第三十五姉嫁 ああっお父さまっ!の巻 そのいち
お久しぶりです。皆さんお元気でしたか?
私はインフルで倒れたり過労で倒れたり入院したりしましたが、元気です。
皆さんも体調には気をつけてお過ごしください。
全三話構成です。よろしくお願いします。
今日は仕事にもいかず、家でまったりと優雅なティータイムを楽しんでいた。
まぁノエルさんが森の結界のメンテナンスででかけているため、お留守番なのだが。
すると。
コンコン
ドアをノックする音が聞こえたので返事をする。当たり前だ。
「はぁーーぃ・・・え?」
が、返事をしてから気がついた。
ここはノエルさんちだ。覚えている人はいないかもしれんが、周囲には二重に人払いの結界が張られている。
低レベルではこの家にたどり着くどころか、ノエルの森(仮称)にはいることすらできないはず。
にも関わらず、今ノックの音が聞こえた。
つまり、誰かが結界を抜けてここまできたということだ。
この世界に来て一年以上経つが、これで二度目だな。
「ここにヒイロ・ウイヅキという者が住んでいると聞いて尋ねて来た!もし噂どおりの男であるならば、この私が直々に面会してやろう!」
そんな感じで、また新たな騒動が発生した。
「・・・ふん、留守か。まったく、この私が足を運んでやったというのに。」
「あ、いまーす! いますよー! ちょっと待ってくださーい!」
なんかひどいデジャヴを感じるが、俺のお客様ということなので仕方なくドアを開ける。
そこには、鋭い眼光を持ち、精悍な体つきをした金髪オールバックのイケメンおじさまがいた。
「む、いるなら早く出ろ。玄関前でこの私を待たせるとは失礼なやつだな。」
「はぁ、すいません。(このやりとり、すごい覚えがあるんですけど・・・)えっと、どちら様でしょうか?」
「ふん、聞きたいか? 何を隠そう、私は由緒正しきクリフレッド家の現当主! ゲオルグ・ウル・クリフレッドである!」
「・・・はぁ。」
やっぱりクリスのお父様でしたか・・・
「貴様がヒイロ・ウイヅキか?」
「あ、はい。私がヒイロ・ウイヅキです。」
英語の教科書みたいなやりとりだな。
アーユージョン? イエス、アイムジョン!みたいな。
「わざわざご足労ありがとうございます。本来であればこちらからお伺いするべきでしたが、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」
「ふん。身分はどうあれ息子が師と仰ぐ人物なのだ。こちらが出向くのが道理だろう。」
すげぇ上から目線だけど、言ってることはマトモだな。
「立ち話もなんですし、どうぞ中へ。」
「ふん。ノエル・エルメリアはいるのか?」
「え? いえ、今日は出掛けてますが・・・」
「なら入らせてもらおう。」
いないなら入るの? どゆこと? 同じ火魔法使いなのに仲悪いのかしら。
「こちらへお掛けください。」
リビングにお通ししてから厨房にいき、≪聖杯水≫をコップに入れて戻る。
「どうぞ。」
「ふん・・・!?」
≪聖杯水≫を一口飲むと、クワッ!と目を見開くクリスパパ。
あれ、まずかったか? 高級なお茶とか出すべきだったか?
「・・・これはなんだ?」
「お気に召しませんでしたか!? すいません!」
「いや、今まで味わったことも無い不思議な味だ。体に染み渡るような清清しさを感じる。これはこの街の名産品か何かか?」
「いえ、これは≪聖杯水≫といって私の水魔法で作った特別な水です。喉が渇いているときや体が水を欲している時は水よりも体にいいのです。」
「ほぅ。つまり、貴様、いや、お前の独自魔法か。」
「仰るとおりです。」
「美味い水を作り出す独自魔法なんぞ聞いたこともないし、あったとしてもそんな魔法なんぞ認めようとも思わなかったが、実際に味わうと有用だな。」
「ありがとうございます。」
それから一息にゴクゴクと≪聖杯水≫を飲み干すクリスパパ。
わーい、俺の自慢の水分補給魔法が魔法四聖に褒められたよー。
「・・・さて、では単刀直入に聞こう。息子はどうだ?」
「ええ、良い子ですよ。元々魔法の才能は素晴らしいですし、素直だし向上心もあるし。ただ、体力のなさと応用の利かない大技を使いたがるのは問題ですね。今は基礎体力の向上と基本の大切さを中心に鍛えています。」
「ふん。思ったよりもまともな男のようだな。」
「え?」
「正直に言わせてもらうが、もしお前、いや、君が息子の害悪であれば何らかの処置をしようと思っていた。」
「ひぃ!?」
ノエルさんが居るか居ないか聞いてきたのはそのため!? 怖っ!
