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第四十一姉嫁 異世界のバレンタイン事情の巻 そのよん

コラボ作品『あくおれ!~悪徳領主とおれの楽しい異世界生活~』とmaster1415先生の『あくおれ!~悪徳領主なおれの楽しい異世界生活~』も同時更新中です!よろしくお願いします!


「ばいばーい!」

「お気をつけてー。」


 親子の声を背に受けながら、さきねぇの手を握って走り出すのだった。




「なんでヒロはおばあちゃんとか動物とか子どもに好かれるのかしらね?」

「知らんがな。」


 そんな俺七不思議を話しながらギルドに到着する。


「さーて「ちょい待ち。」


 入ろうとするとさきねぇに止められる。


「どったの?」

「ちょっと準備運動。」


 言うとさきねぇは魔法袋の中からミカエルくんを取り出し素振りを開始する。

 ブォーン!ブォーン!という破壊的な風切音を放つミカエルくん。怖いよ。


「ぅっし。おっけー。さぁいきましょう!」

「うぇーい。」


 ミカエルくんを肩にかついださきねぇを横目にギルドのドアを開け中に入る。


「ちょりーっす。」

「あ、きた!」

「ん?」


 声がしたほうを見ると三人の女性がこっちを見ていた。


「マリーシアさん、お願いします!」

「え、私からいくのぉ? 恥ずかしいよぉ~りっちゃん先にいってってばぁ~!」

「え~や~だ~、私も恥ずかしい~!」


 なんかキャピキャピしてるマリーシアさん(26)と冒険者のリカさん(25)とモニカさん(24)。

 リカさんはD級でスレンダーなお姉さん、モニカさんもD級でちょっとぽっちゃりしている感じ。

 現代日本であったならばバレンタインにOLさんたちがキャーキャー騒いでるだけなのだが、しかし彼女らは20代半ば。

 この世界でいうところのBBA枠なので世間の見る目は厳しい。

 周囲は『年考えろよおばさん・・・』と『ヒイロ、かわいそうにな・・・』という視線で溢れていた。


「マリーシアさんがそれ渡してもし生きてたら私たちもヒイロくんにこれ渡すから先陣頑張って!」

「え、私死ぬの前提なの?」

「頑張れマリーシアさん! いけますって!」

「・・・よーし、ちょっくらいってきます! 私の生き様、目に焼き付けるがいい!」


 そう言うと俺のほうに突撃してくるマリーシアさん。

 目が血走っており、マジだ。若干ひく。


「ヒイロさぁぁぁぁ「ストップ! ドントムーブ!」


 さきねぇがミカエルくんをマリーシアさんに突きつけるとマリーシアさんの動きがピタリと止まる。


「ム、ムラサキさん。今日は・・・せめて今日くらいは許してください・・・!」

「・・・マリすけ。私ね。マリすけのこと、好きよ?」

「・・・え?」


 さきねぇの突然の告白にキョトンとしているマリーシアさん。


「いつもは恥ずかしくて言えないけど、なんていうか、親友ってきっとこういう人を言うんじゃないかなって思ってる。」

「ム、ムラサキさん・・・! 私のことをそこまで・・・! じゃあヒイ「でもあと一歩でもヒロに近づいたら殺す。」

「親友の要素ゼロ!」


無表情で恐ろしいことを言い放つさきねぇに驚愕するマリーシアさん。


「アホかっつーの。それとこれとは話が別に決まってんでしょ。」

「じゃあ今親友うんぬんの話する必要ありました!?」


 うーん、平常運転すなぁ。


「きょ、今日くらいはいいじゃないですかぁ!? せっかくのアプルデーなんですよ!?」

「そ、そーだそーだ!」

「自由恋愛だー!」


 マリーシアさんたちがぶー垂れる。

 さきねぇは何かを考え込むかのように腕を組んで目をつむっている。

 そして目を開ける。


「・・・マリすけはなんでさっきから一人でしゃべってるの? 正直な話、怖いんだけど。」

「ムラサキさんに向かってしゃべってるんですけど!? なんで私が大きい声で独り言を呟いてるみたいな感じになってるんですか!?」」

「いやー気付かなかったわー。」


 いや、さっきまで普通にしゃべってたじゃん。どんだけ。


「ア、アプルデーにアプル渡すくらいいじゃないですか!」

「心狭いぞー!」「心が醜いぞー!」

「ちょ、りっちゃんももっちゃんも私の背後からムラサキさん罵倒するのやめてくれない? リアルに殺される可能性あるから。」

「知るかボケェ! さっさと散りなさいマリモ三姉妹! しっしっ!」

「「「マリモ三姉妹!?」


 リーシアとカとニカ、この三人を合わせてマリモ三姉妹というらしい。(命名さきねぇ)


「「「ア・プ・ル! ア・プ・ル!」」」

「・・・フフ、フフフフフ。アーッハッハッハッハ!」


 マリーシアさんたちからアプルコールが起こると、突然さきねぇが笑い出す。壊れた?


