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第三姉嫁 外伝『遥か彼方の物語 そのいち』

昨日は気付いたら自動更新になっちゃいました。すいません。


一話完結の短編で書こうとしたら、ノリにノッてしまい三話構成になりました。

そして完全に作者の趣味全開のお話で、あねおれ本編の約20年後が舞台です。

「ち、ちくしょう・・・!」


 俺の名前はカシム。

 つい最近冒険者になったばかりの大型ルーキーだ。

 草原の魔物なんかじゃ物足りなくなり森に入ったのが運のツキ。

 いつのまにか六匹のゴブリンに囲まれてしまった。

 中にはゴブリンアーチャーもおり、足に怪我を負ってしまったため走って逃げることもできない。

 つまらない意地なんか張って一人で来なきゃよかった。

 精霊王様、どうかご加護を・・・!


「・・・おにーさん、もしかしてピンチなんだナ?」

「・・・・・・・・・は?」


 急に声が聞こえたので振り返る。

 そこには、危険な森の中にも関わらず、元気そうな黒髪の男の子の姿があった。


「っておにーさん、足に怪我してるんだゾ!めっちゃ痛そうなんだゾ!」

「なんでこんなところにいる!さっさと逃げろ!!」


 自分のことは棚に上げて子供を怒鳴りつける。


「ゴブゴブー!」


 ゴブリンが突っ込んできた!

 くそ、せめてこの子だけでも逃がさないと・・・!

 そう思っていると、子供がすっと俺の前に立った。

 そして。


「抜けば玉散る氷の刃・・・寄らば、斬る!なんだゾ!」


 ドガァァァァン!


 でかくて硬い何かがぶつかったような音がすると同時に、すごい勢いで空を飛ぶゴブリン。

 そして、両手で持った大きなハンマーを振り切った格好の男の子。

 え、もしかして、この子がやったのか?


「ゴブリンども!夜空に輝く二つの月と裁判長に代わって、裁くんだゾ!判決は常に死刑だけどナ!」


 その言葉と共に、笑いながらゴブリンたちに向かって突っ込む男の子。

 重そうなハンマーを一振りするだけでゴブリンが吹っ飛ぶ。

 つ、強い・・・もしかして俺より強かったり?

 その時、ゴブリンアーチャーが少年を狙っているのが見えた。


「危ない!」


 俺の叫びと同時に、ゴブリンアーチャーから矢が放たれる。

 矢はまっすぐに少年に吸い込まれ。


「フッ!」

「はぁ!?」「ゴブッ!?」


 俺とゴブリンアーチャーの驚愕の声が重なる。

 少年は人差し指と中指、たった二本の指で矢を挟み込んで止めていた。


「かーちゃん直伝!『にししんくうは』なんだゾ!」


 そして矢は先程と同じ軌道を描いてゴブリンアーチャーの額の魔石を貫き、ゴブリンアーチャーは光となって消滅する。

 あ、ありえない・・・人間なのかこの子。


「・・・もう大丈夫ですよ。」

「え!?」


 また後ろから声がした。

 振り向くと、そこには女の子がいた。

 長い黒髪に大きな目、ニコニコとしたやわらかい笑顔、あと数年もしたら誰もが振り返る美少女になることだろう。


「そのままでいてください。今治療しますので。」

「・・・熱っ!?」


 女の子が何かを呟くと、一瞬だけめっちゃ熱かったがすぐに痛みが消え、傷跡もなくなった。

 す、すげぇ・・・これが回復魔法!

 教会の人以外で使う人に会ったの初めてだ。

 でもなんで熱いんだろ。教会の人の回復魔法は普通だったけど・・・


「他にお怪我はありませんか?」

「あ、うん。大丈夫。ありがとう。」

「いえ、おかまいなく。『人に優しく』がお父様の教えですから。」


 ニコッと笑う女の子。

 ロリコンじゃないけどドキッっとした。


「しろねぇ!終わったんだゾ!」

「ハク、お疲れ様。」


 いつのまにかゴブリンたちの姿は消えていた。

 たった一人であれだけの数のゴブリンを倒したのか・・・


「ハク、怪我はない?」

「ぜんぜん平気なんだゾ!」

「まぁ私の弟なら当然ね。むしろゴブリン程度で怪我なんかしたら、情けなさすぎて全身骨折でも回復しないけど。」

「そこは治してほしいんだナ!?」


 姉弟なのか。

 そして『ゴブリン程度』・・・ゴブリン程度に怪我してすいません・・・


「えっと、助けてもらってありがとう。俺はカシム。その・・・君たちは一体?」

「私はマシロと申します。こっちは弟のコハクです。」

「よろしくなんだゾ!」


 服装なんかは普通の服に地味なコートを羽織ってる、どこにでもいそうな男の子と女の子だ。

 顔も雰囲気も全然似てないのに、なんかそっくりに感じる。なんだろ?

