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朝の目覚め

 

 太陽が昇り始め、車の通りは殆ど無い、時刻は朝の6時。


 新庄家の前に立つ一人の少女がいた、遠野 千夏である。昨日と達実との約束を果す為に、新庄家に来ていたのだが、少し迷ったような表情をしていた。


 どうしよう早く来すぎたかな?でも、たっくんいつも朝早いしそれに大事な話だっていうから10分とかじゃ終わらないと思うし迷っても仕方が無いとりあえずお邪魔しよう。


 預かっていた鍵を使い、夏実は達実の家に入る。


「おはよう、たっくん起きてる?」


 家は暗いままだ、まだ寝てるんだね、たっくんの部屋は二階だから起こしに行ってあげよう。


 それにしても、大事な話って何だろう、それに二人だけで話したい事って、もしかしてたっくんが、私の事・・・・まさかね、昨日だって普段と変わりなさそうだったし。


 そんな事を考えながら達実の部屋に辿り着いた千夏はノックをして達実を呼ぶ。

 返事は無いが何故か部屋の中から音が聞こえる、変に思いながらも千夏はドアを開けながら声を掛けた。


 「たっくんもう起きているの?・・・・・・・えっ・・たっ・・くん?」


目の前には見たことの無い男の人がたっくんの上に覆い被さっていて、たっくんが驚いたようにこちらを見ている。


 「ガーーン、ガーーン、ガーーン」


 千夏の頭にはなぜか教会の鐘が鳴り響いた。


 「たっくんの、たっくんの、バカーーーーーーーーーーーーーーーーー」


 千夏はようやく信長をどかした達実に向かい胸倉を思いっきり揺さぶった。


 「千夏、落ち着いて、苦しい、うぅ、」


 「大事な話って何、この光景を見せつける為に私を呼んだの?たっくんがこんな事しているなんて・・・・・」


ようやくゆさぶりから開放された達実は、千夏に事情を説明しようとした


 「いや、大事な話って言うのは信長の事で・・・」


 「信長?信長って言うんだねこの人たっくんとはどういう関係なの?」


いまだ眠りから覚めない、信長を指差して千夏は、達実に向かって鬼気迫る様相で問い詰めた。


 「どういう関係も何も、きちんと事情を説明するから落ち着いて、


 とりあえず信長を起こして3人で話しをしよう、そうすれば千夏も納得しやすいと思うから」


 涙目になりつつある千夏を落ち着かせ、達実は信長を起こし始めた。


 「信長早く起きて・・・・こら、起きろ」


 ようやく信長は目を覚まし始め眠たそうにこちらを見る


 「何だ、もう少し寝かせろよ、うん、この女は誰だ」


 まだ、眠いぜ、あれこの女は誰だ、なんだかきつめの様子で、俺を見ているが


 「信長、彼女は幼馴染の遠野 千夏、起きたばかりで悪いんだけど千夏に今までのことを説明するから間違いないことを証明してよね」


 達実はこれまでの事を説明し始めた。 


 時間は、ほんの少し遡る、達実は息苦しさと、重苦しさを感じていた。


 目を開けてみればすぐに近くに信長の顔があり、達実に覆いかぶさるような状態だった。


 なに、これ、重いよ、って信長何をやってるの、こんなに寝相が悪かったなんて早くどいてよ。


 達実は信長をどかそうとしたが、中々うまくいかない丁度その時千夏の声が聞こえて、部屋のドアが開いた。

 

 残念な事だが達実には、踏んだり蹴ったりの結果になってしまった。


「たっくん、嘘を付くにしてももう少し言い様があると思ういくらなんでも、戦国時代の織田 信長だなんて信じられないよ」


 やっぱりすぐには信じてもらえないか、僕も信長にこの時代の事を納得させるまで数時間だからな、でも納得して貰わないと話が進まないんだ。


 達実は、真剣な面持ちで千夏を説得した。


 「千夏の言う事はもっともだよ、でも僕は嘘は言ってない、信じて欲しい、今まで僕が、嘘言って千夏を騙した事は無いはずだよ、本当の話なんだ」

 

 信長もそれを見て手助けに入る。


 「千夏とか言ったな達実の言う事は本当だ、こいつが嘘を言う奴なのかは幼馴染なんだろ、お前が一番良くわかっているはずだぞ」


 千夏は疑念を隠せない様子だったが、ここまで言われて信じる気配を見せた。


 「はぁ、たっくん酷いよ、そんな事言われたら信じるしかないじゃない、確かに私を騙す、たっくんなんて想像できないからね」


 夏美は納得できない部分は有るが、達実の言う事を信じたのだった。

 

 その後3人は一緒に朝食をとりながら話しをしていた。


 「それで、私に信長さんの事を手助けして欲しいんだよね?」


 出来上がったトーストを達実と信長に渡しながらこれからの事を聞いていく。


 「うん、正直僕一人だと手が余ると思うし、千夏に協力して欲しいんだ」


 信長はトーストをもの珍しそうに見て、食べ始めていた。


 「わかったけど、たっくんのご両親はこの事を知っているの?」


 「昨日父さんに話したよ、なんか男なら責任取れとか言われたけど」


 「そう、そうなんだ、電話越しだけでよく納得したね」


 千夏は一瞬顔が固まるが、何事も無かったようにトーストを口に含む。


 「父さんだからね千夏もよく知ってるでしょ、あの性格を」


 確かにたっくんのお父さんなら細かい事は気にしないと思うけど、なにその、男なら責任とれって、それは女性に対してに、して欲しいよ。

 なんともいえない表情で達実を見つめる。


 「千夏?」


 「あっうん、祐二おじさんだもんね、でも由紀子さんはたっくんの事を心配すると思うよ、今頃帰国の便に乗っていたりして。」


 「はは、まさか」


 達実はそんな事はないと断言したかったが、できなかった、贔屓目に見ても母親が甘すぎる性格である事を理解していたからである。


  「まぁそういうわけだ、これからよろしく頼むぜ千夏」


 今まで静観していた、信長も笑顔で千夏に話しかけ会話に加わる。

  

