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第三十姉嫁 ムラサキお姉ちゃん、運命に出会うの巻 そのろく

感想いただきました。ありがとうございます。

「ちょっと拍子抜けね。串刺しになった白骨死体とか蛇とか出てくると思ってたのに。」

「薄暗くて埃っぽいだけで、普通の通路だもんね。あれじゃない、王族用の脱出通路とかなんじゃない? よく漫画とかであるじゃん」

「お姉ちゃん、もうちょっとスリリングかつエキサイティングな展開を希望したいんだけど。」


 俺はノーセンキュー。安心安全が一番です。




 さらに進むと、鉄格子が道を塞いでいた。

 鉄格子に触れてみる。


「・・・うん、鍵かかってるね。残念だけどこ「お姉ちゃんキック!」


 ガシャァァァァン!


 さきねぇの全力蹴りを食らい、吹き飛ぶ鉄格子。


「え、嘘だろ。なんで今蹴った?」

「強度を調べようと思ったのよ?」

「・・・もし今ので開かなかったら?」

「ミカエルくんで殴ってたのよ?」

「壊す気満々じゃねーか!?」


 かわいそうな鉄格子くん。

 A級冒険者の全力キックとか、アクセル全開の軽トラが突っ込んできたようなもんだしな。

 お悔やみ申し上げます。


「きっと錆びてたのよ。盛者必衰盛者必衰。」


 何事もなかったかのように鉄格子のあった場所を潜り抜けるさきねぇ。


「ここまできたらいくしかないっしょ!」

「はぁ・・・まぁ止めても無駄だろうしね。どこまでもついていきますよ。」


 怒られたら頭下げまくろう。お金で解決してもいいし、土下座も辞さない。

 それでも許されなかったら、ノエルさんに連絡をとって脅迫せっとくしてもらおう。

 さきねぇを守るためならなんでもするし、どんな手でも使ってやんよ。


 さらに先に進むと、開けた場所に出た。

 甲冑とか木箱とかよくわからないものとかが乱雑に置いてある。

 倉庫かね?


「行き止まりっぽいね。」

「いや、絶対そんなはずないって。どっかに隠し通路あるから手分けして探すわよ!」

「隠し通路ったって、どうやって見つけるのさ。」

「剣でつつくと他と音が違う壁があるから、そこに爆弾置いて爆破するわ。」

「そこまでいくともうテロリストだろ!」


 さきねぇは部屋を右回りで調べるようだ。

 しかたない、俺も調べるか。

 左回りで壁を調べる。

 すごい埃っぽいから使われていないなこりゃ。

 エクスカリボーで壁をつつくが、特に変わった箇所は見受けられない。


「さきねぇ、やっぱ見つからないよー。」


 シーン・・・


「さきねぇ?」


 後ろを振り返ると、部屋の中に誰もいなかった。


「・・・え?」


 キョロキョロあたりを見回すも、物音一つしない。

 あれ、どこいった?


「さ、さきねぇー。お姉さまー。どこー?」


 シーン・・・


 え、なに、やばい、すごい心細くなってきた。


「・・・・・・おねぇぇぇさまぁぁぁぁぁ! どこですかぁぁぁぁぁぁ!!」

「ハーイ!」

「うおっ!?」


 すぐ近くにあった絵画の裏からさきねぇが現れた。


「ここここ。この裏に隠し扉あったわ!」

「じゃあ教えてよ! 怖かったよ! 寂しかったよ!」

「怯えるヒロもかわいい!」

「歪んだ愛情!」


 さきねぇに続いて、俺も絵画の裏を覗くとぽっかりと穴が開いていた。

 忍者村の掛け軸裏の秘密通路みたいなもんか。

 やばい、ちょっと楽しくなってきた。


「先に進みましょう!」

「おーいえー!」


 二人仲良く手を繋いで先に進むのであった。




 隠し通路をまっすぐ進むこと数分、今度は二股の通路があった。

 分かれ道か。


「右左どっち♪」

「ん~・・・」


 さきねぇが両手の人差し指を伸ばし、ダウジングする。


「・・・電球ピコーン! こっちね!」

「ゴーゴー!」


 念のために分岐点の床に特別製の釘を打ち込む。

 俺の魔力が込められているため、離れても方角くらいはわかる。

 迷子になったら壁をぶっ壊しながらこの釘目掛けて戻ればいいだけだ。




 通路を進むこと、一時間は経っただろうか。

 この隠し通路は迷路になっていた。

 正直、どこをどう曲がって今ここにいるのかわからない状況だ。

 さきねぇの姉センサーが頼りなのだが、先程から無言のさきねぇが気になる。


「さきねぇ、今どんなもんだろ。」

「・・・」


 さきねぇに目を向けると、鬼気迫る表情をしていた。

 こんな顔は滅多に見ないぞ?


