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第二十二姉嫁 外伝『二度あることは三度ある? そのいち』

皆様お久しぶりです。

今回は三話構成で『遥か彼方の物語』の一年ほど前の話です。

そして三十路越えのおっさんの出番が多い異色作です。

たまにはこんなのもいいかなーと。

 俺の名前はスレイ・エンハンス。

 冒険者ギルドアルゼン支部の副支部長をしてるっす。

 ここまでくるのに色々あったっすけど、なんとか頑張ってやってるっす。

 ・・・ん? なんか下が騒がしいな。またなんかあったのか。

 ムラサキさん関係じゃなきゃいいんすけど・・・


「本当に見たんです!」

「とはいってもねぇ・・・?」


 執務室から出て下に行くと、新米冒険者と受付嬢がもみ合っていた。


「どうしたんだい?」

「あ、副支部長!お疲れ様です!実は、この方が・・・」

「話を聞いてください!」

「わかってる。聞くから落ち着きなさい。で、何がどうした?」

「今日アルゼン荒野にいって修行してたんです。そしたら、スケルトンがいっぱいいたんです!」


 ・・・アルゼン荒野にスケルトンって。

 なんかすごい既視感を覚える内容だな。


「どう思います副支部長。アルゼン荒野にスケルトンなんて、ねぇ?」

「最初から疑ってかかっちゃいけないよ。そのスケルトンはどのくらいの数だったんだい?」

「いっぱいです!」

「・・・・・・」


 まさかあの時のヒイロさんたちの気持ちが今になってわかるとは・・・

『数はどのくらい?』『いっぱいです!』ってすごい判断に困るわ。

(注 あねおれ本編百四姉参照)


「・・・D級が一名以上いる冒険者チームを何組か集めてくれ。荒野の偵察に出てもらう。」

「副支部長!」「・・・よろしいんですか?」


 嬉しそうな新米と不審げな受付嬢。


「君もここの職員ならアルゼンの歴史くらい学んでおきなさい。アルゼン荒野に大量のスケルトンが現れたことは何度かあるんだ。もし事実ならすぐに対応しないと住民を危険に晒すことになる。すぐ手配を。」

「りょ、了解しました!」

「あ、あとリムルとラウルをここに呼んでくれ。さっきの内容を話せば準備はしてくれるはずだ。」

「わかりました!」


 さて、と。じゃあちょっくら出掛けようかな。


「あ、ふ、副支部長!? どちらへ!?」

「ちょっとね。ある方にご助力をお願いしてくるよ。」




 カラン♪


「いらっしゃー、ってスレイかよ。」

「スレイかよってひどいっすよヒイロさん。」

「ははは、悪い悪い。お客様は神様ですってな。今日は何買う? さきねぇの新作のこの炙りマグロンパンとかおすすめだぞ。意外に悪くない。」

「・・・いえ、実は今日はパンを買いにきたわけではないんです。」

「ん? また厄介ごと?」

「実は・・・」


 さっきの出来事をヒイロさんに話す。


「ぶわっはっはっはっは!スケルトン大量発生とか懐かしいなおい!俺たちがまだ新米の頃だから・・・二十年近く前か。思えば遠くにきたもんだ。」

「まさか今度はこっちが報告を受ける側になるとは思わなかったっすけどね。」

「あの時はノエルさん無双で即終了だったけど、今回はそうはいかんぜ?」

「・・・何かあったんすか?」

「いや、今さきねぇとノエルさんと真白と琥珀は旅行中なのよ。俺はお留守番。シクシク。」

「そ、そうなんすか。」


 ヒイロさんたちはアルゼンから出る時は大体ノエル様かヒイロさんかムラサキさんの誰か一人は残るようにしてるっす。

 そのことからノエル一家はアルゼンの影の守護者として地味に有名っす。


「で、S級冒険者の力は借りれないが、どうすんだ冒険者ギルドアルゼン支部、副支部長殿?」

「いえ、自分はノエル様たちではなくヒイロさんの力をお借りしたいっす!」

「ん~・・・パス!」

「えぇ!?」


 まさか断られるとは思わなかった!


「ど、どうしてっすか!? わかりやすく簡潔に説明してほしいっす!」

「めんどい。」

「四文字!?」


 簡潔すぎるっす!


