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信長と3人組

 

 石碑が光を放ち始めた、達実と信長は呆然とその様子を見守っていた。


 これから起こる事を二人はまったく想像できずにいたしかし何かが起きると二人が確信した時だった。


 石碑は・・・・・・・・・・・・輝きを失った。


 「えっ何これ」


 思わず達実が呟く信長も拍子抜けしたかのようにこちらを見る。


 数秒お互いを見詰め合っていたが、


「もしかして血が足りないんじゃないのか、もう一回やってみろよ」


 信長が思いついたように達実にそう提案してきた。


 もう一度、達実は血を垂らしてみたが、今度はまったく光らず反応を示さない。


 その後血を何回か垂らして様子を見てみたが、変化が無い状態だ。


 「なんかおかしくないか達実、最初だけ反応して後は何も反応しないなんて」


 不思議そうに信長は首を捻る、確かにそうだどうしてか考えてみたが 訳がわからない、正直判断する材料が無いと達実は感じた。


 「う~ん正直訳がわからないよ信長どう何か考えがある?」


 信長を見ると暫らく考えるしぐさをしていたが、思い立ったように 刀を見た上で言葉を発した。

 

 「数滴の血じゃ足りないかもしれないぜ、俺が介錯してやる溢れるくらい血を流せば、いけるんじゃないのか」


 この人は何を言っているんだろうと正直耳を疑った、僕に死ねと言っているのか、達実は思わず後ずさりながら声を出した。


 「溢れるくらい血を出したら死んじゃうでしょ無理だよそんなの」


 信長は自信に満ちたように一歩踏み出した。


 「安心しろ死ぬまでは血は流さないし、皮膚の表皮だけを切るからたくさん血は出るが、それほど日数を掛からず直るぞ」


 だめだこの人考え方が飛びすぎていて付いていけない、戦国時代ではこれが普通かもしれないけど、僕はそんな時代の人間じゃないからね。

 

 「そんな理由で安心できるわけ無いでしょ、それに溢れるくらい血を流してその後はどうなるの、運よく信長が元の世界に戻れるとは限らないし、光っただけで終わるかもしれない、結局のところ何が起こるのかわからないんだよ」


 達実の主張する理由はもっとだと思い、信長は頭を掻いた。

 

 確かにな俺は剣の腕に自信があるし。達実には万が一という事は無いと思うが、結局のところ何が起こるのかわからないし、なにより友達ダチを斬るのは後味が悪い、それに運よく元の世界に戻れるにしても、まだまだこの世界の事を知ってからにしたい。


 「そうだな悪かった俺も友達ダチを斬るのは好みじゃないからな」


 好みの問題なの?と達実は心の中でツッコミを入れた。

 まぁ納得して貰ったのだからできるだけ気にはしないようにしよう。

 

 気がつけば地下室に入ってだいぶ時間がすぎていた、この分だと夕方近くにはなっている頃だ。

 明日は月曜日で学校だ、その前に色々と用意しておきたいと達実は考えていた。


 「そろそろ出ようか、ここにいても進展はなさそうだし」


 蔵から出て、これから信長の生活品と夕食の食材を、買いに行く事を告げると、

信長はうれしそうに身を乗り出した。


 「おい買い物に行くのか、なら俺も連れて行けよ、この町を見てみたいんだ」


 ああそうだった、昨日信長に町にある店を大まかに説明したところ、目を輝かせて行きたいと言われたんだった。


 特にいろんな物がおいてある、スーパーやデパートには行きたがっていたな。でも今日はだめだ、信長の生活品を色々と買わないといけないし、夕食の材料も買わないといけない、そんな中で信長を見失いでもしたら、どんな問題を起こすのか想像もつかない。


 達実の耳には聞こえないはずのパトカーのサイレン音がなぜか鳴り響いており、どうやって信長に行くのを思いとどませるのかを達実は必死に考えていた。


 「なに難しい顔をしてこっちを見てるんだ早く町に行こうぜ、スーパーとやらに行くんだろう?」


 信長は待ちきれない様子で僕の手を引っ張り歩き出した。


 「ちょっと待ってよ、今日は留守番をしていて欲しいんだ」


 「何でだよ、別にお前の買い物を邪魔するつもりは無いぜ」


 信長は不満そうに僕を見て抗議の声を上げた。


 「信長が買い物を邪魔するつもりはない事は分かっているよ、でも途中で信長と離れたら大変だし、それに今日は町を案内できないよ町に出る時は僕の時間が開いている時に、きちんと案内したいんだ。

だからお願い今日は我慢して欲しい」


 そう言って達実は俺に懇願するように訴えかけてきた。

 はぁ、仕方が無いな町に行きたいが、友達ダチの願いを断るのも無粋ってもんだ、かといって、そのまま引き下がるのも負けた気がするな


 「よし、わかったぜ今日のところは諦める、だけど明日は町を案内しろよ」


明日は学校があるけど、終わってからでも十分時間があるはずだ、これで一週間待って、といったら怒りそうだし信長も我慢してくれたんだから、ここら辺がだ妥協のしどころかな。 

