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第四十三姉嫁 異世界のバレンタイン事情の巻 そのろく

コラボ作品『あくおれ!~悪徳領主とおれの楽しい異世界生活~』とmaster1415先生の『あくおれ!~悪徳領主なおれの楽しい異世界生活~』も投稿しております!よろしくお願いします!

 一日経てば治るらしいので今日だけそこに泊まっていってください。

 ラムサスさんには俺から話つけときますんで。

 本当に申し訳ないです。




 合掌してから部屋から離れロビーに戻ると、隠れるように周囲を警戒している女の子の姿が。

 あれは・・・


「あれリムルちゃんじゃね?」

「あ、ほんとだ。ムルムルー!」

「ひぃ!?」


 リムルちゃんがビクッとする。


「ちょっと、『ひぃ!?』ってひどくない?」

「あ、いえ、すいません・・・」

「スレイはいないから大丈夫だよ。」

「な!? なななななななななななな何を仰るうさぎさん!?」


 なが多いな。


「どうせ『スレイにアプル渡したいけど人がいるところじゃ恥ずかしいし、変なこと言ってけんか腰になっちゃうかもしれないからできればここじゃなくて静かなところで二人きりで会いたい』みたいな感じなんでしょ?」

「そこまで筒抜けですか!?」


 いや、だって君わかりやすいし・・・

 スレイが鈍感難聴系なことが悔やまれる。


「ちゃんと素直になって渡したほうがいいよ? スレイ、けっこうかっこいいし強いし面倒見もいいって評判いいし。」

「盗られてからじゃ遅いわよ? 先手必勝、五里夢中よ?」

「うん、五里夢中は関係ないね。」


 五里霧中。迷って方針や見込みなどの立たないこと。


「・・・・・・やっぱりばれてます?」

「「バレバレ。」」

「はぅ・・・が、頑張ります・・・」


 後輩の恋路を応援するのも先輩の役目。

 まぁ実は俺らのほうが後輩なんだけれども。


「あ、あとヒイロさんには大変申し訳ないんですけど、アプルデーですけどアプルは・・・」

「ああ、大丈夫だよ。本命いる人からもらうのは気が引けるしね。」

「ムルムルはちゃんとわかってるじゃない。そう、それでいいのよ。私がいるんだからヒロになんかあげる必要はないわ。さすが私の弟子。」


 満足げに頷くさきねぇ。

 リムルちゃんはスレイのこと以外では空気読めるんだけどなぁ。

 つーかいつの間にかさきねぇの弟子になってたのか。

 そういやリムルちゃんの腕がメキメキ上達しててやばいとか言ってスレイが焦ってたな。

 そういうことか。


「じゃあ俺たちは時間つぶしに外ぶらつくので。頑張ってね。」

「ありがとうございます!」

「ピンチになったら踊れば大体の事は解決するわ。」


 それはあんただけだ。

 そんなこんなでリムルちゃんに別れを告げギルドを出る。


「さて、どうすんべ?」

「エルエルのことだから巨大ウェディングケーキとか用意してそうだから変にお腹に入れられないわねぇ。」


 ちょっとありえそうだから笑えん。

 それから二人でマリオRPGのCMソングを歌いながら歩くことしばし。

 見知った二人に出会う。


「お、ヴォルフじゃん。おつかれー。」

「おうヒイロ。お疲れ。」

「ヒイロさん、ムラサキさん、こんにちわ。」

「こんー。」


 ヴォルフとカチュアさんは仲良く手を繋いでデート中のようだ。

 姉兄弟妹仲良きことは美しき哉。

 ヴォルフがずいっと前に出てくる。


「ヒイロ、はじめに言っておく。カチュアからお前に渡すアプルはない!」

「知ってるよ。欲しがらないから大丈夫。」

「・・・あーん? お前、カチュアからアプルをもらいたくないってのか!?」

「別にそうは言ってないだろうが。」

「じゃあカチュアからアプルをもらいたいってのか!?」


 けんか腰のヴォルフ。

 あーもーめんどくせぇなシスコンはよぉ!!


「カチュアからアプルをもらいたいと言われたらムカツクが、いらないと言われるとそれはそれでムカツク!!」

「わかる!!」

「「・・・・・・」」


 無言で握手する俺とヴォルフだった。


「ちゅーべえはぼるきちに何あげんの?」

「わ、わたしは・・・ごにょごにょ・・・ムラサキさんは?」

「私は・・・ごにょごにょ・・・」

「えぇ!?」


 カチュアさんのしっぽがピーン!となってる。


「カチュアさんどうしたの?」

「ななななななななななんでもないです!」


 今日はなが多い日だな。

 そしてなんでカチュアさんは顔が真っ赤なんだろうか。


「レ、レベル高いですね・・・」

「そう? フツーよフツー。」

「何が?」

「な・い・しょ!」


 口に人差し指を当ててないしょポーズをとるさきねぇ。かわいい。

 こんなあざといポーズも似合う女、初月紫。素敵です。

 お互いにこれ以上デートの邪魔をするのもアレなので、今度飲もうぜという話をしてヴォルフたちと別れる。


 それから市場で売り子の手伝いをしたり、教会で子供たちにモモーの種を配ってたら男どもの大行列ができて交通が麻痺したりと色々ありながらもお昼近くになった。


「そろそろいいでしょ。帰りましょ。」

「そだね。」

「エルエル何作ってるのかしら。アップルパイとかかしらね? お腹ペコペコなんだけど。」

「食べ物じゃなくて手作りのりんご型キーホルダーとかだったりして。」

「そうだったらエルエルを食べましょう。性的な意味で。」

「どっから突っ込めばいいのやら・・・」

「私からでしょ?」

「ねぇ、シモネタやめない?」


 クソくだらない会話をしながらアルゼンを出る。

 最近ではさきねぇの圧倒的オーラのせいか、魔物たちもあまり寄ってこない。

 きっと魔物たちの間では俺たち(っていうかさきねぇ)は凶悪指名手配犯みたいな扱いなんだろうな。


 ピィィィィィ!


