第十六姉嫁 外伝『遥か彼方の物語 そのろく』
よく考えたら十九章以降のよくわかるあねおれ!を書いてませんでした。
なのでそのうちあねおれ本編に追加する、かも?
まぁ誰がそれを求めてるんだって話ではありますが(笑)
「・・・ヒロ様、差し出がましいようですが、そろそろ説明させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、ごめん忘れてた!」
俺の中では『家族>>>>>>>>>>>>>>>>>>>それ以外の何か』なので仕方ないね。
「ここは私が説明しましょう! あれは、十年前のこ「それもう琥珀がやったよ!」「それもうオレがやったんだナ!」
家族が増えてボケ役も増えたけどツッコミ役も増えたのが嬉しいね!
「やるわね琥珀。もう教えることは何もないわ。」
「ついに免許皆伝なんだナ!?」
「ええ。免許獲得よ。まぁ若葉マークのオートマ限定だけどね!」
「「HAHAHAHA!」」
「おーとま?」
爆笑する俺とさきねぇと置いてきぼりの琥珀。
いつか日本に連れて行ってやりたいもんだ。
・・・いや、でもそうすると真白がかわいすぎて言い寄られたりストーカーが出来たりアイドルに勧誘されたりと色々ウザそうだな。やっぱ日本行きはやめよう。
「はぁ・・・では私が説明しますね。」
「真白なら安心だな。」「待ってました!」「よっ! しろねぇ!」
「お父様以外の外野二人うるさい。」
「「はい。」」
真白の説明を聞く。
森の中を散歩していたら新米冒険者がゴブリンに襲われていたので助けたこと。
その冒険者を街に連れて行こうとしたら熊に遭遇したこと。
やむを得ず熊と戦うことになったこと。
なんとか一匹倒したものの、すぐに二匹目が襲ってきたこと。
その時にそこの変態が二人を助けてくれたこと。
そして四人で森の入り口まで戻ってきたこと。
「なるほどね。いや、すいません。うちの子供たちが危ないところを助けていただいたようで。ありがとうございました。何かお礼を・・・」
とりあえず変態イケメンに頭を下げる。
「いえ、お礼など必要ありません。ヒロ様に救っていただいたこの命、少しでも恩返しができれば幸いです。」
「・・・救った? 俺が?」
「ちょっとヒロ、こんな変態いつどこで助けたのよ。」
「いや、記憶にないんだが・・・つーか子供たちの命の恩人なんだから口に出して変態呼ばわりはやめようね。思ってたとしても。」
記憶を遡るが、全く覚えがない。こんな印象的なやつ忘れるはずがないんだが・・・
「とーちゃん、ボケたのかナ?」
「ボケてねぇわ・・・いや、すいません、ちょっと記憶に無いんですが・・・人違いでは?」
「いえ、絶対にあなたです。まぁ当時はこの姿ではなかったのでわからないのも無理はありませんが。」
「???」
『この姿』? どゆこと?
「・・・つーかアンタ、霊獣よね?」
「え。」「仰るとおりです。」
霊獣って、霊獣?
ニュニコーンさんみたいな?
