第三十三姉嫁 ムラサキお姉ちゃん、運命に出会うの巻 そのきゅう
感想いただきました。ありがとうございます。
そして私と同じくコメディを書いてらっしゃるmaster1415先生からあねおれのレビューをいただきました!
master1415先生はわずか半年ほどであねおれの数倍のブクマを獲得された新進気鋭のコメディ作家さんです!ちくしょう!ありがてぇ!
我儘放題、好き勝手し放題、強きを助け弱きを挫く、勧悪懲善物語!?
「悪徳領主ルドルフの華麗なる日常」好評連載中!
君は領主という存在の真実の姿を知り、涙する……かもしれない!
このCMは藤原・ステマ乙・ロングウェイの提供でお送りいたしました(笑
『エクスカリバーの無断持ち出し・・・まぁ国民からフルボッコにされるよりかはまだマシっていう・・・』などとぶつぶつ呟きながら退室するノーラさんを見送る。
プリリンカイザーに目をやると、ぷるぷるしながらちょっとずつ動いているようだ。
まぁ動きはゆっくりだから、お茶でも飲んでエクスカリバー待ちしましょうかね。
「持ってきたっていう!」
それからしばらくしてノーラさんが一振りの剣を持って戻ってきた。
意外に早かったな。
しかし・・・
「・・・・・・お前マジで張っ倒すぞ。」
「え!? なんでっていう!?」
「どっからどうみてもエクスカリバーじゃないでしょこれ! 私なめんな! アルゼンなめんな!」
その剣は鞘に収められていたが、埃まみれだった。
「これが本物のエクスカリバーだっていう! しまいっぱなしになってたから鞘に埃がたまっちゃっただけだっていう! 抜けばわかるっていう!」
ばっちいものを触るかのように剣を摘んで持ち上げたさきねぇだったが、意を決して鞘から剣を引き抜く。
そこには・・・
「「「・・・・・・・・・」」」
さきねぇの手に握られているのは、かなり薄汚れた剣だった。
なんかもう三本セット500パルで売られているような安物感がすごい。
さきねぇは剣をそっと鞘に戻す。
「あんたさ、一国の王女だからって何やっても許されると思ってない? 例え私が天に背こうとも、天が私に背くことは許されないのよ?」
「ど、どんだけ偉いんだっていう! それは本物なんだっていう!」
『・・・こ。』
その時、どこかから微かな声が聞こえた。
どこからだ?
『・・・こ。』
また聞こえた。
もしかして、エクスカリバーの声なのではなかろうか。
魔剣には精霊が宿る。
月光剣さんや棍棒ちゃんにまで精霊が宿っていたのだ。
エクスカリバーに精霊が宿っていてもなんら不思議なことはない。
俺は剣に耳を寄せ目を閉じ精神を集中させる。
すると。
『うんこ』
・・・・・・は?
『もういい。誰も私なんかに期待してないんでしょ。知ってますはい知ってます。もうどうでもいいです。こんな大陸滅べばいいのに。むしろ滅べ。うんこうんこうんこうんこ・・・』
・・・・・・やばい、エクスカリバー、かなりのレベルで精神に異常をきたしてる。
伝説の魔剣でも何十年も放置されて埃まみれになって忘れ去られるとこんなになっちゃうんだな。
「さきねぇ。これ本物っぽいよ。」
「え、マジで。」
「マジで。でもなんかすごいやさぐれてるっていうか、病んでる。」
「さすがのお姉ちゃんもヒロが何言ってるかちょっとよくわかんないです。」
「とりあえず語りかけてあげて。あとヨイショしてあげて。」
「ふむ・・・まぁヒロの言うことだし信じましょ。じゃあ、えっと~・・・」
さきねぇはボロい剣を両手で持ち、目を閉じる。
熟考の末に、目をカッと見開く。
そして、エクスカリバー(仮)に対し語りかける。
「おい駄剣。」
「優しく! もっと優しくしてあげて!」
「いいからいいから。北風と太陽作戦よ。お姉ちゃんに任せなさい!」
いい笑顔でサムズアップするさきねぇ。
かわいい。
「おい駄剣。お前が月光剣に叩き折られたとかいう駄剣? マジダサすぎて草不可避なんだけど、今どんな気持ち? 最強だと思ってたのにあっさり叩き折られたけど、今どんな気持ち?」
煽りすぎだろ!
北風強すぎて太陽の出番の前に吹き飛ぶわ!
「つーかさ、悔しくないの? あっさり負けて折られた上に、今じゃ埃かぶって絶賛放置プレイ中だけど。悔しかったらなんか言いなさいよ!」
すると、エクスカリバー(仮)がさきねぇの手の中でカタカタと震えだした!