 「分かりました、これからよろしくお願いします信長さん、でも私は、たっくんみたいに甘くないですからね」


 信長は、笑いながら千夏に言葉を返す。


 「はっはっ、俺はこの世界に来たばかりでよく分からん直すべきところは直す遠慮なく言ってくれ」 

 なんか、フレンドリーな人だ、織田 信長というからもっと怖いイメージをしていたんだけど、今まで会話に加わらず、様子を見ていたし、以外に気遣いもできる人かも。


 千夏は、イメージしていた織田 信長と言う人物像が崩れていくの感じた。   

 

 「じゃあ学校に行ってくるから、信長留守をよろしく、昨日みたいに家に来た人を脅したらだめだよ」


 達実は靴を履きながら後ろを振り向き信長に声を掛ける。

 

 「心配するな、昨日みたいな事はもうしないぜ、終わったらすぐに帰って来いよ町を案内して貰うんだかな」


 達実は心配性な奴だな、まぁ、俺のことを心配しているようだから、余り文句も言えないが、家でおとなしくしていれば問題など起きないだろう。


 信長は適当に手を振りながら、達実を見送った。


 「そういえば、たっくん今日は国語の小テストがあるけど、勉強はしてきた?」

 

 千夏からその話しを聞いた達実は、しまったと言う顔をして首を振った。

 

 「すっかり忘れてたよ、千夏悪いんだけど、テストの範囲教えて学校に行ってから、出きるだけ頭に詰め込んでみる」


 「やっぱり忘れてたんだ、まぁ信長さんの事があったからだと思うけど ちょっと待ってね・・・テスト範囲は、先月の初めから先週までの範囲だよ詳しくは学校について教えてあげるね」


 千夏はしょうがないと言う顔をしつつも笑顔で達実に答えを返した。


 「ありがとう、助かるよ、赤点なんか取ったら目も当てられないから、国語の田中先生の補修は人格が変わるって噂があるからね」


 達実と千夏はテストや学校の事を話しながら学校に向かって歩いて行く。


 人宝高校、新宮町に立てられた私立高校である。

 数年前に開設した新設校であり、名前の通り人材を宝と考え、各方面から一流の教育陣を揃え、生徒の育成に力を入れていた、そのため県内外から才能や個性がある生徒が集まっている。


 今日も学校の至る所から、朝練の掛け声や朝のあいさつが聞こえる。

 その中の一つ2年3組が達実と千夏のクラスである。


  達実は千夏から教えて貰った範囲を勉強していたが、そんな中達実に声をかける男子生徒がいた。

 

 「よう、ひさしぶり達実、何今更勉強してるんだそんな事しても、大して変わらんからやめとけよ」


 「おはよう、信二は余裕そうだね、テストは問題ないの?」


 彼の名前は斉藤 信二 個性ある2年3組の中でもかなり個性的であり、自己紹介の時に「俺は愛に生きる男だ」と言いクラス全員の口を半開きにさせた男である。

  

 「今更、テスト勉強してもかわらないだろ、まぁ俺は今までテスト勉強なんてした事ないけどね」


 その会話を聞いていた後ろの席に座る、千夏が思わず声をかける。


 「斉藤くんって前回のテスト赤点みたいだったけど大丈夫なの」


 「大丈夫だよ千夏ちゃん、でも千夏ちゃんの愛があればテストも100点間違いないんだけどな」


 斉藤は笑顔でそう返し、千夏の机に手を置いた。

 

 千夏は引きつった笑顔で「凄いね、そうなんだ」と返事を返していた。  

  

 そんな馬鹿なそれで満点が取れるなら、今必死でテスト勉強をしている人が 報われない、達実は信二にそう声を掛けようとしたが、目の前から来る人を見て顔を青ざめた。


 「ちょっと、信二・・信二」

 

 小さく声をかけるも千夏に声をかける信二は気がつかない。


 「そうなのか、前回俺の出したテストが赤点だったのは、俺の愛が足りなかったせいなのかすまんかったな斉藤、だが安心しろ今度は1対1で俺がたっぷりと愛を注いでやる」


 信二はその声に体を震わせて振り返った。

 

 そこには阿修羅を思わせるような笑顔で国語を担当する田中先生が立っていた。

 体育教師の様な体格の良さであり、柔道3段の実力者でもある。

 

 「田中先生、おっ、おはようございます、俺の愛は女性限定ですので先生からはご遠慮したいんですが」


 「ほう、遠慮するな何なら教室だけではなく道場でもいいぞ、お前にはそっちの方が効果がありそうだ」


 その言葉を聞き信二は何度も首を振る。

 田中先生は柔道部の顧問も勤めていて鬼コーチで有名なんだよな、僕も道場での補修はお断りしたいよ。

 達実も信二に同情しながらも同じようなことを考えていた。


 「だったら、きちんと勉強をして来い、まったくお前と来たらいつも、いつも、調子のいい事ばっかり・・・まぁいい早く席に座れ小テストを始めるぞ」


 信二が慌てて席に座り、他のクラスメートもテストの用意をする。


 窓の外からは鳥の鳴き声が聞こえ、陽射しが射す空間の中で、答案を書く音だけが妙にはっきりと聞こえていた。

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