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狙う者

 

 暗い闇の中うごめく姿がある、時間が経つにつれその場に集まる数が増えていく、それらは言葉を喋り目は赤く光っていた。


 「感じるぞ、あの忌々しい波動を」


 「ようやく見つけたぞ、今こそわれらの恨みを晴らす時」


 「新庄家の血を絶やし必ずや復讐を遂げてくれるわ」


 口々に恨み言を発した後、黒い影はその場から消え、その後には音一つ聞こえない静寂な空間に戻った。


 達実達は全く気がついていたなかった、達実を狙う邪な気配が迫って来ている事に。



 二人の学校が終わり夕方頃、新庄家では自宅の清掃を始めるため、役割を決めていた。

  

 「俺はこの部屋に決めたぞ、中々広いし住み心地もよさそうだ」

  

 「わかった、信長にはこの部屋の掃除をお願いしたいんだ、千夏と僕はそれぞれ、別の部屋の掃除をするから」

  

 「任せろ今日から俺の部屋になるからな、きれいに掃除してやるさ」

    

 信長には自分の部屋の掃除をお願いするとして、僕は書斎の方を掃除しよう千夏には別の部屋を掃除して貰えれば、掃除が早く片付く。


 「たっくん、私は別の部屋の掃除をするけど、何かあれば呼んでね」


 千夏は掃除道具を持って別の部屋に入っていた。


 達実は書斎に入り、辺りを見渡した、部屋には所狭しと本が並んでいたが、埃が溜り最近は使えていない様子が伺える。


 最近入ってなかったけど結構汚れているなまずは本棚から掃除しようかな、地下室の事について手掛かりがあればいいけど。


 数十分を掛けて掃除をし書斎自体は綺麗になったものの地下室に関する事はわからなかった。

  

 「だめか仕方ない」


 別の部屋の掃除をしようとした達実だったが信長と千夏の状況が気になり様子を見に行った。


 「信長、どう掃除は進んでる・・・何やってるの?」


 畳の上で座り込み信長は何かを眺めていた、達実に気がつくと手に持っていた物を向けてきた。


 「これ小さい頃の達実か? 前に言ってた写真って奴だろ」


 手に持っていたものを見ると昔のアルバムだった。


 そういえばいつの間にか手元からなくなっていたんだ、母さんが探していたけど、見つからなくて

 ショックを受けてたな、こんな所にあったなんて。


 「そうだよ、小さい頃の僕だね、だいだい幼稚園ぐらいの写真かな」


 そういいながら僕は昔の写真を眺めだした。


 「達実は結構童顔だけどよ、昔は更に幼いな」


 「幼稚園の頃だよ、当たり前だよ、信長だって小さい頃はあったでしょ」

  

 二人でアルバムを眺めだしていたが、千夏も様子を見に来た。


 「たっくん、信長さん何をしてるの?」    

     

 「おう、千夏見てみろ、達実のちっこい頃の写真だぜ」

 

 「たっくんの・・・うわぁかわいい、これ幼稚園の頃だよね」


 千夏も輪に加わりアルバムを眺めだした。

 

 「もういいでしょ、小さい頃の写真は恥ずかしくなるよ」


 達実はアルバムを閉じようとしたが、二人は「もう少し」と言いつつアルバムを見ていく。

 

 「これなんか、お漏らしした時の写真じゃないか?」

   

 信長は幼い子供が写り、ズボンに丸い絵柄を作った写真を、面白そうに達実に見せてくる。

 

 「やめてよ、あれこの写真僕じゃないような・・・千夏?」

 

 千夏は写真を見て顔が次第に赤くなり、写真を信長から取り上げた。


 「どうして、たっくんが私の写真を持ってるの、こんな状況を撮るなんて・・・」

  

 千夏は恥ずかしそうに写真を両手で掴み胸の方で隠すようにする。


 なんで、こんな写真があるのよ、私がお漏らしをした写真なんて恥ずかしいよ、しかもたっくんがずっと持ってたなんて。

    

 「いや、たぶん千夏が幼い頃遊びに来た時に、母さんが撮ったと思うけど」

    

 「千夏が小さい頃の話だろ、気にするな俺もガキの頃は布団に盛大にやったぞ」


 「そうかもしれないけど、そういう問題じゃないんです。」


  千夏は、怒ったように顔を背ける。  


 「何だ変な奴だな、まぁ誰でも触れて欲しくない事はあるからな、この事はすっぱり忘れるぜ、達実もそうするよな」

  

 達実は場の空気を変えるように掃除の話をした。

     

「うん、僕も忘れるよ、二人とも掃除の続きをしよう、それから、蔵の事に関しての手掛かりも探して見て欲しい書斎は残念だけど見つからなかったから」


 信長と千夏は少し難しそうな顔をし、言葉を返した。


 「そうか、俺の所も目ぼしい物は無いな、まぁ引き続き探してみるぜ」

 

 「私の所も今の所は見当らないけど、何かあれば二人を呼ぶね」

 

 二人はそう言って掃除に戻ったが、結局地下室に関する手掛かりは見つからなかった。

 

 3人は夕食の後とめどない会話を続けていたが、夜も遅くなってきていた。

 

 「たっくんそろそろ私帰るね」

  

 「千夏、今日は送るよ、毎日夜一人で帰るのは危ないからね」


 達実は千夏に送る事を告げ、外出の支度を始めた。

  

 「家も近いから大丈夫だと思うけど、たっくんがそう言うならお言葉に甘えるね」

 

 「信長家の留守をお願いね」

 

 「まかせろ夜だからな二人共どこかで、イチャイチャして来い、俺が許す」

 

