだった。ムラサキ、燃やしておいてくれ」
「ごじゅうはちじゅう喜んでー!」
「保険屋か。」
満足そうな顔で手紙をさきねぇに渡すと奥にひっこむノエルさん。
「それどうするの?」
「エルエルが捨てろっていうんだから捨てるでしょ。」
そう言うと床にポイッと手紙を捨てるさきねぇ。
そしてすぐ拾う。
そして中身を取り出し読み出すさきねぇ。
「ちょっと待て! それは人として待て!」
「チッチッチッ。甘いわねヒロ。ゴミはゴミ捨て場に捨てられた時点で所有権の放棄と見なされるから拾った人が所有権を主張することができるのよ。昔相棒でやってたわ。」
テレビで見た適当知識!
そして人の手紙を読んでいい理由になってない!
「いやあ、でもさきね「ちょいまち。ヒロ、これエルエルに見せるべきかしら?」
「ん?」
さきねぇが手紙を渡してくるので仕方なく読む。
「えーなになに。『近い内に森に戻るように。戻らなければお前の恥ずかしい秘密を大陸中に拡散させる。グリム・エルメリアより』?」
「個人的にはエルエルには隠しておいて、秘密が拡散した後に『あ、そういえばこんなの書いてあったわよ』って渡してあげたい」
「いや、普通に教えてあげようよ・・・ノエルさーん!」
俺がノエルさんを呼ぶと、奥からひょっこりと顔だけだすノエルさん。かわいい。
「どうしたヒイロ。」
「すいません。さきねぇがさっきの手紙読んじゃったんですよ。」
「・・・はぁ。全くムラサキは。」
「それでですね、一応ノエルさんも目を通しておいたほうがいいのではないかと思って。どうぞ。」
「ん? どうせまたくだらないことが書いて・・・」
ノエルさんに手紙を渡し、目を通すこと数秒。
ボワァ!!
一瞬にして手紙が燃えカスに姿を変える。
「あのクソジジィ・・・ぶっ殺す・・・」
熱い! 炎の魔力がめっちゃ漏れててめっちゃ熱い!
「ノエルさん! 抑えて! めっちゃ熱いっす!」
「む・・・すまんな。スーハースーハー。」
両手をパタパタさせて深呼吸するノエルさん。
かわいいなこんちくしょう。
「えっと、まさかノエルさんのおじい様からのお手紙ですか?」
「ん? ああ、違う違う。うちの里の長老やってるクソジジイだよ。」
「でもエルエルと同じ苗字でしょ? 親戚?」
「親戚というか・・・エルフの森にはいくつかの里があってな。私の出身はエルメリアの里なんだよ。」
「あー、つまりそこの里出身の人はみんな○○・エルメリアさんってことですか?」
「察しがいいなヒイロ。その通りだ。まぁ人口自体少ないから、里の全員と多かれ少なかれ血は繋がっているが・・・エルフには血の繋がりや親子関係というのは希薄だからな。あまり関係ないのさ。」
「「へぇ~」」
エルフにはエルフの暮らしというか文化があるんやね。
「さて、落ち着いたぞ。二人とも、ちょっと待っててくれるか。私は少し用が出来た。あぁ、後帰ってきた時に風呂に入れるようにしておいてくれるか? ちょっと赤く汚れてると思うから」
その汚れと言うのはもしや返り血でしょうか?
「エルエル、私たちも一緒にいくわ!」
「「え?」」
突然のさきねぇの提案に、俺とノエルさん困惑。
「でもエルフって超排他的で引きこもりじゃなかった? 人間の俺らがエルフの森に「いいなそれ!」
俺の言葉をノエルさんの名案!とでもいうような輝く笑顔で遮る。
「人間を連れてきちゃダメ、とは書かれてなかったからな。何の問題もない。」
「でしょ? 私たちはエルフの森探検ツアーに遊びに出掛けてハッピー。」
「私はエルフどもに嫌がらせができてハッピー。いい案だなムラサキ。」
「でしょ?」
「「フハハハハハハハ!!」」
美少女と美少幼女の悪魔のような高笑いに、なす術もない俺だった。
つーかゲームのボス以外で『フハハハ!』って笑う人初めて見たわ。
「よし、そうと決まれば善は急げだ。明日にでも出発しよう!」
「おー!」
嫌がらせにいくのに『善は急げ』って言い切っちゃうノエルさんが素敵。
「ノエルさんの故郷にいくんだから手ぶらじゃアレですよね。何を持っていけばいいですかね?」
「んー? いらんいらん。手ぶらでいい。やつらに渡す土産などない。」
「じゃあエルフの森産のお酒とか大量にパクって帰りましょう!」
「いいなそれ! 採用!」
「「アハハハハハハ!!」」
なんだろう、ノエルさんの邪悪度が今までにないくらい濃い上に、さきねぇとのシンクロ度も半端ない。
ついにMウイルスに完全感染してしまったのか・・・
「さて、どうしようかな・・・?」
ノエルさんはああ言ったが、ノエルさんは俺たち姉弟の保護者であり恩師だ。
手土産の一つも持参しなかったらノエルさんの株が下がってしまうし、ここは弟子として俺がしっかりやらねば。
エルフは引きこもりなんだよな・・・つまりぐーたら好き。
だったら・・・
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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