第三十九姉嫁 異世界のバレンタイン事情の巻 そのに
感想いただきました。ありがとうございます。
前回更新日からだいぶ時間が経ってしまいましたが、待っててくださる読者さんがいるということはとても嬉しいです!
コラボ作品『あくおれ!~悪徳領主と弟の楽しい異世界生活~』とmaster1415先生の『あくおれ!~悪徳領主な私の楽しい異世界生活~』も同時更新中です!よろしくお願いします!
「ダメに決まってるだろ! 『それなら、どう?』じゃない! なんでちょっと自信有りげなんだ!」
「めんどくさいわねー。」
なんでこの人たちはこんな話で熱くなれるのだろうか。天才だからか?
天才とはげに恐ろしきものなり。
というわけで翌日。
「ねぇヒロー、ほんとにいくのー? 今日はお休みでよくない?」
「ラムサスさんが今日来てほしいって言ってたんならなんか大事な用かもしれないじゃん。」
「絶対あのハゲの罠だって。いったら多分アレよ。一本道にさしかかったらいきなり岩が落ちてきて退路をふさがれるのよ。そしたらジャーン!ジャーン!って音が鳴って、崖の上に完全武装したカツラムサスが! いまだ、火矢を放て!」
「どこの三国志の話ですかね。」
俺らはラムサスさんにそこまでの恨みを買ってるのかよ。
・・・さきねぇに限ればなんともいえんけど。
そんなアホな話をしながら進むことしばらく。
アルゼンが見えてきた。
・・・アレ?
なんか門番さんたちがこっちを見たと思ったら、急にアルゼンの門を閉じだしたぞ。
「なんかあったのかな?」
「大型魔物でもきた? でもそんな気配ないわよね?」
まわりをキョロキョロするが、見えるのは遠くでグミーがコロコロ転がってるくらいだ。
「まぁいいでしょ。さっさと用を済ませて帰りましょ?」
さきねぇがズンズン先に進むと、閉じた門の前に門番さんたちがずらっと並んでいる。
え、なにこの厳戒態勢。なんかくんの?
とりあえず通してもらおう。
「お、お疲れ様でーす。」「お疲れちゃーん。」
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
あ、あれ?
いつもなら笑いながら門を通してくれるのに、通すどころか門を開けてもくれない。
「あ、あのー。門を開けてもらえると嬉しいんですが・・・」
「・・・身分証明書を提出してください。」
「「え!?」」
いまさら!?
もう数え切れないほど顔パスでここ通ってきたし、俺らけっこう長い間アルゼンで暮らしてるけど!?
なんでいきなり仕事熱心に?
「ぼ、冒険者の指輪でいいですか?」
「街役場で登録は行っていますか?」
「えっと、行ってないです。」
「では門は開けられませんね。」
なんで突然こんな厳しくなってんの。
「ど、どうしよう。街に入れないとか緊急事態ですよ。」
「ヒロ、甘いわね。ここは柔軟に考えましょう。」
「お、さすが姉上ですね。いつもなら力技で解決しそうでしたが、何か妙案が?」
「とんちよとんち。一休さん。それで考えて見なさい。答えは簡単よ?」
とんち?
門を通るべからず・・・もんをとおるべからず・・・
だめだ、わからん。
「降参です姉上。答えは?」
「ふっふっふ。門を通ることにこだわると負けなのよ。つまり正解は・・・」
すると、いきなりミカエルくんを取り出し体から魔力を放出するさきねぇ。
「門を通らずに、壁を破壊して入ればいいのよ! 一休的に!」
「絶対違うよ!」
結局力技か!
つーかそれ、一休さん全く関係ないし。むしろゴンさんじゃないかな。
門番さんたちも慌てて止めに入る。
「で、これはなんなの? もし私たち姉弟への嫌がらせならうちのおばあちゃんにチクるわよ?」
言葉だけで聞くとなんかかわいらしい感じもするが、結果はアルゼンの門が爆炎によって溶かされます。
魔物ウェルカム状態になったアルゼンのピンチです。
「い、いやーほら。今日はなんか特別な日らしいじゃないか。」
「・・・それで?」
「ムラサキ嬢ちゃんからなんかもらえたらなー、とね。」
「・・・・・・なるほど。」
門番さんたちが全員照れたような顔でへへへとか言ってる。
突然隕石が降ってきて全員死ねばいいのに。
「ジィー。本部応答願います。えー、8時11分、アルゼン門番逮捕。容疑は収賄罪の現行犯。どうぞ。ジィー。」
「ジィー。本部了解。至急トポリス王国第四王女ミレイユ・ヴァン・ガスト・トポリスに引き渡し要請の手紙を準備します。ジィー。」
「「「「「それはマジでやめてくれ!!」」」」」
俺たち姉弟の警察無線の真似事に泣きつく門番さんたち。
権力から遠い第四王女とはいえ王族に門番の収賄罪なんてチクったら、門番さんたちは良くて解雇、悪くて打ち首獄門晒し首だろうだから当然だが。
「・・・・・・はぁ。全く、しょうがないわねぇ。一列に整列!」
「「「「「はい!」」」」」
さきねぇの言葉にとてもよい返事で整列する門番さんたち。
なんなのこいつら鍛えられすぎだろ。信者か。
「では、ありがたく受け取りなさい。」
「ははぁ!」
菩薩のような優しい微笑で何かを手渡すさきねぇと、恭しく両手を差し出し受け取る門番A。
何これ洗礼かなんか? もしくはルネッサンス時代の絵画のモチーフかな?
その場にいた全員が何をもらったのかと集まる。
門番Aの手のひらの中には・・・
「「「「「種かよ!」」」」」
俺含む全員が叫ぶ。
門番Aの手のひらには一粒の種が置いてあった。
いくらなんでもこれは・・・
「何言ってるのよ。いい? これを庭に植えて、愛情をもって水をやって、芽吹いた葉っぱに優しく語りあげてあげるの。何年かすると、そこには立派なモモーの木が!」
「「「「「リンゴ(アプル)ですらない!!」」」」」
「バカヤローなんでこの私がヒロ以外の男にリンゴなんか渡さなきゃいけないのよ!」
アップルデーに桃の種・・・
バレンタインデーに柿の種あげるようなもんだろこれ。
いくらなんでもこれでは門番さんたちもさぞやお怒りに・・・
「・・・でも、これ、アプルデーに女の子にもらったことになるよな?」
「いや、余裕でワンカウントだろ?」
「獲得数1だよな?」
「しかも、ムラサキさんみたいな美少女から手渡し。」
「「「「「・・・・・・アリだな!!」」」」」
アリなのかよ・・・アリなのかよ!
「はーい、じゃあこれ欲しい人は一列に並べーい!」
「「「「「はーい!」」」」」
笑顔で一列に並びなおす門番さんたち。
門番さんたちから『はじめてアプルデーに女の子から物もらった!』とか『ついに家族以外からもらえる日がきた!』との声が聞こえる。
なんだろう、涙で前がよく見えない。
どこの世界でもチョコ獲得数戦争はあるんやね・・・
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
まぁ私でもムラサキお姉ちゃんから直接手渡ししてもらえるならモモの種であろうと喜んで列に並びますけどね。