 そのとたん二人は顔が赤くなり、「何を言ってるの信長」「そんな事しません」と口々に言って家から出て行った。 


 家の留守をしている信長は、暇そうしながらも二人の事を考えていた。


 あいつら、結構お似合いだと思うんだけど、まだ付き合って無いよな見たところ千夏は達実にぞっこんだな男の俺が見てもわかる。

 達実は、押す事を知らん奴だから千夏は苦労するぞ、俺だったら間違いなく押し倒してるぞ。 

 まぁ、俺の性格だと千夏は惚れていないし、あんな態度もとらんだろう達実の雰囲気と優しさに惚れているみたいだしな、しかたない俺が恋の仲人役を買ってやろうじゃないか。

 達実、俺に任せておけば、女の一人や二人簡単に落とせるようになるぞ。


 「そんな仲人いらない」と達美が聞けば恥ずかしくて断っていたが、信長の頭の中では色々と物騒な計画を立てつつあった。



 その頃千夏と達実は少しの間黙っていて歩いていたが、達実が声を掛ける。


 「千夏のお父さんやお母さんは元気?最近余り合ってないけど」


 「元気だよ、父さんは出張中だけど母さんは元気すぎてこっちが困っちゃう」


 「千夏のお母さんは料理教室を開いていたんだよね、良くうわさを聞くよおいしい料理を作る先生がいるって」


 「その分スーパーや色んな所に買出しに良く行かされたり、下ごしらえなんかも手伝わされるの、結構大変なんだよ」

 

 「それは大変だね、でもそのおかげで僕は美味しい千夏のご飯を食べられるんだけどね」


 「お母さんに比べれば全然だよ、でもこれからもっと料理上手になるよ」


 二人はお互い笑いながら、千夏の家に向かう。


        

 達実と千夏はお互いの自宅の丁度真ん中の位置にある、中央公園を歩いていた、辺りは街灯は付いて多少は明るいが、夜のため人通りが無くとても静かだ。

 真宮町は治安が良く、夜に事件事故に巻き込まれたと言う話は殆ど無い、その為二人は、まさか自分達が襲われるとは思っても無かった。

 

 二人は公園の真ん中で異様な気配を感じて、足を止めた。


 辺りを見回すと茂みの中から数匹の犬がまるで達実と千夏を囲むように現れた、しかも犬の目が赤くとても普通の犬ではない事がわかる。


 「なんだこいつら、何でこんな所にこんなに野犬いるんだ」


 「たっくん、変だよこの野犬、みんな目が赤いよ」

  

 野犬共は「グルル」という好戦的な唸り声を上げながら次第にこちらに近づいてくる。


 「千夏は後ろに下がって、こいつら、あっちに行けよ」

 

 達実は道端に落ちていた、石を投げたり、木の棒を拾い必死に追い払おうとするが効果が無い、それどころか一匹の犬が木の棒に噛み付き離そうとしない。

 地面に叩きつけてみても効果が無く、まるで何かに操られているかの様だ、ついには棒が折れそうになり慌てて、噛み付いた犬ごと投げつけた。


 「はぁはぁ、なんで、こんな・・・嘘だろ」


 「たっくん危ない」


 千夏の声が響く、気がつけば目の前に大きな口を開けた犬が迫った、その口には鋭い歯があり、達実の首元を狙っている。

  

「たっくん!! いやぁぁぁ・・・・」


 千夏が悲鳴をあげ思わず目を瞑る。

  

 突如黒い影が、茂みから飛び出し襲い来る犬と交差し、その瞬間犬が悲鳴を上げた犬の目からは血が出て、体制を崩した。

     

 千夏が恐る恐る目を開けると達実と犬達の間に一匹の綺麗な猫が立っていた。


 その猫は犬が達実に襲い掛かる時に飛び出して、犬の目に爪を立てて、達実を救ったのだった。

 達実は呆然とした様子でその猫を見ていた。

 

 「猫がどうして・・・・僕を助けたの?」


 猫が達実を守るように野犬共の間に割って入り、威嚇をした後に一声鳴いた、すると辺りから猫の集団が現れて野犬の集団に襲い掛かった。


 体格は犬の方が有利だが、猫は数が多く、複数で犬の目や背中につめを立て、噛み付いていた。

  

「たっくんなにこれ、一体どうなってるの?」


 千夏は達実に怪我なかった事に安堵しつつもこの状況に理解が追いついていなかった。


「僕にもさっぱりだよ、まるで犬と猫が戦争しているみたいだけど」


 二人は目の前の光景が信じられず、ポカンとした状態で立っていた。

 その間にも犬と猫の戦いは続いていたが、状況を不利と悟ったのか一匹の犬が他の犬に合図を送ると一斉に逃げていった。


 すると猫達は勝どきの声を上げるように一斉に声をあげた後、一匹の猫を残して辺りに散っていった。


「なんだったんだろう?」


 お互いに顔を見合わせ不思議そうな顔をする。

  

 「やれやれ、大丈夫だったかの、主様や」 


 綺麗な声があたりに響いた、達実でもなく、千夏でもない、その声は目の前の猫から発せられていた。


 二人は驚きの余り声が出ない、その猫は綺麗な毛並みをしており、雰囲気も普通の猫とはどこか違っていた。

 

 「ほっほっ、驚かせてしまったかのう、儂の名前はそうじゃのニケとでも呼んでくれたもれ、よろしくのう主様」


 達実は喋る猫は実在したのかと驚いていたが、痛みを感じ我に返るそれは千夏が、夢ではないかと思わず自分と達実の頬を引っ張った痛みだった

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