「怖がらなくて良い。今の話で君がまともな人物であると理解した。」
「は、はぁ。」
まだ会って三十分も経ってないけど、どこらへんで判断したんだろうか。
「今までにも息子の個人教師は何人もいた。だが、やつらは息子を褒めるだけだ。さすがクリフレッド家の者だ、とな。そして息子の悪い点には一切触れなかった。媚びへつらうだけの無能などいらん。」
ふん、と鼻を鳴らすクリスパパ。
「だが君は違う。まずクリフレッド家に対する畏怖や媚びが感じられん。そして息子の悪い点も私に伝えた上でそれを解消するよう努力しているようだ。」
クリフレッド家の畏怖とか言われても、田舎者なのでクリフレッド家の凄さとか知らないし・・・
「たったそれだけでまともだと判断していいんですか?」
「たったそれだけのことすら出来んバカが多いということだ。」
「なるほど。」
貴族も大変なのね。
「・・・ただ、解せんのは君が水魔法使いだということと、息子よりも魔力が弱いということだ。そんな男にあの息子が大人しく、というより嬉々として従うはずがない。」
「はぁ・・・」
まぁクリスと初めて会った時のことを考えればその疑問も当然っちゃあ当然か。
「ゆえに、君の強さを見せて欲しい。息子がそこまで惚れこむほどの男だ、上辺だけではわからぬ底知れぬ何かがあるに違いない。」
「強さを見せろと言われても・・・どうやってです?」
もしや、俺と戦え!とか言い出すんじゃないだろうな。
いや、クリスパパはそんな脳筋じゃないよね。大丈夫だよね。
「私と戦え。」
「ダメだったぁ!?」
脳筋だった!
やはりクリスのパパだったか・・・
「いや、でも、クリ、げふん。ゲオルグ様は魔法四聖って言われる方ですよね? 私、魔法力も魔法量もDですよ?」
やべー普通にクリスパパって言いそうになっちゃった。
気をつけなければ。
「もちろん手加減はする。たかが水魔法使い程度にそこまでの期待はしておらん。」
あ、今カチーンときちゃったよ俺。
水魔法が『たかが』?『程度』?
・・・・・・戦争だ。
「いいでしょう。そこまで言うなら水魔法の底力、見せてあげましょう。」
「よく吼えた。それでこそ息子の師だ。君の力を示したまえ。」
気付いたらいつのまにか呼び方が『貴様』から『お前』になって『君』にランクアップしてる。
好感度上昇率たけぇなこの親子。
二人で外に出ると、そのまま距離をとり相対する。
「ではこうしよう。私は手加減して戦う。かすり傷一つでもいいので私を傷つけたら君の勝ちだ。」
「・・・一ついいですか?」
「なにかね?」
「傷をつけるのはいいですが・・・別に、あなたを倒してしまっても構わないのでしょう?」
「・・・は、はははは! 水魔法使いが! この魔法四聖の一つ、クリフレッド家の当主たる私を倒すと言うのか! いいぞ、遠慮せずこい! ねじ伏せてやろう!」
そして、戦いの火種は切って落とされた!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
2月14日更新なのでバレンタインデー話かと思いましたか?
奇遇ですね、私もそう思ってました!
途中まで書いていたのですが、納得がいかず何度も書き直していたら当日に間に合わないという頭の悪い結果に……
書きあがり次第投稿したいと思います。