 もしかして双子だったり? まぁいいか。


「そういや、どうして君たちみたいな子供がこの森に?」

「・・・実はもうすぐ両親の結婚記念日なんです。忌々しいですけど。なので、せっかくだからプレゼントを買って贈ろうと思って、そのお小遣い稼ぎにブルーハーブを取りに来ました。忌々しいですけど。」


 今、忌々しいって二回言ったぞ。


「・・・ってブルーハーブ? 森の奥地にしかないんじゃないか? 危険だよ。それに君ら、冒険者になれる年齢じゃないだろう。仮にブルーハーブを取ってこれたとしても換金なんて・・・」

「ツテがあるから大丈夫なんだゾ!」

「ツテ?」

「そうなんだゾ!マリーシむぐぅ」


 マシロちゃんがコハクくんの口を抑える。


「ハク? 何も考えずに話す癖は直しなさい?」

「むぐ。」

「はい、よろしい。もしこれがバレておば様に迷惑がかかったら大変でしょ。」

「それもそうだナ。」

「それに、おば様にだけ迷惑がかかるんなら別にいいけど、わたしたちにまで被害が及んだら嫌でしょ?」

「確かに。さすがしろねぇ、賢いんだナ!」

「でしょ?」


 マシロちゃんを褒め称えるコハクくんと、笑顔のマシロちゃん。

 よくわからないけど、仲が良いことだけは伝わってきた。


「カシムさんはどうしてお一人で森に? 一人はさすがに危険ですよ?」

「あー、まぁ、ちょっと、ね。」


 言えない・・・俺なら一人でも大丈夫!とか勝手に思い込んでここに来ただけだなんて。

 やっぱチーム組まないとダメかぁ。でもそうするとお金がなぁ・・・

 そう考えていると、マシロちゃんとコハクくんが急に静かになる。

 どうしたんだ?


「二人とも、どうし「お話中ではありますが、戦闘準備と参りましょう。前方より敵影、複数です。」

「了解なんだゾ!」「え!? え!?」


 すぐにハンマーを構え、前に出るコハクくん。

 それに遅れて俺も剣を構える。

 すると。


「「「「「ゴブゴブゴブゴブ!」」」」


 前方からゴブリンの大群が押し寄せてきた!

 しかもE級魔物の中では上位に入るゴブリンファイターの姿まで見える。

 それも、三体!


「・・・ハク、一人でいけるわよね?」

「当然!任せるんだゾ!」


 二人のその言葉に衝撃を受ける。


「ば、ばかな!あの大群を一人でなんて無茶だ!マシロちゃん!鬼か君は!」

「・・・カシムのにーちゃん、何言ってんだナ? しろねぇは優しいんだナ。それにオレは強くならなきゃいけないんだゾ!このくらいで逃げ出したらかーちゃんに笑われるし、ばーちゃんをガッカリさせちゃうんだゾ!」


 そう言うとゴブリンの群れに突っ込んでいくコハクくん。


「なら俺もコハクくんと一緒に「カシムさんは私のそばで敵の警戒をお願いします。」


 ・・・つまり何か? 弟を危険な目に会わせて、自分は魔法使いだから俺に護衛させて安全な後ろで待機ってことか?

 ふざけるな!


「マシロちゃん!いくらなんでも「ゴブゥ!」


 突然背後の茂みからナイフを持ったゴブリンが突っ込んできた。

 ゴ、ゴブリンハンター!?

 まずい、マシロちゃんがやられる!


「マシロちゃん!」


 俺の言葉を受けて、いや、受ける前にマシロちゃんはゴブリンハンターに向かって数歩歩いていた。

 それだけ。


「ふっ!」

「・・・ゴブッ!?」


 それだけだったはずなのに、突っ込んてきたゴブリンハンターは空中で一回転し、思い切り地面に叩きつけられた。

 ・・・え? 今、何が起こったんだ?


「あれだけの数なんだもの。一匹くらい伏兵がいると思ったわ。」


 マシロちゃんが地面でピクピクしているゴブリンハンターの脇に立つ。


「ねぇ、今なんで私を狙ったの? 魔法使いだから接近戦に弱いと思った? リーダーっぽいから先に頭を潰そうと思った? それとも、とびっきりかわいい美少女だったからか弱いと思った?」


 マシロちゃんが笑う。

 先ほどまでの天使と見間違うようなかわいらしい笑顔ではなく、美しい悪魔のような顔で。

 ニタァ、と。

 ふと気付くと、マシロちゃんの手には棍棒が握られていた。

 無骨な形ではなく、職人が丹精こめて製作したと一目でわかるようなスタイリッシュなものだ。

 そして、棍棒を両手で持つと天高く掲げ。


「甘ぇよカス。」


ガンッ!


 ゴブリンハンターの顔面に向かって思い切り振り下ろした!

 ビキッと音を立てて魔石が砕け、ゴブリンハンターの体が光になって消える。


「・・・さて、それではカシムさん。ここで待っていてもらってもよろしいでしょうか? もう伏兵はいないと思いますが、警戒はしててくださいね?」

「は、はい・・・その、マシロ、さんはどちらへ?」

「弟の加勢にいってきます。わたし、鬼ではないので・・・・・・・。」


 そしてマシロちゃんはニコリと天使のようなかわいらしい笑顔を見せ、優雅な足取りで乱戦状態の戦場へと足を向けたのだった。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


謎の双子姉弟、マシロとコハクの正体は?

そして冒険者ギルドにツテのあるマリーシなんとかおばさんとは!?

待て、次号!


作者の好きな展開その1

・固有名詞はでないが、前作をプレイしている人にはわかるキャラの話がチラッと出る

・聖女のようなシスター的美少女が実はかなり強い上にやや腹黒でちょっと口が悪い

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