嫉妬と理性、想いの真相
無間光闇さん、タマザラシさん、ご感想ありがとうございます!
あの後俺達は、ケーキ屋に入って満腹になるほどたくさん食べた。
今は店を出て公園のベンチで休んでいる。
「お腹がいっぱいだね……」
「ああ、そうだな……」
なぜこのようになったのか、それは店に入った30分前に遡る。
*
「可愛いお店だね…って、なんで入らないの?」
「抵抗があることをわかってくれ……」
俺達は無料チケットを持って店の中に入った。
しかし店内は女性向けにしてあるのか、可愛い系が多く飾られていた。
渋々店の中に入ると、当然のように女性しかいなく、俺以外に男性はいなかった。
そして俺を見た瞬間、店内の動きが停止した。
再び動きだしたと思ったら、なぜか全員俺の近くに寄ってきた。
『いらっしゃいませ!』
「あ、はぁ……。どうも……」
いきなりの挨拶に驚いたが、それよりもまるで珍しい物を見るような目で見てくるこの視線がかなり気になる。
俺の顔とかはそんなに珍しいだろうか、そう思っていた時だった。
「早く案内してくださいっ! あ・ん・な・いっ!!」
控えてはいるが、それでもさっきと同じくらい大きな声で神崎は言った。
「あ、はいっ! こちらになります」
「どーも。いこっ、透!」
「は? え、ちょっ、おい!?」
神崎は俺の制止を聞かず、案内された席へずんずんと歩いて行ってしまった。
その時に見えた神崎の表情が、まるで嫉妬しているように見えた。気のせいだろうか?
座った時に顔を見てみたが、ただ俺をじっと見ているだけだった。
「……ケーキ、食べないのか?」
「それよりも、もっと大事なことがある」
そう言うと、いきなり立ち上がってテーブルの上に乗る形で身を乗り出した。
そしたら手招きをしたので俺も同じように身を乗り出した。
すると俺の耳に口を近づけてぼそり、と呟いた。
その呟いた言葉が意外なもので、つい目を見開いてしまった。
言い終わったのか、神崎は顔を真っ赤にしながらトイレに駆け込んだ。
1人になった俺は、ため息をついてソファに寄りかかった。
『今日は私の彼氏なんだから、他の女子と話さないで』
「なんでそういう事を言うかな……」
再びため息をついて、神崎に続くようにトイレへ向かった。
きっと朝から不意打ちばかりされて赤くなってしまっているであろう顔を抑えながら。
俺が戻った時には、何食わぬ顔で神崎がケーキを食べていた。
「あ、やっと戻ってきた。透の分も頼んじゃったよ?」
「ん? ああ、悪いな」
「好き嫌いがないって聞いてたから同じの頼んじゃった」
なぜその情報を知っているのかは謎だったが、あえて何も言わず「ありがとう」と言った。
黙々とケーキを食べている俺を見て神崎はニコリと笑い、ケーキを食べ始めた。
………この笑顔にドキドキしたのは内緒で良いだろう。
しばらくすると、無料になる分の数を食べ終わったので店を出ようとした。
するといきなり後ろから声をかけられた。
振り返ってみると店員の1人が無料チケットを数えきれないくらいたくさんさしだしてきた。
顔を見合わせて店員の顔を見ると、こう言ってきたのだ。
「これを全部あげますので、まだまだ食べていってください!」
*
この30分後、つまり現在、腹がいっぱいになったので休んでいたのだ。
時計を見てみると、すでに6時を過ぎていた。
「そろそろ帰るか……」
「あ、うん。そうだね……」
もう気力がほとんど残っていない状況で、俺達は帰路へとついた。
その帰り道、俺はある疑問を神崎に聞いた。
「神崎、お前はなんで今日俺を誘った? 他の奴でもよかったはずだ」
「やっぱり聞いてきますか…。んー、学園一の美少年に興味があった、っていうのがあるかな」
「その言い方だと、他にもありそうだな」
「うん、だって今日誘った本当の理由は……」
神崎は一拍置くと、俺の顔をちゃんと見て答えた。
「――――――ずっと気になっていた君と話したりしたかったから」
「……は?」
この時相当まぬけな声を出してしまった。
それはそうだろう。我が学園のマドンナにそう言われたら。
「……あ、私の家、こっちだから。じゃあね!」
「あ、ああ……」
彼女が去っても、俺はしばらくその場に立ち止まっていた。
その時の俺は家に帰って何をしてても、彼女のことしか考えられなくなってしまっていた――――。




