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第二姉嫁 ヒロくん、けじめをつけるの巻

一度削除した蛇足話ですが、こっちで復活です。

内容は以前と変わっていないので、既読の方はさらっと流してしまっても大丈夫です。

新要素はあとがきでMFCの会員上位十名を追記したくらいです(笑)

「・・・・・・・・・」ゴクリ


 ヒイロは息を飲んだ。

 当然だ。

 彼の前には百人近い人間が整列しているのだから。

 人間というより精兵といったほうが近いかもしれない。

 なぜなら。


「・・・・・・ではこれより、ムラサキファンクラブの緊急解散総会を始めます。」


 彼の前に整列する全員がMFCの会員なのだから。




「えー・・・」

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」


 ヒイロの言葉を聴くために、会員たちは身じろぎ一つせず注視する。

 ヒイロは一度目を閉じた。

 そして息を吐くと、目を開き、告げた。


「この度、私、ヒイロ・ウイヅキはムラサキ・ウイヅキさんと結婚いたしました。」

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」


 会員たちは一言もしゃべらない。

 そして、ヒイロは気持ちを切り替える。

 これからは『ムラサキの弟』ではなく『MFC会長』として話す為に。


「君たちに何の相談もなく、無断で結婚したことについて謝罪したいと思う。すまなかった。だが、諸君に謝ることはそれだけだ。結婚したことについて、私は一切の謝罪をするつもりはない。なぜなら、この世界で一番さきねぇを愛しているのは俺だからだ!そして、この世界で最も長くさきねぇを愛し続けた人間も俺だからだ!この想いは誰にも負けない!誰にも恥じることはない!」


 会員たちはじっとヒイロを見つめ続ける。


「もしこの結婚に文句があるやつは遠慮なく申し出てくれ。勝負をしよう。もちろん暴力ではない。愛を語るのにそんなものに頼るつもりはない。勝負は・・・『どれだけさきねぇを愛しているか』という想いVS想いの精神戦だ!さぁ、かかってこい!お前たちの屍を乗り越えて、俺はさきねぇと幸せになる!」


 言い切ると、ヒイロは背筋を伸ばし、胸を張る。

 その姿は、まるで王者のようだった。

 そのヒイロに対し、一人の男が手を上げ話し始めた。


「会員ナンバー22番、ソルト・レイクです。皆を代表し、私から会長へ伝える言葉があります。」

「・・・聞こう。」

「・・・・・・会長!ご結婚おめでとうございます!」

「「「「「おめでとうございます!」」」」」

「!?」


 ソルトの言葉に、今まで黙っていた会員たちが一斉に声を上げ、頭を下げる。

 ヒイロは目を見開く。


「皆で話し合いました。MFC会長ともあろうものがアイドルに手を出した罪を行動を許すべきか、許さぬべきか・・・結論は『我らに対し、謝罪をしなかったら許す』というもので決まりました。もしムラサキ様と結婚したことを謝るというのであれば、それは我らMFCの会員を侮辱する行為であり、ムラサキ様をも侮辱する行為だと考えたからです。」

「・・・・・・」

「しかし、会長は我らが望んでいた言葉をくださいました。ならば、我ら一同、喜んで祝福させていただきます!おめでとうございます!」

「おめでとうございます!」「おめでとう!」「ムラサキ様を幸せにしてあげてください!」「あなた方に精霊王様の祝福があらんことを!」

「み、みんな・・・!」


 多くの会員がヒイロの元に集まり、口々にお祝いを述べる。


「ありがとう、みんな!会長職にあるにも関わらずさきねぇと結婚した俺を許してくれるなんて・・・実は会員のみんなからフルボッコにされる覚悟くらいはあったんだが・・・」

「え、そうなのですか? ではそうしましょう。」

「・・・・・・・・・え?」


 ソルトの言葉に、硬直するヒイロ。


「みんな!会長が一人一発ずつ殴らせてくれるそうだ!会長の覚悟を無駄にしないためにも、全力でいくぞ!」

「「「「「おぉー!!!」」」」」

「え、いや、そこは『そんなことできません!』とか言うところじゃ・・・?」

「みな祝福する気はもちろんあります。ですが我らのアイドル、ムラサキ様を奪ったのもまた事実。殴らせていただけるなら殴りたいというのが人というものです。」

「・・・で、ですか。」

「です。」


 会員たちは我先に列を作る。

 会員たちの中でその列に並ばない者は一人もいなかった。

 ヒイロはその様子に口角を引きつらせながらも、覚悟を決めた。


「・・・・・・よし、こい!」

「では、僭越ながら私が先陣を切りましょう。」

「ソルト、お前には色々助けられたな。今までご苦労だった。」

「光栄の極み。では・・・会員ナンバー22!ソルト・レイク!会長、おめでとうございます!」パァン!

