第三話
「誰ですかっ⁉︎」
男は驚いた。
ただ声をかけただけで刀を向けられるとは思ってなかったのだ。
「え?あ、俺?俺は………そうだな、チェシャ猫、チェシャ猫…で良いんだよな?」
と、訳あって定かでは無い自分について語る。
「ちぇ、チェシャ猫?」
そう言って犬の耳と尻尾を持つ少女が聞き返す。
「いえ、それよりも、ここが何処だか分かっているようですね。臭いからして…人間…いえ、半妖のようですが、瞬間移動の術でも使いましたか?」
ジロッと睨みつける目には、濃い警戒の色が含まれて、チェシャ猫と名乗った男は一歩下がる。
「いや、そんなご大層な術使えないって、俺、こう見えても肉体派だから、」
そう言って、そのまま刀の延長線上から外れると
「ちょっとここの頭の、天魔だっけ?に用事があって」
そうすると、少女は目を見開いて
「そうですか、やはり会合に合わせて里を荒らしに来た侵入者、いえ、刺客ですね。」
ギンっと男を睨みつけると
「天魔様の所には行かせません‼︎白狼天魔の犬走 椛が、ここで貴方を倒してあげます‼︎」
そう言って刀を振りかぶり、男に襲いかかった。
「あ、やっぱり天狗は排他主義なのかぁ、仕方ない、押し通らせてもらおう」
男は構え、袖の中から、ジャラリと輪ができた鎖を取り出す。
「にゃんだかにゃあ」そうため息とともに吐き出して襲い来る刃を見つめ
「やぁ!」
大上段の振り下ろしを
「よっ」
すり足一歩で半身になって、紙一重で躱し、
「なっ、このっ!」
焦った少女の横薙ぎを
「ニャンパラリ〜」
と、飛び上がって刀の軌道の真上を転がりながら、受け流し
「危ないワンコだ」
そう言って、男が輪がついた鎖を振るうと、
ジャラッ
「えっ?」
少女の首に切れ目のなかった鎖の輪がはまり込んだ。