 

 「明日か、わかったよでも学校が終わってからだよ、今の時間にはもう終わっているからその時に一緒に町を案内するよ」


 「学校?ああこの時代では誰もが学ぶための施設があるんだったな、

その学校とやらが終わってからだな、分かった楽しみに待ってるぜ」


 学校という所にも行ってみたいぜ、達実の話だと学問を学びつつ仲間同士の交流する場の様だし、楽しそうな所だと思うんだが、まぁ今日のところは我慢だ、居間でTVでも観て過ごすか。


 信長は居間へ向かって歩き出し、達実も後ろについてきた。


 「信長それじゃ僕は買い物に行くよ、1時間ぐらいで戻るからおとなしくしていてね、それから誰か来ても、家の人は留守だから改めて来てください、と言ってよ」


 「おう、わかった誰が来ても追い返してやるからな心配するな」


 達実はその言葉を聞き不安になったが、心配しても始まらないと割り切り、信長に家を任せ足早に買い物に出かけた。

 


 達実が買い物に出かた後、信長はTVを観ながらくつろいでいた。


「本日のニュースです、最近強引な押し売りが多発し被害に遭う人が増えております、自宅に急に押しかけ 数人で住人を囲み商品を買って欲しいなどと脅しをかけたり、自宅が火事になった、あなたに商品を買ってもらわないと東京湾に沈められると言って商品を売りに来る等、手口はさまざまです、この状況に対し被害センターでは職員を増員し対応に当たっております。

 それでは次のニュースです・・・・」


 はぁ、戦争がなくなり平和になってもこういう輩はいるのか嘆かわしいぜ、信長は思わずため息をついた。


 ちょうどそこの頃新庄家の前に立つ3人の男がいた。


 「おい、この家どう思う古い家だがその分結構溜め込んでいるんじゃないか」


 「ああ蔵もあるしな、金が無ければ物々交換として金目の物を持って行こうぜ」


 「いや待ってくれ一郎兄さん、次郎兄さん、最近俺達の事も知られてきてるようだし、そろそろ慎重に行動した方がいいじゃないか」

  

 一郎と呼ばれた男は自信があるように言葉を返す。


 「なに言ってるんだ三郎この強面の顔が三人もそろえば相手もビビッてすぐにただ同然の商品を高く買うに決まってる。」


 次郎と呼ばれた男も、一郎の言葉に同意し二人とも家の玄関に向かって歩き出した。

 それを見た三郎も慌てて後を追った。

 三人組は兄弟でありここら一帯で、押し売りをして儲けている者達だった。


 「ごめんください、誰かいませんか」

 

 大きな声が聞こえる、誰かが家に来たな、達実には家の人間は留守と言えと言われているんだったか、さっさと追い払ってTVの続きを見よう。


 信長はいつもの癖で刀を持ち玄関に向かった。


 「留守ではなさそうだな、鍵が開いているよし入って中で待つぜ家に入ってしまえばこっちのもんだ」

 

 一郎はガラガラと言う音を立てて、開いた玄関から中に入った、次郎と三郎も後に続く。

 

 家の中に入った一郎は、居間から出てきた信長と鉢合わせする形になった。 


 「おっと、始めまして私、パチモノ商事の 佐藤 一郎 と申しますどなたかご家族の方はご在宅でしょうか。」

  

 信長を未成年と判断した一郎はそう言いつつ様子を伺った。

 しかし、一郎の視線が信長の手にある刀を捉えた時、思わず顔がゆがんでしまった。


 何だこの男は刀を持っているぞ、模造刀とだとは思うがそれでも普通持って客を出迎えないだろう、警戒しているのか?いやここの家には始めて来るし、俺達の事は知らないだろう。

 

 横に並んで立っていた次郎と三郎も同じように驚いた顔をしている。


 「家の者は留守だ、出直して来い」 


 一般人ならこの訪問者の異様な様子に気がついたとは思うが、生憎今まで訪問販売を 受けた事のない、信長はめんどくさそうに質問に答え、居間に戻ろうとする。


 「少々お待ちを、時間は取らせませんので、お話をさせてください」


 普通な青年ではないと言う事は感じたが、今までの訪問販売の習性として相手を引きとめようとする。 未成年であっても金さえ持ってれば 問題ない、名乗った会社名も嘘だしな、名刺さえ渡さなければ連絡もできないだろう。


 「なんだ、俺は忙しいんだ要件を早く言え」


 早くTVを観たい信長はイライラしながらも相手の話しを聞こうと一郎を見た。


 「実は本日はこちらの商品を、紹介させていただきたく、ご訪問をいたしました」  

 

