第十五姉嫁 外伝『遥か彼方の物語 そのご』
すいません、色々あって更新が遅れました。
今回は三話更新で、外伝の続きです。いつも愉快な初月一家!
これまでのあらすじ。
姉であり嫁であるさきねぇが子供たちのピンチ(?)を感じ取り森へ走り出した!
俺もいくぞ! 待ってろ、二人とも!
「何事もなければいいが・・・」
森へ向かい走りながら一人ごちる俺。
さきねぇがなんかよくわからないことを言ってる時って、大体なんかよくわからないイベントが発生してる時だからな。
一応完全武装してきたけど、注意しなくては。
森に近づいてきたその時。
ぼかーん!
森の方角から気が抜けるようなアホくさい爆発音が響いた。
この特徴的な音はさきねぇの忍法タイムボカン?
ということは、すでに戦いは始まっているだと!?
クソ、間に合え!
それから数分後、俺が森の入り口にたどり着いた時。
「いったい、何と闘っているんだ・・・」
驚きの光景が目に入ってきた。
「グーグーグーグーグー!」
「パーパーパーパーパー!」
そこには拳でのラッシュを放つ真白と、百烈張り手でそれを受けとめるさきねぇの姿があった。
・・・なんで子供たちを助けに行ったはずのさきねぇが真白とバトっとんねん。
「あ、とーちゃーん!」
「琥珀!」
琥珀が俺に向かってタックルをかましてきたので、がっちりキャッチする。
まだ耐えられるが、あと数年したら普通に当たり負けしそうだな・・・
「無事だったか! 父さんは心配したぞ!」
「全然平気なんだゾ!」
「良かった・・・しかし、これはいったいどういった状況なんだ?」
「いつもとあんまり変わんないんだゾ?」
・・・言われてみれば確かに。
普段から俺を取り合ってケンカしてるもんな。
「いや、でもなんでさきねぇと真白がジャンケンバトルを繰り広げてるんだ? 理由は?」
「一から説明するとちょっと長くなるけど、いいかナ?」
「いや、ここはあえて三行で説明してくれ。」
「三行で!? とーちゃん無茶ぶりなんだナ!? えーっと、三行、三行・・・」
俺の無茶ぶりに真剣に考え出す琥珀。
こういう素直かつノリのいいアホなところがかわいいんだよなこいつ。
「・・・おし、大丈夫だゾ! と-ちゃん、覚悟はいいんだナ!?」
「おう、ばっちこいだ!」
「森で新米冒険者を助けたんだゾ。そんで熊と闘ったんだゾ。そしたら変な人に助けられたんだゾ。戻ったらかーちゃんとしろねぇが戦いだしたんだゾ。」
「四行あった上に、なんで戦いだしたのかさっぱりわかんねぇ。」
「「AHAHAHAHAHA!」」
爆笑する俺と琥珀。
うーん、この感覚。さきねぇと話してるようで心地よいぜ。
「よし、じゃあ長くなってもいいから説明してくれ。」
「わかったんだゾ。あれは、十年前の事だったんだナ・・・」
「なんでやねーん。お前が生まれた年やないかーい。遡りすぎやないかーい。」
「とーちゃん、いいツッコミなんだゾ!」
こういうとこはほんとさきねぇそっくりなんだよなこいつ。
すぐ脱線したがるというか、ボケたがる体質とでもいおうか。
「つーかさっき聞き捨てならないセリフがあったな。『熊と闘った』?それで『変な人に助けられた』?」
「あー、うん、その、まぁ・・・はい。」
視線を落とす琥珀。
普段から『もしも熊に出会ったらすぐ逃げろ!』と言ってあるから、怒られると思っているんだろう。
「・・・琥珀。」
「・・・はい。」
「よく無事に戻ったな。良かったよ、ほんとに。」
琥珀の頭を撫でてやると、安心したように力を抜くのがわかる。
「怒らないんだナ?」
「熊と闘いたくて森の中を探し回った挙句、負けそうになった上に助けられたんなら全力でぶっ飛ばすところだが、なんか闘わざるを得ない理由があったんだろ? わかるよ。父親だからな。」
「とーちゃん・・・!」
俺だってさきねぇが熊パンチなんて食らったら、熊をぶっ殺すか熊にぶっ殺されるまで闘うだろうしな。
「えっと、実はあそこで寝てる新米冒険者のにーちゃんが、熊と会った時に腰抜かしたから置いていけなかったんだゾ。」
「冒険者・・・?」
琥珀が指差した場所を見ると、木陰で若者がぶっ倒れていた。
真白もいたから治療済みだろうし、俺が診なくてもいっか。放置で。
「全く・・・そうならないように制度を作ったんだがなぁ。最近の若者は無鉄砲でいかん。」
