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第四十二姉嫁 異世界のバレンタイン事情の巻 そのご

コラボ作品『あくおれ!~悪徳領主とおれの楽しい異世界生活~』とmaster1415先生の『あくおれ!~悪徳領主なおれの楽しい異世界生活~』も同時更新中です!よろしくお願いします!


「ア゛ァァァァァ!!」

「「「ギャァァァァァ!」」」


 さきねぇはダッシュで逃げ出すマリーシアさんたちを追いかけてギルドの奥へ消えていった。




「さて、どうすっかな。お昼まで時間をつぶすとなるとあと二、三時間はいなきゃいけないしなぁ。」

「ようヒイロ! 景気はどうよ! ぷはぁ!」


 いきなり酔っ払いにからまれる。

 つーかラウルさん真昼間っから飲んでんのかよ・・・


「酒くさいですよラウルさん。せめて夜に酒場とか自宅で飲んでください。」

「かー! 固いこと言うなよヒイロ! お、そういやムラサキ嬢ちゃんは?」

「おいかけっこして遊んでますよ。いまだに童心を忘れないひとなので。」

「そっかー、せっかくのアプルデーだから嬢ちゃんのひっく! リンゴみたいにたわわなお胸でも拝みにきたんだがなぁ! あっはっはっは!」


 ・・・は?

 俺を見ていた周囲の冒険者たちが顔を真っ青にして俺たちから離れていく。


「・・・ラウルさん。知ってました? 最近街に蛇が出るらしいですよ。」

「はぁ? 蛇ぃ? そんなの聞いたことねぇぞぉ? ヒック!」

「なんでも人を丸呑みできるくらい大きな蛇が暴れてるそうで。気をつけてください。」

「あっはっはっは! そんなの嘘嘘! そんなデマに踊らされんなよなぁもう! ヒック!」

「そうですか? でも、ほら。アレ。」

「ん?」


 ラウルさんが後ろを振り向く。

 そこには、人を丸呑みできるくらい巨大な氷の蛇・・・が大口を開けていた。

 そしてそのままラウルさんの頭に食らいついた。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「ほら、言ったでしょう。気をつけないとって。」

「冷たい冷たい冷たい冷たい!」


 そりゃ冷たいでしょ。氷の蛇に頭をまるごと飲み込まれているんだから。

 いったいどこからきたへびさんなんだろー。こわいなー。


「マジで冷たい! 助けてくれぇ!」

「大変ですね。」

「ヒイロ! すまんかった! 俺が悪かった! これはずしてくれ! すげぇ冷たい!」

「とは言われても。その蛇さんは野生の蛇さんみたいですし。私に言われてもねぇ。」


 こまるわーえんざいこまるわー。


「氷で出来てる野生の蛇なんていないだろ! どう考えてもお前の魔法だろ!?」

「いやー、そんないいがかりつけられても。私の魔法っていう証拠を提出して証明してもらわないと困りますよ。」

「く、くっそぉ・・・! こうなったら意地でも嬢ちゃんの胸を凝視してやるぅ!!」

「・・・かーごーめかーごーめー、かーごのなーかのラーウルーはー、いーつーいーつーでーられるー。」


 さぁ、その我慢がいつまで持つかな?


「・・・・・・・・・・・・申し訳ありませんでしたぁ! もう変なこと言わないので許してください!」


 あきらめるの早っ。

 いや、俺的にはいいんだけども。


「あーなんでも噂によると『女性に何かもらおうとしません、いやらしい目も向けません、シモネタも言いません、セクハラもしません、精霊王様に誓います』って言えば蛇はどっかにいくらしいですよ。」