 そんなことを考えながら歩いていると、突然聞きなれない鳴き声が響く。

 空を見ると真っ白い鳥が旋回していた。しかもなんか足に持ってるっぽい。なんぞ?

 するとその鳥がこっちに向かって急降下してきた。


「ひぃ!」


 さっと頭を抱えながら身をかがめると、白い鳥が目の前に着陸した。

 ・・・でかいな。あと鳥だけど貫禄すごい。

 今にも『黙れ小僧! お前にあの娘が救えるのか!』とか言い出しそうで怖い。

 あれ、いつのまにか目の前にラッピングされた小さな箱が置いてある。

 この鳥が落としたのかな?


「あのー、落としましたよ?」


 白い鳥に声をかけるも、もう用はないとばかりにさっさと飛び立っていった。

 もしかして、この箱を届けにきたのか?


「ヒロ、開けてみれば?」

「でも誰かのだったらダメじゃない?」

「でも誰宛かわかんないし。ヒロの前に置いていったんだから多分ヒロ宛てじゃね?」

「ふむ・・・とりあえず開けるだけ開けてみるか。」


 シュルシュルとリボンを解き、箱を開ける。


「「・・・・・・」」


 中には金色に輝くリンゴと何かが書かれている紙切れが入っていた。

 なんかアレだな。『超レアだけど呪われているアイテム』みたいな雰囲気がぷんぷんしている。

 無言で紙切れを取り出し読む。

 そこには『異世界の毘沙門天使よりヒイロクンへ愛をこめて(はぁと)』と書かれていた。


「・・・・・・この微妙に古臭いセンス、絶対あのBBAよね。」

「多分そうだろうね。」


 あのBBAとは変態金髪女こと元S級冒険者でノエルさんのマブダチのレイリアさんのことだ。(あねおれ本編第二十一章参照)

 あの鳥は使い魔とかそんなんなんだろうか。


「私の姉センサーがこの金リンゴを『禍々しい魔力を放つ毒リンゴ。食べると魅了の呪いにかかる』と鑑定したわ。捨てましょう。」

「いや、一応もらいものだからなぁ。食べないで魔法袋に封印しておこう。そしていざとなったら売って現金に換えよう。」

「良い判断ね。おっさんからの貢物を質屋にいれて現金化するキャバ嬢みたい。」

「なんかすごい感じ悪いのでその例えやめてくれませんか?」


 とりあえず魔法袋に黄金のりんごを放り込む。

 まぁレイリアさんは変態だから放置プレイでも喜んでくれるだろう。


 ノエルの森(仮)に入り、そろそろ家が見えるらへんになった。


「・・・なんかりんごの匂いすごくない?」

「すごいね。」


 さきねぇの言葉にさすがの俺も苦笑い。

 家に入ってすらいないのにりんごのいいにおいがここまで漂ってくる。

 ノエルさん気合入ってんなぁ。

 ドアの前まで来るとさらに色んなりんご臭がする。これ匂いとれるんだろうか。

 よし、いくか。


「ただいま帰りましたー。」「ただいまー。」


 家に入るとバタバタと足音が聞こえてノエルさんが現れる。


「ハッピーアプルデー!」


 両手をあげて大歓迎風味のノエルさん。めっちゃいい笑顔。


「ほらほら、お腹がすいただろう。こっちこっち!」


 俺とさきねぇの腕をひっぱるノエルさん。

 なんだこれめちゃくちゃかわいいぞ。

 不敬だが、娘がいたらこんな感じなんだろうかとつい思ってしまった。


「じゃじゃーん!」

「「おお・・・!」」


 テーブルの上に所狭しと並んだ料理の数々。

 全部りんごを使った料理なんだろうが、すげぇ量だなおい。


「アプル料理のフルコースだ! さぁ食べよう!」


 ニコニコしながら席に座るノエルさん。


「ぼそっ(アルゼンでなんか食べなくて良かったわね)」

「ぼそっ(同意。せっかく作ってくれたんだし、気合入れて全部食べるよ)」

「ぼそっ(いえっさー)」

「ん? どうした?」


 ノエルさんが首を傾げる。


「いや、どれも美味しそうでどれから食べようかなーと。」

「はっはっは! どれから食べても大丈夫だ! おかわりはいっぱいあるからな!」


 後ろをちらっと見ると、台所にでかい鍋がいくつも置いてあった。


「・・・ヒロ、胃薬はないから≪聖杯水アクアホーリー≫が頼りよ。」

「任せろ・・・では。」

「「「いただきます!」」」




 ノエルさんの料理はどれもとても美味しかったのだが、食べ終わった俺とさきねぇのお腹は三つ子でも妊娠してるのかと思うくらいパンパンだったとさ。


 ・・・え? さきねぇからは何をもらったのかって?

 それは俺とさきねぇだけの秘密です。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


これにてバレンタイン編の終了です。

まさかバレンタインのお話を5月に投稿するとは思いませんでしたね!

予想の斜め左下にいく男、藤原ロングウェイでした。


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