「・・・・・・ぃてぇ」


 手加減など一切ない渾身の平手がヒイロの右頬にクリーンヒットし、見事な紅葉を作る。


「次!」

「は、はい!か、会員番号13!サラ・エルメスです!」


 ソルトの言葉に次の会員がヒイロの前に立つ。


「サラちゃんか。ナイシー大会では世話になったね。ありがとう。」

「会長とムラサキ様のためなら!・・・では、いきます!」ペチッ!


 サラの平手はへろへろであった。

 ヒイロが優しいな~この娘は・・・なんて思っていると。


「バカモノ!」

「す、すいません!」


 ソルトからの激しい叱責が飛ぶ。


「会長の覚悟を侮辱しているのか貴様!全力で殴ることこそ大恩ある会長に報いる唯一のすべと知れ!」

「!? か、会長!大変申し訳ありませんでした!・・・いきます!」パンッ!


 先程よりも乾いた音が響き、ヒイロの左頬が赤くなる。


「では次!」


 そしてヒイロにとっての長く険しい試練が始まった。




 約一時間後、ヒイロの頬は真っ赤に膨らんでいた。

 オタフク風邪もびっくりである。

 意識は朦朧としているにも関わらず、めちゃくちゃ痛かった。


 しかし、ヒイロは回復しなかった。

 何度も回復したいと思った。≪聖杯水アクアホーリー≫さえ使えばすぐにこの痛みから逃れられる、と。

 しかし、回復しなかった。

 それが会長としての彼らに対するけじめであったからだ。

 ゆえに、手加減をする会員もいなかった。

 ヒイロも百人近い会員たちも全力であり、本気だった。

 そして。


「会長。お疲れ様でした。次が最後の会員です。」

「・・・・・・・・・そう、か」


 ヒイロは痛みだったり平手が目に当たって腫れ上がっていたりで、目の前の最後の会員が誰かわからなかった。

 それでも最後の一撃をもらうために気合を入れた。


「・・・・・・よし、こい!」

「では、いきます!会員ナンバー10!マリーシア・ホルン!愛人、妾、二号さん、どれでもいつでもオーケーです!」ガンッ!


 平手ではなく、元D級冒険者の全力ストレートを食らったヒイロの意識はそこで途切れた。




 見届け人として来ていたヴォルフが気絶したヒイロを背負う。

 さすがのヴォルフもMFCに若干ひいていたが、ヒイロが望んだことならばと何も言わずに帰って行った。


「・・・・・・会長。お疲れ様でした。」


 ヒイロが出て行った方向にソルトが頭を下げると、会員たちもそれに倣い頭を下げる。


「・・・それでは、これでMFCは解散とする。そして・・・」


 ソルトはバッと腕を広げる。


「本日より、ムラサキ・ウイヅキおよびヒイロ・ウイヅキファンクラブを結成する!」

「「「「「オォォォォォォ!!」」」」」




 こうして、本人たちの与り知らぬところでアルゼンに新たなファンクラブが発足したのだった。

 めでたしめでたし?


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


マリーシアさんってMFCの会員だったの?という感想をいくつかいただいたので、上位10名を紹介。


00 ヒロくん(自然の摂理)

01 ノエルさん(当然第一号は義妹弟大好きノエルお祖母ちゃん)

02 タイチョーさん(街の入り口で出会う)

03 串焼屋のおっちゃん(寄り道その一)

04 アルゴスさん(寄り道その二)

05 アメリアさん(教会でお茶)

06 ヴォルフ(偶然出会い食事に誘う)

07 カチュア(兄と同じ)

08 定食屋のウェイトレスさん(いつもの定食屋で)

09 スレイ(ギルドに入って一番最初に話しかけてきたから)

10 マリーシアさん(スレイの次)


こんな感じで、完全にヒロくんがその日に出会った順(親しい人のみ)です!

ムラサキさんに見つからないようにこそっと渡してました。

本編には一人しか出てきていませんが、実質的なMFC幹部は22や33といったゾロ目組です。

そしてギリギリ一桁じゃないマリーシアさん(笑

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