「その約束は残念ながらできな痛い痛い痛い痛い!」


 氷の蛇がラウルさんの体に巻きつき、ギリギリと締め上げる。


「お前、もしかして、まだ自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」

「わかった! 誓う! 誓うから! 助けてください!!」


 ちっ、この程度で根をあげる分際で俺のさきねぇのおっぱいを(服の上から)ガン見しようとしてたのか。

 覚悟が足りんよ覚悟が。俺なら心臓えぐりだされてもアンデッド化して耐えるくらいはするぜ。

 しょうがないので魔法を解除すると氷の蛇が霧散する。


「いやー恐ろしい野生の蛇でしたねー。街中にも出るんですねー。気をつけないと。ああいうのはどこにでも出てきますからね。どこにでも、どんな時にでも、ね・・・」

「はぁ、はぁ・・・忘れてた、ムラサキ嬢ちゃんのヤバさが目立つから隠れてるだけで、お前も十分アレだったなそういや・・・」


 失敬な。


「もう酔いも覚めましたよね? もういい大人なんだからしゃんとしてください。一応アルゼンでも有数の実力者でしょ。これじゃ若手冒険者に示しがつきません。」

「うはーおっかねぇ。お前はギルド職員か俺のかーちゃんかっつーの。」

「何か?」

「ナンデモアリマセーン。じゃあなー。」


 小言はたくさんとばかりに逃げ出すラウルさん。まったくまったくもう。

 酔っ払ったラウルさんから強引に愚痴を聞かせられてる若手冒険者やセクハラを受けている女性冒険者からイェー!と声をかけられる。

 お返しにフロントダブルバイセップスからのサイドチェストのポージングを披露すると困惑の雰囲気が漂ってきた。

 なんでや。

 さきねぇが奥の通路から戻ってくる。


「あら、ヒロ、どうしたの。フロントダブルバイセップスからのサイドチェストやったのに不評だったような顔して。」


 わかんのかい。

 俺は一体どんな顔をしてたんだ?


「マリーシアさんたちはどうなったの? 警備隊につかまるようなことにはなってないよね。」

「ちょっと。物騒なこと言わないでくれる? 少しだけOHANASHIしただけよ。ほら。」


 さきねぇが後ろを向くと、そこには無表情のマリーシアさんたちがいた。

 そしてロボコップみたいなぎこちない動きでこっちに来る。


「・・・あの、マリーシアさん?」

「ココハアルゼンノマチデス。」

「マリーシアさん!?」


 カタコト言葉を話す無表情のマリーシアさん。

 目が虚ろなんですが大丈夫なんだろうか。


「ね?」

「いや、『ね?』じゃないでしょ!? 明らかにおかしいよ!」


 他の二人に目を向ける。


「ココカラヒガシニイクトセレナーデノモリガアルヨ。」

「シッテタ? グミーニハムラサキイロノグミーモイルンダッテ。」

「知ってるけれども!」


 マリーシアさんと同じく無表情でモブ的発言をするリカさんとモニカさん。

 怖い。


「これじゃ仕事になんないでしょ。」

「大丈夫よ。こうやって・・・」


 さきねぇが無表情のマリーシアさんを担いでギルドカウンターの中に入っていく。

 扱いが完全にマネキンです。


「よっこらせっくす。」

「おいやめろ。」

「これでよし。」


 カウンター前にマリーシアさんを立たせる。

 もちろん目は虚ろで無表情。これ、心弱い人が夜に見たら気絶するぞ。

 あ、若手冒険者がカウンターに近づいてきた。


「あのー。」

「ココハアルゼンノマチデス。」

「ひぃ?!」


 マリーシアさんに怯える若手。


「あ、あの、依頼を受けたいんですけど・・・」

「ココハアルゼンノマチデス。」

「え? あの、依頼を「ココハアルゼンノマチデス。」

「ほらさきねぇ大変なことになってるじゃん!」

「明日になれば催眠じゅ、おっと。アレが解けて正気に戻るわよ。」

「催眠術!? 今催眠術っていった!?」


 いつのまにそんな技を・・・

 とりあえずこのままではまずいので三人をギルド内にある一室に押し込める。

 一日経てば治るらしいので今日だけそこに泊まっていってください。

 ラムサスさんには俺から話つけときますんで。

 本当に申し訳ないです。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


ヒロくんのおしおき魔法が蛇の姿だったのは、無意識のうちにノエルさんの《火炎王蛇フレアナーガ》をリスペクトしたからです。

ヒロくんは一応ノエルさんの弟子なので本人も知らないところでけっこう影響を受けています。

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