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君と歩む世界  作者: 沙由梨
Chapter5
41/44

結末へのカウントダウン、開始

今回からChapter5……つまり最終章となります。


どうぞ最後までお付き合いいただけると幸いです。


「透ー、煉馬ー! この麗奈様が直々に会いにきたわよー!」


「今すぐ帰ってください」


「ほうだほうだー! ひまふぐはえれー!」


「潰して捻ってぶち殺すわよ? 煉馬だけ」


「ふあっ!?」


文化祭が終わり、平穏を取り戻してきたある日の昼休みに、透達の前に麗奈が現れた。







麗奈が煉馬に【グロテスク用語】してから、麗奈は透達の方を振り向いた。


「それじゃあ、改めて……透、それから他の皆も久しぶり♪」


「お久しぶりです、麗奈さん」


「それで、直々に来たってことは……何かあったんですか?」


「あったと言うよりねぇ……」


久々の挨拶を済ませた透達は、麗奈に何かあったのかと聞いた。


すると麗奈はげんなりとした表情で鞄をあさり、奥の方に入ってたせいかグチャグチャになってしまった1枚の封筒を取り出した。


「今回は……まぁ、用件ではあるんだけど、私直々の用件ではないのよね。今回私はただのパシリよ。はい、これ」


「パシリ、ですか……? それで、これは一体?」


「さあ? 私はある人にこれを届けるように言われただけだから、中身が何かとかまでは知らないわ」


「そうなんですか……」


「あ、それから、こう伝えるようにも言われたわ。確か……『透なら知っている』だったかしら?」


「はぁ……」


透が「わざわざありがとうございました」とお辞儀をすると、麗奈は手を振りながら踵を返した。そしてそのまま校舎を出ていく。


そんな麗奈を見送った透達は、互いに顔を見合わせた。


「……どうするんだ? 中身を見るのか?」


「そりゃ、見ておいた方がええんとちゃうんか?」


「厄介事に巻き込まれそうだけどな……」


透がそう言いながら封を切って開けると、そこには2行に分けて『今日の17時にここに来てね!』と『ホテルだけどホテルじゃない場所』と書かれていた。


当然なぞなぞのように書かれていると思わなかった透達は硬直し、一斉に首を傾げた。


「は? 『ホテルだけどホテルじゃない場所』ってどこだよ?」


「というか、どうしてなぞなぞなの……?」


「解けなくて来れない、なんてことを考えなかったのかしら?」


「………いや、考えなかったんやなくて、考える必要がなかった……とちゃうんかな?」


「……俺もそう思う」


「「「へ?」」」


実乃里と煉馬と小雪がそう言うと、逢歌と燐は説明し始めた。


「ほら、さっき麗奈が伝言として『透なら知っている』って言ってたやろ?」


「……その言葉はおそらくだが、『透ならその場所を知っている』という意味だろう」


「と、いうことは……」


その言葉を聞いた3人は、一斉に透の方を向いた。


すると案の定、透は口元に手を当てて何か考え込んでいた。


そんな透をしばらく見ていたが、どうしても気になってしまった実乃里はおずおずと声をかけた。


「透……どう、かな? どこだかわかる?」


「…………多分」


「あっ、わかるのか!? やっぱ透すげーな!」


煉馬が透の言った言葉に目を見開き、一方の透は冷や汗をかいていた。


「……どうした?」


「あ、いや……思いつく場所が1つしかないんだが……その……」


「行きにくい場所とかだったりするの?」


「いや、えっと、その……」


どうにも歯切れが悪い透を見て5人が首を傾げると、透は決心したかのように深呼吸をした。




「多分だが、場所は『ローズ・ホテル』……俺の父さんの実家だ」



 *


約束の17時になり、透達は『ローズ・ホテル』と書かれた建物の前にいた。


「へー、ここが小鳥遊君のお父さんの実家なぁ」


「でかっ! すっげーでかっ! 家ってレベルじゃねーだろ!」


「もしかしたら、私達の家よりも大きいかも……」


それぞれ感想を述べている5人を透は一瞥し、冷や汗をかきながらゆっくりと扉を開いた。


「………どうも――」


「坊っちゃああああああああん!」


「ぐふっ!?」


透が挨拶をしようと口を開いた直後、何かが突進してきて透の鳩尾に食い込んだ。


それを見た5人が目を見開いて呆然としていると、透が悶絶しながらその影に話しかけた。


「お、お久しぶりです、敬子(たかこ)さん……。あの、退いてくれるとありがたいんですが……」


「坊っちゃん坊っちゃん坊っちゃん坊っちゃん坊っちゃん坊っちゃん坊っちゃんーっ! ほんっとーにお久しぶりです! この敬子、坊っちゃんに会えなくて毎日毎日枕を濡らしてました!」


「うん敬子さん、その気持ちは嬉しいですありがとうございます。でも服が濡れます! その大量の涙で俺の服が濡れますから!」


そんな2人のやり取りを呆然と見ていた5人のうち、燐と小雪が階段の先に人の気配を感じ取った。


透もその気配に気づいたらしく、その先を見ながら敬子に問いかけた。


「敬子さん……あの先にいるのって……」


「え? あぁ、階段の先にいる人ですか? えーっと、坊っちゃんの婚約者とその婚約者の婚約者、そしてその2人のご両親と聞きましたが?」


「は?」


「へっ?」


「…………ハイ?」


「え?」


燐と小雪を除く4人がそんな声を出した――その瞬間だった。


「透様ーっ! ずっとずっと、会いたかったですーっ!」


「のわっ!?」


「むむ……まだアイツを選ぶというのか……!?」


「あらあら……真帆ってば、いつにもまして元気ねぇ」


「はっはっは! 悠よ、挫けずに頑張るんだぞ!」


ある1人は階段を飛び降りて透に抱きつき、ある1人は顔を歪めて悔しがり、残りの2人は笑ってそんな光景を眺めた。


その人物を見て、透と実乃里と燐と小雪が声をあげる。


「みっ、宮野!? どうしてここにいるんだ!?」


「小暮さんまで……!」


「……宮野、真愛(まな)さん……」


「それに、小暮悠人(ゆうと)さんも……」


その声を聞いた4人のうちの2人――真愛と悠人は、透達を見て微笑んだ。


「どうも。お久しぶりとはじめまして……で、いいのかしらね?」


「今日は来てくれて本当にありがとうな。助かった」


「いえ、それはいいのですが……どうして俺達を呼んだんですか?」


代表して透がそう聞くと、真愛が子供のように可愛らしい笑みを浮かべて、言った。






「透君のご両親の過去を――話す時がきましたの」






透達は、息を呑んだ。




真実を知るまで、あと――――




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