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君と歩む世界  作者: 沙由梨
Chapter4
40/44

比嘉崎恍の短い逆襲

これにてChapter4は終了です!


…………べっ、別に、ネタが尽きたんじゃないからね!? そろそろ本編に入ろうと思っただけだからね!?


とある部屋に、1人の男がいた。


「できた……ついにできたぞ! これであいつらをぎゃふんと言わせてやる!」


その部屋の机には丸薬が2つと、透と燐が写っている写真が置いてあった。


 *


『生徒会長、比嘉崎恍の命令だ! 小鳥遊透と不動院燐は、今すぐ生徒会室に来い!』


その言葉を最後に、ブツリと校内放送は切れた。


「……俺と透?」


「あり? 俺じゃねーんだな。助かったー!」


「つーか、今授業中……」


その放送を聞いた透はため息をつきながら呆れ、煉馬は心から安堵し、燐は小さく首を傾げた。


本当はこのまま無視したかったが、そんなことをしたら後々何をされるかわからない。


そして、先生は会長の命令には逆らえない仕組みとなっているので、たとえ授業中でも行かせなければならないのだ。


「小鳥遊君、不動院君……気をつけてね? きちんと警戒しておくのよ?」


「……はい」


「くれぐれも何かされないように気をつけます」


しかし、問題児であることには変わりがないのだった。







「こら、神崎と清海と霞! どこに行くつもりだ!」


「透のところです!」


「燐のところに決まっていますわ!」


「右に同じくー♪」


「今は授業中だぞ!?」


「「そんなのどうでもいい!」」


「どうでもえーやん」


「お前らちょっと今すぐそこに並べ!」


 *


「小鳥遊と不動院、来ました」


「おっ、やっと来たな! 入っていいぞー!」


恍の言葉を聞いて、透と燐はため息をついた。


それはもちろん今の状況からもあるのだが、一番の原因は『恍のテンションが高い』ということだった。


恍のテンションが高い時は必ず何か嫌なことをされる、それはちょっとの付き合いの燐でもわかっていた。


しかしここで立ち尽くしていても仕方ないと思った2人は、互いを横目で見ながら扉を開けた。


「失礼しま――うわぁあああっ!?」


「……っ!?」


そして扉を開けた2人を待ちうけていたのは、体長2メートルくらいの巨大ロボットだった。


そのロボットは入ってきた透と燐の制服の襟を掴んで持ち上げ、宙に浮かせたのだ。


「おいおいおい……! こんなのどうやって持ってきたんだよ……!」


「……きちんと警戒はしていたが、さすがにこれが来るとは予想していなかった」


「ふっふっふ……どうだ、驚いたか!」


「そりゃ驚くわ!」


そしてそんな2人を待っていたのは、こうなった元凶である恍だった。


「惚れちゃダメだぞ☆」


「いや、別に惚れませんから。というか誰に言ってんですか」


「……ノーコメントで」


後ろを振り返って変なことを言い出した恍に透は突っ込み、燐は顔を背けながら小さく呟いた。その顔は無表情だが、どこかげんなりとしている。


そして恍は再び透と燐を見て「てってってーてってっててー♪」と歌いながらポケットをあさり、2つの丸薬を取り出した。


それを見た透は、沸き上がってくる嫌な予感を必死に隠しながら、恐る恐る恍に聞いた。


「あの、その丸薬って……一体何ですか?」


「よくぞ聞いてくれた、小鳥遊透よ! これはその名も『ぷち化ナール』だ!」


「……『ぷち化ナール』?」


「そうだ! どんな薬かは……飲んで確かめろ!」


「へっ? ちょっ、まっ――!」


「……っ!? やめっ――!」







授業を終えた煉馬、そして説教を終えた実乃里と逢歌と小雪は、生徒会室へ向かって走っていた。


「そんで? 結局それっきり戻ってこうへんのやな?」


「そーなんだよ!」


「うぅ……透……!」


「いくら生徒会長でも、燐に何かしたら許しませんわ……!」


そう言い合いながら生徒会室の扉を開けると、そこには上履きが2足放ってあった。


「これって、まさか……透と燐のか?」


「う、そ……」


「いやぁあああああっ! 燐っ、燐っ! どこなのっ!?」


煉馬は目を見開いてそう呟き、実乃里はそのままその場に座り込み、小雪は何度もそう叫んだ。


