第十九姉嫁 教えて!ヒイロ先生! そのに
評価と感想をいただきました。ありがとうございます。
ブクマや評価もそうですが、特に感想をいただくと嬉しくてつい頬が緩んでしまう藤原です(笑)
「まぁとりあえずデートしようか。頭がすっきりすれば良い考えも浮かぶでしょ。」
「素晴らしい提案だと思います!採用!」
それからさきねぇとぶらぶららぶらぶ街を散歩するのだった。
「いや、そんなもの放置でいいだろう。自己責任だ子供じゃあるまいし。」
「ほらね。」
自宅に帰り今日の話をノエルさんに話したが、予想通りの反応だった。
「冒険者は元々安全なんて保障されていない職業だからな。嫌ならならなければいい。他にも仕事はある。」
「ですが、だからこそ出来うる限りの安全を提供するべきなのでは? このままじゃ冒険者はどんどん減少していきますよ。」
「今は昔よりもだいぶ危険は減ったんだぞ? そこまで甘やかしても軟弱な冒険者が増えるばかりだと思うのだが・・・」
ノエルさんはガチ戦争経験者だからな。
今の若者たちのゆるさが許せないのだろう。
「そういえば、初心者教習ってギルドでやってるんですよね?」
「たしかやってるはずだぞ。」
「じゃあE級向けだったり初心者教習よりちょっと上の訓練ってやってるんですかね?」
ノエルさんが腕を組んで頭をひねる。
「・・・さぁ、知らんな。まぁ私はここ十数年はギルドにほとんど関わってないからな。やってるかもしれんが。」
「まずはラムサスさんとかに話を聞くのが早いか。」
ほんとは今日聞ければよかったんだけど、ラムサスさん荒れてたからな・・・
「そもそもヒロは何をしようとしてるん?」
「いや、ギルドじゃなくて冒険者主体で色々教えられたらなーと思って。簡単に言うと塾のアルバイト講師みたいな。」
「直接体を鍛えたほうが早いんじゃない?」
「いやいや、知識って大事だよ。」
「いやーやっぱパワーでしょ。知識を超える圧倒的なパワー!」
さきねぇがマッスルポーズをとる。
そんなに筋肉ついてるようには見えないのに、どうやってミカエルくんを振り回してるんだろうか。
異世界パワーってすごい。
「知識だって。」
「パワーだってば。」
「知識!」
「ぱぅわー!」
「「ぐぬぬぬぬぬ!」」
にらめっこする俺とさきねぇ。
まつげ長いし目は大きくてぱっちりしてるし、すごいかわいいので正直一生見てられますね。
その時ノエルさんが助け舟を出す。
「・・・じゃあどっちもやればいいんじゃないか?」
「ほう、つまりエルエルは私たち姉弟の骨肉の争いが見たいと?」
「え、別にそういう意味でいったわけじゃないが・・・」
「まぁでもどっちもやってみるっていうのはよい方向性じゃない? 選択肢は多いほうが受講生も喜ぶでしょ。」
俺の言葉にちょっとホッとした顔をしているノエルさん。
「ラムサスさんに色々尋ねてみて、許可取れそうだったら講習みたいなのやってみようか。俺が学科担当で、さきねぇが実技担当?」
「ふっ、私は『技の一号力の二号、そして全てのムラサキー』と呼ばれてるからね!任せなさい!」
「誰がそう呼んでるんだ?」
「私。」
「他には?」
「今日初めて言ったから知らない。」
「意味がわからん!」
「「わはははは!」」
今日もノエルさんの叫び声が森に響き渡っていた。
「・・・というわけなんですが、どうでしょう?」
「ふむふむ。先輩冒険者が無償で冒険の心得や危険さを教えるわけだね。アルゼンでいえばセレナーデの森の恐怖とか。」
「そんな感じです。」
「さすがヒイロさん!賢い!」
翌日、ギルドにいきラムサスさんと(なぜかくっついてきた)マリーシアさんの二人に話す。
賢いか? 先輩が後輩を指導するOJTはけっこう普通だと思うんだけど・・・
「それはヒイロくんがやってくれるのかな?」
「とりあえず私がやってみてビギナー冒険者たちがどんな感じか確認しようかな、と。」
「「っしゃあ!!」」
ラムサスさんとマリーシアさんが同時にガッツポーズをとる。
「え、なんですそれ。」
「いやー実はギルドはどこも人員不足でねー。やったほうが良いとは思ってるんだけど・・・」
「それに人の話聞かないバカばっかですからねー。注意すると『俺らだったら余裕だしぃ?』みたいな頭の悪い返事が返ってきて正直ムカツクからやりたくないんですよー。」
