新事実発覚、新たな約束
無間光闇さん、八月一日さん、ご感想ありがとうございます!
あの後俺達は学校まで戻った。
するとそこにいたのは、こっちを睨みつけながら校門の前に仁王立ちしている女子生徒と、後ろでキラキラとした瞳でこっちを見ている煉馬、それから苦笑している神崎と清海がいた。
何故神崎達がいるのか疑問に思ったが、不動院と『自称:燐のお嫁さん』の女子との会話が気になったので、そっちの話に耳を傾けた。
「どうして逃げたのか……説明してくれない?」
「……ものすごく恐い顔で追われたら普通は逃げたくなる」
「くっ、正論すぎて何も言えない……っ!」
あ、恐い顔をしているっていう自覚はあったんだな。
というか、自覚してたんなら止めてほしかったなぁ。そうすれば不動院も逃げなかったかもしれないのに。
いや、それはないか。あれは心の底から面倒くさいと思っていたっぽいしな。
そんなことを考えている間も、話はずっと続いていた。
「とにかくっ! 私は貴方のお嫁さんなんだから、駆け落ちとか止めてよね! しかも、よりによって男とだなんて……」
やばい、まだ俺達が駆け落ちしたと思っている。
「……それは違う。俺が本人の意思とは関係無しに一緒に逃げてもらっただけ」
駄目だ不動院。その言い方、場合によってはさらに誤解を生むだけだ。
というかその言い方の方が駆け落ちしたように思えてくる。
実際俺の後ろで「透、本当に駆け落ち? まさかの同性愛!?」とか「嘘……まさか、男子でもいけるの……?」とか「世の中驚く出来事ばかりやなぁ……」などと言っていた。
というか清海、その言葉を言いながら遠くに行ってしまった人を送るような目で俺を見るな。俺にそんな趣味は無い。
するとさっきまで不動院と話ていた女がこっちに来て、深々とお辞儀をした。
「電話の時に『泥棒猫』って言ってごめんなさい。私、誤解しちゃって……」
「そんなに気にしなくていいよ。えーっと……」
俺が何に悩んでいるのかまるでわかったかのように微笑み、再び口を開いた。
「私は、霞小雪よ。よろしくね」
「え、あ、よろしく、霞」
なんだ、性格はあれなのかもしれないが、きちんと礼儀正しい子なんじゃないか。
一体どこに逃げなければいけない要素があるのか不思議に思った。が、それは次の発言によって理解した。理解してしまった。
「私は燐のお嫁さんです。たとえ本人が嫌がっても無理矢理お嫁さんになります」
は? 無理矢理? 本人の意思とは関係無しに?
俺だけでなく、後ろにいた煉馬達も呆然としていた。
そりゃそうだろう。あんな台詞を聞いたら。
向こうでは不動院と霞がまた言い争っている。
だけどもしかして、霞はやり方が荒っぽいだけで、本当は……
「ただ一途なだけ、なのかもしれないね」
神崎がポツリと呟いた。
この言葉に、俺達はゆっくりと頷いた。
不動院達を微笑ましく見つめながら。
*
「そんじゃ、そろそろ帰ろうぜ」
「ああ、そうだな」
「……(コクリ)」
ちょっと短い騒動が終わった後俺達は、再び景品を探していた。
あ、勿論、その前にきちんと話を聞いたぞ。
まず何で神崎達がいたのかは、ただ単純に霞と同じチームだったからだ。
それからお嫁さんについては、昔に色々あってふど――じゃなくて燐を好きになったらしい。
しかも燐はあの有名な不動院家の1人息子らしいから、家にいるシェフに負けないように毎日料理を練習してるとか。
本当に霞は一途なだけだったんだなぁ。なんか悪いことしちゃったかもな……。
それで今、神崎達と一緒に景品を探していたところだ。
「ねぇ、そっちはどのくらい見つけた?」
「俺達は3つだけだよ」
「私達は2つよ」
「なんや、1人除けば秀才だけやのに、少ないなぁ」
「清海、今の言葉で煉馬が落ち込んじゃったから、もう言わないでやってくれ」
実際向こうがどよんとした空気になってるし。
その時、神崎が持っている景品の1つを見つけ、手を叩いた。
「神崎、そのブレスレットとこのネックレス、交換しないか?」
「え? あ、可愛い!」
俺が見せたのは景品として見つけた、ハート型のネックレスだ。
景品はチームごとで用意してあるのか、それぞれ3つずつあった。勿論、このネックレスもだ。
だから正直、俺達の中でどうしようかと1番悩んでいた物だった。
「逢歌、小雪ちゃん、どうする?」
「ウチはどっちでもいいで」
「私は交換してほしいな♪」
「じゃあ、交渉成立ってことで。ほら」
俺がネックレスを差し出すと清海が受け取り、神崎がブレスレットを渡した。
さて、あとは……お、そうだ。
「なぁ、これも交換しないか?」
「? これ、なに?」
神崎が俺が差し出した物を見て首を傾げるが、それを見た霞は叫び声をあげた。
「それ、最近できた超有名な遊園地のチケットじゃない! しかもカップル限定の!」
「……………『カップル』?」
ん? なんで神崎、カップルのところに反応したんだ?
「それで、どうする? 交換するか?」
「「勿論!!」」
うぉ、神崎と霞がまるで打ち合わせをしたかのように息ぴったりでまったく同じ返答をした!
やっぱり女子って、こういう場所に行ってみたいのか?
そんなことを思いつつ、神崎達が見つけた図書券と交換した。
それを見て、悪戯を思いついた幼児のような無邪気な表情で清海が言った。
「せや! 折角やし、この6人でトリプルデートせぇへん?」
「「「トリプルデート?」」」
一瞬訳がわからずに、神崎と霞と一緒に聞き返した。
それを聞いた清海は微笑みながら頷き、内容を説明してくれた。
「そう。ここにいるのは全部で6人。しかも男女それぞれ3人ずつでや。そしてチケットが3枚。せやから男女ペアになって、遊園地を楽しむんや」
確かに清海の言う通り、男女ペアになることは可能だ。だけど……
「でも神崎達は一緒に行きたい人がいるかもしれないだろ? いいのか?」
「全然構わないわ! むしろ大歓迎よ!」
「私も異論はありませんわ。燐と行くことは既に確定しているからね!」
「……っ!?」
あ、霞の言葉にまた驚いてる。
まぁ、こうなることはなんとなく予想していたが……。
「わかった。それでいい。けど、そのペアはどうするんだ?」
まず燐と霞は確定だ。
そうなると俺と煉馬、神崎と清海が残るのか。
まぁ、俺はどっちでもいいんだがな。
「せやなぁ、ウチは……」
「わ、私、小鳥遊君とペアになるっ!」
「っ!?」
お、おい、まじかよ!
確かに誰でもいいとは思ったが、まさか神崎とか!?
煉馬達を見てみると、2人して親指を立てていた。妙に清々しい笑顔で。
………アイツら、後で覚えてろ……。とっておきの地獄を見せてやる……。
この時俺は地獄を見せることを決意するが、それはまた別の時にでも。
こうして、俺達にとっては2回目のデートが始まろうとしていた。