 さりげなく目線を送る、視線気づき三郎が靴箱の上に商品を置く、それは包丁セットだった。


「こちらの商品は職人が丁寧に仕上げて切れ味抜群、尚且つ錆びないと言う高級品です、ぜひこちらのお宅でも使って頂きたいと思いお持ちいたしました、いかがでしょう本来なら数十万円は軽くするのですが、今回は始めてご訪問させて頂きましたので、特別に十万円でお譲りしたいのですが」

  

 次郎と三郎も口々に、皆様にご好評で最後の数本しかないだの、近所の清水さんは即決で買ってもらい喜んで頂いている、という言葉を次々と投げかける。


 もちろん大嘘だ、包丁は「サマゾン」から買ってきた数千円の中古品であり、買って頂いた人から好評だの、清水さんなどと言うのは、買いやすくするための方便である。

  

 信長はしげしげと、その包丁を手に取り眺めていたが、唐突に首を振り一郎を見た。


 「おいこれは中古品だろ切れ味もたいした事ない、俺の切れ物を見る目を馬鹿にしているのか」

 

 今まで戦国時代にいた信長は、刀等を見る機会が多く鑑定眼もすぐれていた、たとえ包丁であろうとも、見るものが見れば一発で看破できたのだった。


 「なにを、仰いますこの包丁は切れ味抜群で何でも切れますよ」


 中古品とすぐに見破られた一郎は、焦りながらも説得を続けるが効果が無い。

 三郎が次郎にさりげなく耳打ちをする。


 「おかしいぞ、次郎兄さん中古品を一目で見破るし刀なんて持ってる、俺達に怯える様子も無い、それどころか態度が凄く大きいし、もしかしたら旧家とかじゃなくて、極道の家に訪問をかけたんじゃ」

 

 そんな事は無い筈と、次郎は一瞬思ったが、妙に切れ物に詳しいしとても堅気にみえない態度を取られており段々と不安になってきた。


 「よしわかった、そこまで言うのなら切れ味を試してやる、だが大した事なかったらてめぇは俺をだました罪だ潔く腹を斬れ。」


 無茶苦茶な事を言い出されて、呆然とする一郎達を余所に、 靴箱の陰に隠れていたダンボールを取り出した。

 その中には昨日信長が切ったTVが入っていた、達実がダンボールに入れて封はせずに靴箱の陰に置いていた。


 一郎達からは陰になりはっきりとは見えず、今まで気がつかなかったのだが、信長は気がついていた。


 「これは俺が昨日、この刀で切ったTVだ、その包丁で切ってみろ」


 一郎は耳と目を疑った、切ったそんな馬鹿な、いや確かにTVが鋭利な物で両断されているが、それに目の前の刀で切ったと言ったな、模造刀じゃない本物の日本刀なのか、混乱しつつもなんとか言葉を発した。

 

 「いや包丁でTVを切るなんてそんな事は・・・包丁は肉等を切るものですし」

 

 「俺をからかっているのか、TVが切れなかったら、人間が斬れる訳ないだろう知らないのか、人を斬る時の感触は畳に近くもっと斬りにくいぞ。」


 なぜ肉を切る話をして、人を斬る話になるのかと反論をしたかったが、前に立つ青年の威圧感に押され答えられない、しかも話しを聞く限りまるで人を斬った事のある口ぶりだ、次郎と、三郎も顔が青ざめ始めていた。


 ここに至り3人は、この家には手を出すべきではない、どこかの極道か真っ当な家ではない事を、言葉を出さずとも考えは共感していた。  


 「どうした何を黙っている、ようやく自分の間違いに気がついたのか、


 だがもう遅いぞ俺が介錯してやる、達実との約束で刀を抜くのは許可が必要だがらなこの場で少し待ってろ、家族との別れの時間には丁度いいだろ」

 

 何が家族との別れの時間だこの場にいたら殺される、三人は申し合わせたように一斉に逃げ出した。

 

 「助けてくれ、殺される、訪問販売に行っただけで、なんで腹を切らなければならないんだ」


 「やっぱり極道の家なのか、三郎の言った通りだ逃げるぞ畜生なんでこんな事に」

  

 「一郎兄さん、次郎兄さん、待ってくれ死にたくないよ誰か助けて~~」   

  

 「あっこら待て、ちぃ腹を切りさせ損ねたぜ、あいつら包丁も置き忘れていきやがった まぁいいか居間に戻ってTVを観よう」

 

 信長はぼやきながら居間に戻っていった。


 買い物を終えた達実は自宅に戻る途中に奇妙な集団を目撃する。


 少し遅くなったな、んっ何だろうあれは?殺されるだの、極道の家だの、訳のわからない言葉を叫びながら3人組の男が駆け抜けていく。

 達実はその後ろ姿を見ながら、嫌な予感がして呟いた。


 「まさか、信長が関与してないよね」


 その予感は不幸にも的中する事になる。


 余談だが、この後新庄家は極道一家としてこの辺りの悪徳業者に広まり、恐れられるようになった。


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