「うわ、自分で言っておいてなんだけど、ほんとに動き出すとかちょっとキモい。」
「言わないであげて・・・」
この子も頑張ってるんです。
「よし、悔しい気持ちがあるなら、あんたにチャンスをあげるわ。この私が。この!私が!あんたを使ってあげましょう。光り輝く英雄ロードに引き戻してあげましょう。そして、最終的にエルエルと月光剣を倒し、S級冒険者の位と魔剣最強の座を簒奪するわ。あんたにその覚悟はある?」
さきねぇの言葉に反応し、すごい勢いでガタガタ震えだすエクスカリバー(仮)。
なんか釣ったばっかの魚みたい。
「熱くなれよ! もっと熱くなれよ! 頑張れよ絶対いけるってどうしてそこであきらめんだよお前なら絶対大丈夫だよいけるって! 今が最高のチャンスなんだよ過去の事は忘れろよ今本気をならないでいつなるんだよ! 最強だっていったじゃん一番だっていったじゃんじゃあやるしかないじゃんお前を応援してた人たちのこと思い出せよ!」
さきねぇの激励を受けるたびに薄汚れていたエクスカリバー(仮)の刀身から光が漏れ出す。
「思い出せよ! お前が何者なのか! お前はエクスカリバー! 最強の魔剣エクスカリバーよ! この私が携えるに相応しい、聖剣なのよ! 立って、立つのよリバ子! そして応えなさい! 我らは魔を絶つ無垢なる刃!」
さきねぇがエクスカリバー(仮)を掲げると、目もくらむような眩い光が実験場に満ちる。
すこししてから目を開ける。
そこには、先ほどまであった三本500パルの安物剣など存在しなかった。
煌びやかに輝く刀身から金色のオーラを漂わせる、圧倒的存在感。
今ここに、エクスカリバー3が顕現したのだった!
「リバ子が、立った・・・リバ子が立った!」
「何言ってるのかわからないっていう・・・こいつら絶対頭おかしいっていう・・・」
冷静につっこむな。
その間にプリリンカイザーが体をプルプルと揺らしながら、少しずつこちらに近寄ってくる。
どうやらヤバイ雰囲気を感じ取ったらしい。
「これなら、いける! ヒロ、少しの間時間を稼いで!」
「ガッテン承知の助!」
さきねぇが目を閉じエクスカリバーに魔力を注ぎ込む。
普通の剣ならさきねぇのアホかと思うような魔力を全力で注ぎ込んだらその瞬間に砕け散ってしまうが、エクスカリバーにはそんな様子は見られない。むしろドンドン輝きを増している!
「おいプリン。さきねぇの準備が終わるまでこの俺が遊んでやろう。ムラサキ・ウイヅキが弟、ヒイロ・ウイヅキ・・・参る!」
俺はプリリンカイザーに向かって走り出す。
やつの放つ見た目カラメルっぽい黒い液体を回避しながら周囲を駆け回り、地面の四箇所に≪水球≫を設置する。
設置が終わったら距離をとり、上空に向かって≪水球≫をさらに四個投げる。
・・・準備は整った。
俺は全魔力を放出して叫ぶ!
「吼えろ、俺の考えた必殺魔法シリーズの一つ! ≪氷牙魔牢陣≫!」
その言葉とともに、上空に四つ、地面に四つ設置された≪水球≫から計八本の巨大な氷柱が出現し、
プリンを串刺しにする。
「ぷ、ぷりーん!」
下からも上からも氷柱で貫かれ、地面に縫い付けられたプリンは外見に似合わぬやけに低い声で絶叫を
あげる。
その場から動こうとプリンは体を揺らしているが、氷柱に貫かれた体はびくともしない。
ふっふっふ、高い再生能力が仇になったな。
≪氷牙魔牢陣≫は相手を攻撃すると同時に体を拘束し行動不能にする俺の独自魔法だ。
しかもガソリンメーターでいえばEの文字が点滅するくらいの勢いで魔力を全開で注ぎ込んだ。
そう簡単には抜け出せないぜよ!
「さきねぇー! こっちはバッチリだよー!」
「さすがヒロ! サンキューマイラヴ!」
ふらふらになりながらもさきねぇの元まで戻る。
ミッションコンプリート!
「弟殿も実はすごかったんだっていう! びっくりしたっていう!」
「これでもさきねぇの弟で夫なんでね。これくらいはできないと。」
「よっしゃーゲージMAX!」
ノーラさんからお褒めの言葉をいただいていると、さきねぇの準備を整ったようだ。
持っているエクスカリバーが金色に眩く光っている。
「いくわよ! ムラサキ流最終奥義! ≪約束され「タイム!」
咄嗟に両手をT字にして本日二回目のタイムをとる。
「ちょっとヒロ、今すごいいいところじゃない。お姉ちゃんのかっこいいとこよ?」
「あの、申し訳ないんだけど、ちょっ技名をね。見直してもらえないかなって。」
「えぇ~なんでー? かっこよくない?」
たしかにね! かっこいいんだけどね!
でもさすがにそれは危険だと思うんだ!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
≪氷牙魔牢陣≫はヒロくんの『ぼくがかんがえたさいきょおまほお』シリーズの一つで、魔物に魔法ダメージ+追加ダメージ:凍結+拘束(強)の効果を発揮します。
ムラサキさんが前衛で時間を稼ぎ、ヒロくんが後方で罠設置→ムラサキさんが誘い込んで罠発動のコンボはかなり強力です。
ヒロくんも頑張ってるんです!