「「さすがヒイロ(くん)(さん)!」」
やばい、変なものを引き受けてしまったっぽいぞ。
「ちなみに、この私に対してなめた口きいた時点でムラサキ流奥義炸裂するけど、いいわよね?」
「どーぞどーぞ!もう奥義でも切り札でも奥の手でも必殺技でもどんどんやっちゃってください!」
「・・・いいんですか?」
「いやー、ギルドが冒険者になんかやっちゃうとアレだけど、冒険者同士のイザコザは、ねぇ? ギルドが関わるよりも冒険者同士で解決したほうが、ねぇ?」
顔が悪い感じになってますよラムサスさん。
「じゃあ俺が学科を担当して、さきねぇが実技担当って感じでいいですかね?」
「ヒイロくんに任せる!場所はギルドで確保するから安心してね!」
いや、場所まで自力で確保しろとか言われたらさすがにキレますわ。
俺キレさせたら大したもんですよ。
「じゃあまずはF級になって数ヶ月経った子たちを対象な感じでいきましょう。」
「あれ、F級は講習やってますよ? E級じゃないんですか? その心は?」
マリーシアさんがハテナ顔。
あんた元D級冒険者だろ。昔を思い出せ職員。
「F級になって数ヶ月って、絶対草原の雑魚魔物相手にするの飽きてますから。暴走するのはだいたいそいつらでしょう?」
「まぁそうですね。でもE級になりたてのルーキーなんかも同じじゃ?」
「そいつらは『俺らはE級!F級とはちげーし!』ってやっすいプライドがあるでしょうから。合同授業なんてやってもソリが合いませんよ。」
「なるほど。そこまでギルドのことを考えてくださるなんて、ヒイロさんすごい!大好き!抱いて!」
両手をほほに添えてキャー!と叫ぶマリーシアさん。
「(無視)そんな感じでよろしいですかラムサスさん。」
「(無視)ああ、それでお願いするよ。でももし今度の先輩冒険者の講習会が上手くいったとしても、他の冒険者は引き受けてくれるもんかね?」
「何か報酬は必要でしょうね。」
「あんまお金は出せないんだけどなー。資金もけっこうカツカツなんだよね・・・」
冒険者ギルド、ほんとブラック企業だな。
「何もお金じゃなくてもいいのでは?」
「・・・というと?」
「例えば前に人数制限のある特別クエストなんてあったじゃないですか。ああいうのに選ばれやすくなるとか、事前に情報をそれとなく流して準備しやすくさせるとか。」
「なるほど。講師には情報だとか優先順位だとか、お金じゃない付加価値をつけるということか。」
「そういうことです。あとは昇格試験の際にちょっとだけ内申点が上がる、という噂を流すとか。」
「いや、残念だけどあれはそういうの関係ないから無理じゃないかな?」
難しい顔をしているラムサスさんの言葉にニヤリとする俺。
「いえ、事実かどうかは関係ないですよ。あくまで噂です。噂。」
「・・・・・・あー、なるほど。噂だったら事実かどうかなんて関係ないもんねぇ。」
「でしょう?」
「くっくっく、ヒイロくんも悪いねぇ。」
「いやいや、ラムサスさんほどでは。」
「「わっはっはっは!」」
悪い笑顔で高笑いをあげる俺とラムサスさん。
トップっていうのはこういう悪知恵も働かせないとね。しゃーなし。
「・・・しかしヒイロくん、冒険者やめたらマジでギルド職員にならない? アルゼンに来てくれたら即副支部長待遇を約束するよ?」
「申し訳ありませんが、ブラック企業はノーセンキュー。」
俺がラムサスさんと話す一方、マリーシアさんは自らの発言によってさきねぇに首根っこを掴まれていた。
「私のかわいい弟に手を出す泥棒ネコめ・・・これは天誅ではない、人誅である!ムラサキ流忍法、≪髪ボサボサの術≫!」
「ああ!なぜか髪がボサボサに広がっちゃう!ムラサキさんよくわからないけどストーップ!」
さきねぇが周囲の静電気を集め、マリーシアさんの髪に帯電させると言う荒業を披露する。
「うわ、ヤマンバみたい。こわっ。」
「ヤ、ヤマンバってなんですか!?」
「『ワルイゴハイネガー!』ってやつよ?」
「意味がわからない!」
うん、それナマハゲね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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