「とーちゃん、そのセリフ、じじくさいナ?」
「ちなみに、ノエルさんもよく使ってるセリフだな。」
「めっちゃハイセンスでかっこいいセリフなんだナ! だからばーちゃんには言わないでほしいんだナ!?」
「はいはい、わかってるよ。」
急にあせり出す琥珀に苦笑する。ほんとノエルさん好きだなこいつ。
・・・さて、どうしようか。
親としては『他人なんかどうでもいいからお前たちが無事でいてくれればそれでいい』といった感じなんだが、親としてそれは言っちゃいけないセリフだというのも理解している。
「・・・勝てなかったとしても、よく、守るために戦ったな。えらいぞ。」
「で、でも一匹は倒したんだゾ! あ! とーちゃん嘘ついたんだナ! 熊二匹いたんだゾ! 全然レアじゃないんだゾ!」
「えー、マジでー?」
「マジなんだゾ!」
俺とさきねぇですらキューティーベアーとは数回しか会ったことないんだが、二匹同時エンカウントなんて一回もしたことないぞ。
まぁ琥珀はさきねぇからなんか変なの受け継いでるっぽいからなぁ。
「それについてはこのワタシが保障いたします、ヒロ様。」
「・・・・・・どちら様でしょう。」
俺の横に三角帽子をかぶりスーツにマントをつけたイケメンが立っていた。
なんだこいつ。どうみても変態です。子供たちの教育に悪いですね。
「え、とーちゃんの知り合いじゃないのかナ?」
「おい琥珀、お前、変態がみんな俺の知り合いだと思ったら、お前、大間違いだぞ、お前。」
「でもとーちゃん、変な友達いっぱいいるナ?」
「・・・・・・否定はしないが。」
俺が悪いんじゃない、なぜか変態が俺に寄ってくるんだ。
その時、愛する妻と娘の声が聞こえた。
「なかなかやるじゃない真白。お母さん嬉しいわ。」
「その余裕がムカツク! 本気でかかってこい!」
「あら、そーお? じゃあ久しぶりに全力でやっちゃおうかな? 何が出るかな、何が出るかな~?」
さきねぇは魔法袋をゴソゴソやっている。
中から取り出したのは・・・
「じゃじゃーん、リバ子ー!」
さきねぇの手には神秘的に煌めく美しい剣が一振り。
美人が美しい剣を持つ・・・いやぁ、相変わらず素晴らしい組み合わせですね、っておい。
「さきねぇ! エクスカリバーはやめてくれ!」
「心配性ねぇ。安心せい、みね打ちじゃ。」
「みね打ちどうこうの話じゃなくて! 子供相手に魔剣を持ち出さないで!」
ダッシュでさきねぇからエクスカリバーのリバ子を奪う。
「ああ、私のリバ子が!」
「いいかい真白。確かにお前は強いけど、あくまで『その年齢では』の話だ。お母さんに本気を出させたいなら、挑発ではなく実力で本気を出さざるを得ない状況まで追い込めるくらい強くなりなさい。なので理由はわからないけど今回はこれで終わり。いいね。」
「はい、お父様・・・」
しぶしぶといった感じで手にはめていた黒いグローブをはずす真白。
こいつもこいつで玄武の籠手使ってるし・・・
なんで二人して伝説級の武具でケンカしようとすんだよ恐ろしいよ。
「さきねぇもこれで終わり。いいね?」
「はーい!」
「元気でよろしい。はい、じゃあ仲直りの握手。」
「チェキ☆」
「・・・」
笑顔のさきねぇとは対照的に、ムーっとした顔をしてる真白。
「ほら真白、笑顔笑顔。笑ってる真白が一番かわいいぞ?」
「そ、そうですか!? じゃあお父様のために笑います!」
極上の笑顔を見せる真白。
「じゃあ私もヒロのために笑うわ! 真白、勝負よ!」
「絶対に負けません!」
「だからなんで戦いだすんだよ!」
「「これだけは譲れない(のよ)(んです)!!」」
「あ、はい。」
二人の迫力に、つい頷いてしまった。
「・・・ヒロ様、差し出がましいようですが、そろそろ説明させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、ごめん忘れてた!」
俺の中では『家族>>>>>>>>>>>>>>>>>>>それ以外の何か』なので仕方ないね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
ムラサキさんの現在のメインウェポンは本物のエクスカリバーで、色々あって某王国からゲットしました。
マサムネさんはお下がりとしてコハクが使ってます。