するとさっきまで無言でいた逢歌が上履きのある異変に気づき、首を傾げながら近づいた。


「逢歌、どーしたんだ?」


「いや……今なんか、上履きのこの辺がボコって……」


そう言いながら上履きを逆さにすると、上履きの中に入っていた何かが顔を出した。


そこには花吹雪学園の制服を着ている、掌に収まるくらい小さい生き物が2匹いた。


「ん? なんやこれ?」


「あれ、この子……透に似てる……」


「と〜?」


「こっちの子は燐に似てるわ……」


「……りー?」


2匹は同じ方向に首を傾げると、透に似ているのは実乃里の肩に、燐に似ているのは小雪の頭に乗った。


そしてその直後、どこからか『バヒュンッ』と『ドンッ』という効果音が聞こえてきた。


「「きゃあああああっ! 可愛いいいいいいいいっ!」」


「そうだろう、そうだろう! そうだろうとも!」


「「会長は黙っててください! 本当に可愛いいいいいいいいっ!」」


「「いやいやいや」」


さっきの『バヒュンッ』は実乃里と小雪が2匹の可愛さに心を奪われる音、『ドンッ』は恍がまたどこからか現れた音だった。


そして勢いよく愛で始めて恍を無視した2人に、傍観を決め込んでいた煉馬と逢歌は思わず突っ込んでしまった。


「そんで会長さん、あの生き物は何なん?」


「小鳥遊透と不動院燐だが?」


「そーか透と燐かー……って、はぁあああああああっ!?」


恍の言葉を聞いて思わず納得しかけた煉馬だが、その後恍の言葉を理解した瞬間に叫んだ。


また、それを横で聞いていた逢歌は目を見開き、実乃里と小雪は愛でている状態で硬直してしまう。


そんな4人を全くもって気にしていない恍は、ポケットから丸薬を取り出して自慢気に語り始めた。


「これは『ぷち化ナール』といって、飲んだ者を掌サイズにしてしまうのだー! どうだ、すごいだろう! ただ1つ、残念な点が――」


「「「「な……」」」」


「――ん?」


「「何してるんですかぁああああああっ!?」」


「「なにそれすごい面白そう!」」


(2名違うことを言っていたが)やはりそう叫び、実乃里と小雪は慌てて2匹――透と燐を見た。


よく見ると確かに元の姿の透と燐と瓜二つで、あの丸薬の効果は本当なのだと思い知らされた。


そしてさらに慌てた実乃里と小雪は、透を煉馬、逢歌に燐を渡してから恍に詰め寄った。


「「どうすれば元に戻るんですか!?」」


「だからさっき『残念な点がある』と言っただろう? それが時間についてなんだ」


「もしかして、時間制なんですか!?」


「じゃあ、この効果はどれくらいなの!?」


「えーっと、確か――































 ――……30分だったかな」






「「…………へ?」」


実乃里と小雪が間抜けな声を出すと、後ろからボフンッという音が聞こえてきた。


後ろを振り返ると、そこには元に戻った透と燐がいた。


それを見た瞬間、恍に詰め寄っていた実乃里と小雪はそれぞれ抱きつく。


「透っ!」


「燐、よかった……! 元に戻った……!」


「……小雪?」


「お、おい実乃里? どうしたんだ?」


「へ? どうしたって……」


「もしかして、覚えとらんの?」


実乃里達の言葉を聞いて、透と燐は首を傾げた。


するとそれを見計らったかのように恍は咳払いをして、腕を組みながら説明をした。


「実はだな、この薬には副作用があってだな……。それが、『薬を飲んだ時の記憶がない』なんだ」


「なるほど、副作用なぁ……」


「道理で透はともかく、燐が惚けるわけだ」


「おいちょっと待て煉馬、それ一体どういう意味だ?」


「……煉馬、安らかに眠れ」


「え、ちょっ、まっ、ひどっ!? てか透痛い痛い痛い痛い痛いっ!」


「安らかに眠れ、といえば……」


「覚悟はできてますよね? 会長♪」


「ん? 何が――ちょっ、待て待て待て! その関節はそっちに曲がらないんだが!?」


「「「問答無用!」」」


「「ぎゃあああああああああっ!!」」




――――この日、生徒会室から2つの叫び声が聞こえてきましたとさ。



ちゃんちゃん♪



そういえば、燐に『小雪』って名前で呼ばせたの、今回が初めてかも……。


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