「つーかさ、昔ならいざ知らず、今はアルゼンの冒険者の質もけっこう上がったじゃん? 今更俺みたいなロートルがでしゃばってもいいことないって。老兵は潔く戦場を去るべし、よ。」

「それでも自分はヒイロさんの力を借りたいっす!ヒイロさんの力を新米どもに見せつけるべきっす!」


 ノエル様とムラサキさんの二人が有名すぎるせいで、ヒイロさんの名前が目立ってないのが個人的に悔しい。

 ほんとはすごい人なのに本人にその自覚が全然ないのがアレだけど。


「でもなー、愛妻も愛娘も愛息子も愛祖母も見てないからなー。誰も褒めてくれないじゃんさーみーしーいー。」

「あんた何歳っすか……」


 たまに子供みたいなこと言い出すなこの人。

 まぁ本人曰く信頼してる人にしか見せない姿らしいから嬉しいっちゃ嬉しいっすけど。


「でもここでかっこいい姿見せたら若い女の子にもモテモテっすよ!キャーキャー言われちゃうっすよ!」

「ふむ、まぁ悪くはないな。」


 言質をとった!


「ヒイロさん、ムラサキさんに『ヒイロさんが若い女の子にチヤホヤされたがってた』って報告されたくなければ協力するっす。」

「え!? うそ、お前、今のは、その、違うやつじゃん? そういうのじゃないやつじゃん?」

「マシロちゃんにも言うっす。」

「嘘だろ……え、お前、なに、どうしたの? 俺のかわいい後輩だったスレイはどこにいったの?」

「返事ははいかイエスでお願いするっす。」

「………………喜んで協力させていただきます。」

「わかってもらえてよかったっす!」


 ヒイロさんが『絶望した!』とか『言いたいことも言えないこんな世の中じゃ……』たかブツブツ呟いてるけどスルーっす。

 自分ももうギルドの副支部長っすからね。この程度の手練手管はお手のものっす。

 まぁなんだかんだ言ってヒイロさんのことだから協力してくれるとは思ってましたけどね。


「つーかお前、こんなとこいていいの?今マルス支部長王都にでかけてんべ?」

「あいかわらず情報通っすね。大丈夫っす、リムルとラウルさんにお願いしてあるんで。」

「あーリムルちゃんが指揮とってんなら安心だわ。あの子なぜか貫禄あるからな。肝っ玉かーちゃんだ。」

「尻に敷かれっぱなしっす。」

「そんなもんでいいんだよ。男はいざというときにバシッと決めりゃええねん。」

「そうっすよね!」


 俺とヒイロさんはお互い尻に敷かれっぱなし同士、共感できる点が多々あるので嬉しい。


「しかしラウルさんがギルド職員として教官務めてるとかなんかすげーよな。セクハラしないの?」

「するっす。この前女性冒険者たちからフクロにされてたっす。」

「もういい年なんだから落ち着けよって話だ。」

「確かに。」


 二人で笑いあう。

 副支部長という立場上、あまり周りに愚痴もこぼせないのでこういうくだらない話で笑いあえる時間はとてもありがたいっす。


「じゃあ今日は早めに店じまいしますかね。うーん、パンまだ余ってんだよな……サービスすっか。」


 そういうとヒイロさんはパンをかごに入れて外に出る。


「もうお店閉めちゃうので出血大サービス!パン一個1パルだ!お一人様一点限り!もってけドロボー!」


 ヒイロさんが言い終わる前に、かごの前は主婦だらけになっていた。

 そしてあっという間になくなるパン。


「さて、これでいいな。んじゃいくべ。」

「あの、よかったんすか?」

「何が?」

「パンっす。もしアレならギルドでお金出しますけど・・・」

「元々利益出すのが目的じゃなくて趣味でやってるようなもんだし、気にすんな。」

「そういってもらえると嬉しいっす。」

「相変わらず資金カツカツなん?」

「カツカツっす。」

「ほんとクソな組織だな。」

「ほんとクソっすよね。」


 また二人で笑いあう。

 やっぱヒイロさんと話してるのは楽でいいわ~。


「そういやラムサスさんは? 指揮だけならあの人でも十分だろ。」

「腰が痛いって温泉にいってます。」

「・・・かの高名な〝風影剣ファントムナイト〟も年には勝てないかぁ。切ねぇな。」

「しょうがないっす。なんだかんだいってもうおじいちゃんっすからね。」


 そんな世間話をしながらギルドへと向かうのだった。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。

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