「私はこの日を待ち望んでいた。どれだけの歳月を耐えてきたか、あなたたちにはわからないでしょうね。」


 しんみりした感じで語りだすさきねぇ。


「バレンタインデーにヒロに近づくメスども・・・しかし、顔面をボコボコにしたら待っているのは傷害罪という法の壁。耐え忍ぶしかなかった。でも、ここは無秩序の異世界。つまり、法律なぞ存在しない! 皆殺しだーヒャッハー!」

「するよ! 異世界でも法律は存在するよ!? マリーシアさん逃げてー!!」


 ミカエルくんを構えてマリーシアさんたちに突撃しようとするさきねぇをなんとか食い止めつつ叫ぶ。

 たしかに異世界こっちは日本と比べて法律めっちゃゆるいけど、異世界だからフルボッコOKとか認められてないから!


「ほ、ほらさきねぇ! ラムサスさんに呼ばれてるんだから早くいくよ!」

「今宵のミカエルくんは血に餓えている・・・」

「知らんがな。」


 今日二回目の知らんがなを使いつつ、さきねぇを引きずりギルドの奥にひっこむ。

 マリモ三姉妹はグヌヌ顔でこっちを見ていたが気にしない。


「ったく。油断も隙もあったもんじゃないわ。いい、ヒロ。お姉ちゃん以外の女は狼だからね。少しでも油断すると連帯保証人にされてドロンされるからね。」

「最近の狼は頭いいなー。」


 そんな話をしながら支部長室に到着。

 ノックする。


「誰かな?」

「ヒイロです。」

「ああ、ヒイロくんか。どうぞ。」

「失礼します。」


 ドアを開け中に入ると机の上に書類が山積みになっているラムサスさんの姿があった。


「・・・ムラサキは呼んでないけど?」

「ヒロと私は一心同体なんですーそんなのもわかんないんですかー『ラムサス老いやすく髪伸び難し』とは昔の人はよく言ったもんねー。」

「ぶっ殺すぞクソガキ。」


 また始まった・・・


「えっと、ご用はなんでしょうか?」

「あー用ね。えー用事はねぇ、実は・・・」

「実は?」

「実は用事ないんだよねぇ。」

「よし、カツラとって頭出しなさい。髪全部剃ろう。支部長やめて出家なさい。」

「するか!」


 さきねぇとラムサスさんはがっぷり四つ組みだ。


「えっと、じゃあなんで呼んだんですか?」

「・・・どうせすぐバレるから言っちゃうけど、ノエル様から『二人をそっちに送るからお昼まで時間を稼げ!』って厳命されててねぇ・・・」

「「あー。」」


 なるほど、出かけ際にノエルさんの様子がおかしかったのはこれか。


「多分アプルデーの準備だろうね。なので申し訳ないけどお昼まで時間をつぶしてくれると助かる。」

「了解です。しっかしラムサスさんも大変ですね。」

「まぁね。ノエル様には多大なご恩があるからいいけど、もうちょっと違う形で恩返ししたいよ・・・」


 それからちょいと雑談をして早めに部屋を出る。

 一応ここのトップだから忙しいだろうしね。

 ロビーに戻るとコソコソとこちらを覗くマリモ三姉妹がいた。

 つーかまだいたんか。


「ヒロ、お姉ちゃん、ちょっと野暮用ができちゃったからちょびっつ待っててもらえる?」

「やりすぎないようにね。」

「大丈夫よ。ほんのちょっとOHANASHIしてくるだけだから・・・」


 そう言うとさきねぇは両手を突き出しゾンビのような怪しい動きでマリーシアさんたちに近づいていく。


「ア゛ァァァァァ!!」

「「「ギャァァァァァ!」」」


 さきねぇはダッシュで逃げ出すマリーシアさんたちを追いかけてギルドの奥へ消えていった。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


いやー久しぶりにまりさん書くの楽しい!(笑)

あと『少年老い易く学成り難し』→『ラムサス老い易く髪伸び難し』をおもいついたときはじぶんはてんさいではないかとおもいましたまる

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