「あの、お姉さま。もしや、迷子になりましたか?」

「・・・・・・」

「お姉さま? もし迷子になっても最初の分岐点の方向はわかるから大丈夫だよ?」

「・・・たい。」

「え?」

「お花摘みたい。」

「!?」


 ある意味、迷子よりも切実な問題に直面していた!

 お花摘みとは、女性がトイレにいくことを意味する隠語である。

 ちなみに、男性の場合は雉撃ちというらしい。豆知識。


 まずいな。

 多くの女性冒険者から喝采を浴びた俺の芸術的個室トイレ魔法は、最終的に土に埋めることで完結する。

 しかし、ここは地下通路。地面を掘れるような感じではない。


「「・・・・・・」」


 さきねぇの目がめっちゃギラギラしている。怖い。

 それから歩くこと数分。

 ついに扉を発見した!


「いくわよ!」

「お、おう!」


 扉を開ける。

 そこは大きな部屋になっていた。

 その部屋の中は大量の紙が散らばっており、そこに一人の女性がいた。

 白衣を着ていて髪がボサボサのその女性は、キョトンとした顔でこちらを見ている。


「だ、誰だっていう?」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ! そんなことどうでもいいからさっさとトイレに案内しなさいさもないとあんたのピーーをピーーしてピーーするわよ!!」

「ひぃ!? キチ○イ!?」


 マッハで女性に近づくとその胸倉をつかみ、ガックンガックン揺らすさきねぇ。


「そ、そこの扉の奥にトイレがあるっていう!」


 その言葉を聞くとすぐに女性を降ろし奥に走りさるさきねぇ。

 少しすると笑顔で戻ってきた。


「いやー、綺麗なお花畑だったわー。ついついお花摘むのに夢中になって時間くっちゃったわー。」

「いや、そういうのいいから。」


 お花摘みというのは女性がトイレにいくのを隠す隠語で、って何回同じ説明すんねん。もうええわ。


「あ、あんたら何者だっていう。不審者ならば右手を、そうでないなら両手を挙げるっていう。」

「・・・どうする、ここは思い切って三点倒立?」

「俺があの人の立場だったら即警備兵呼ぶわ。」


 とりあえず両手を挙げつつ笑顔で怖くないよアピールをする。

 どれだけ効果があるかは正直不明だけど。


「・・・つーかあんたは何してんのここで。」

「魔物の研究をしてるんだっていう。」

「魔物の研究?」


 魔物の研究施設?

 なんか危険な香りがしますね。


「そうだっていう。ゴーレムみたいな無生物の魔物とかを戦力として使えないか研究してるっていう。」

「悪の秘密結社みたいね。」

「心外だっていう! ちゃんと国にもギルドにも魔法協会にも許可はとってるっていう! 公的機関だっていう!」


 両腕を上げ、プンスカしながら説明する女性。

 けっこう背が高めな大人っぽい女性なのに、子供のようなしぐさをするのでアンバランスさがすごい。


「ところで、あんたらは誰だっていう? 見かけない顔だけど、新しい研究員かっていう?」

「そうです。」「違います。」

「なんで意見が分かれるんだっていう。どっちだっていう。」


 困惑気味の女性。

 公的機関の研究施設に迷い込んだってことは、さすがにちゃんと説明しないとまずいな。


「お城見学ツアーで来たんですけど、道に迷った結果ここにたどり着いた感じです。」

「ツアー参加者? 迷子でここまで来れるはずないっていう。途中で迷路もあったっていう? あそこは道を知らない人が入ったが最後、一生彷徨うことになるっていう。」

「たまたまここにたどり着いたわん。」


 ガチで殺しにきてる迷路やつだったのか。

 でもうちのお姉さまのラック値はカンストレベルで人類最高値だからね。仕方ないね。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


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