「お会いしたのは今から大体十八年ほど前の話です。ノクターンの森で、その、そこのヒロ様の奥様に殺されそうになったところを助けていただきまして。」
一斉にさきねぇに視線が集まる。
「さきねぇ・・・」「かーちゃん・・・」「やっぱり殺人鬼・・・」
「え、ちょ、何それ。私すごい悪者みたいじゃない!? ノーノー!」
両手を挙げて凶器を持っていないことをアピールするレスラーみたいな行動をとるさきねぇ。
ノクターンの森・・・アルゼンからちょっと離れたとこにある森だな。
うーん・・・
「今って人の姿に変身してるってことでしょ? ちょっと元の姿見せてみなさいよ。」
「では、失礼して・・・あ、その前に。」
「何?」
「元の姿を見ても攻撃しないでいただけるとありがたいのです。特に、その、誰、とは申しませんが・・・」
変態は誰とは申し上げない代わりに、目線が完全にさきねぇをロックオンしていた。
「私が責任を持って妻を抑えておきますので。大丈夫です。」
「良かった・・・では、いきます。はぁぁぁ・・・」
変態が力を集中させると、あたりがざわめきだす。
これはまた・・・強いな、普通に。
A級冒険者クラスはありそうだし、俺じゃあちょっと倒せないかな~。
まぁ生物だから殺せるだろうけど。
「・・・へん、しん!」
変態が光り輝くと、その体がみるみるうちに膨らんでいく。
そして。
「ブヒー。」
「「「「でけぇ!!」」」」
でかかった。
目の前には軽トラくらいでかい豚が佇んでいた。
その頭の上には三角帽子とマントが。
「・・・・・・あ! こいつ、あいつじゃん!」
「え、さきねぇわかったの?」
「ほら、昔とんかつ食べたいのにオーク肉がないとかいってノクターンの森まで取りにいったじゃない!?」
「・・・あーあったねそんなことも。」
すげー昔の話だな。確かさきねぇと結婚する前だから、この世界に来て一年未満だったはず。(あねおれ!第百七十姉参照)
「そん時に会ったじゃない! 三角帽子とマントつけたオークプリンスに! ヒロが見逃してあげたやつ!」
「・・・・・・あー!いた!確かにそんなことあったわ!オーク召喚するオーク助けた!」
「その助けられたオークプリンスがワタシです。」
「育ちすぎでしょ!?」
あの子豚がこんなに大きく・・・
「ヒロ様に恩返しするために努力をした結果、やっと霊獣になることができまして。あ、小さくなることもできますよ。」
シュルシュルと縮小し、普通の大人豚くらいの大きさになる元オークプリンス。
「あーこの姿だとちょっと見覚えあるわ。あれだ、土魔法使えたんだよね。」
「そう! そうです! それがワタシです!」
なんかすごい嬉しそう。
「そして私が蹴りまくったオークよね!」
「そう・・・そうです・・・それがワタシです・・・」
途端に悲しそうになる。
「そっかー。わざわざあの時のお礼に来てくれたのか。ありがとなー。」
「いえ、ワタシはあの時生まれ変わったといっても過言ではありませんので。」
「でもどっかで修行積んでここに戻ってきたんでしょ? 遠くからお疲れ様。」
「最終的には魔境の奥地で悟りを開きましたが、ヒロ様は命の恩人にして人生の道しるべ。あなたにお会いするためならばこの程度の距離はないも同然です。」
俺の知ってる変態枠の中ではすごいまともな人物だな。
でも、今目の前にいるのは普通のブタだからすごいシュール。
「あー、このままだとちょっと話しづらいから人の姿に戻ってもらっていーい?」
「あ、はい・・・へんしーん!」
豚が光り輝くとみるみるうちに姿が変わり、さきほどのイケメンに戻っていた。
「しかし、豚の霊獣なんているのね。聞いたことないけど。」
「そういやそうだね。霊獣としてはどんな種族なの? ほら、馬ならユニコーンとかあるじゃない? そういうの。」
「なんでもチョハッカイというそうです。」
「「・・・え?」」
猪八戒って、西遊記のあいつだよな。
「あの、イメージと全く違うんですけど・・・」
「てゆーかさっきの単なるでかい豚だったけど。猪八戒といえばうっかり八兵衛みたいな三枚目って決まってんのよ。」
「そ、そういわれましても・・・そうらしい、としか・・・」
ちょっと申し訳なさそうな元オークプリンス。
「しろねぇ、チョハッカイってなんなのかナ?」
「うーん、私もわからないわ。お父様の故郷のお話かしら?」
「ほら、昔に強いけど自己中なサルの話してあげたじゃない。あれに出てくるやつよ。」
「母さんが昔話してたあのうさんくさい話の? 作り話でしょ?」
いや、作り話なんだけども、異世界が存在してる時点で本当の可能性もあるっていうか。
説明が難しいな。
「そうだね、猪八戒っていうのはお父さんたちの故郷の御伽噺に出てくる登場人物なんだ。豚の妖怪っていって、精霊、みたいなものかな?」
「「精霊!」」
子供たちの目がキラキラしだす。
「ねぇヒロ、妖怪=精霊ってことは、精霊王は牛魔王ってこと?」
「いや、そこまで深く考えないでください。」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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謎の変態イケメンの正体は、なんと昔助けたオークプリンスでした!びっくり!




