少年達の長き闘い
今回は新キャラが出ますよー!
ある日の放課後、花吹雪学園の校門前に、2人の小学生がいた。
「今日で遂に……俺の兄ちゃんの方が勝ってるんだって証明できる…!」
「はぁ? 何言ってんだ? 俺の姉貴の方が勝ってるんだって」
「何言っちゃってんのバカじゃねーのプギャーッ! お前の姉ちゃんがお前に似てるんなら、俺の兄ちゃんの方が運動神経いいに決まってらぁ!」
「んだと!? お前の兄貴だってお前に似てんだろ? だったら俺の姉貴の方が絶対いいに決まってる!」
「「テメェ表に出ろやぁ!!」」
そんな2人が喧嘩を始めてしまい、周りにいた生徒が2人に話しかけた。
「えーっと、君達のお兄ちゃんやお姉ちゃんがいるなら呼んでこようか?」
「ていうか呼んでくるよ! だからお名前を教えてくれるかな?」
「「…………」」
すると2人は会話をピタリと止めて顔を見合わせた。そして頷いて呟くように言った。
「霧谷黎馬……霧谷煉馬兄ちゃんの弟だ」
「俺は清海逢希! 清海逢歌の弟だ!」
*
「ん? なんか外が騒がしいな……」
「……どうやら校門に小学生が2人いて、その2人が喧嘩をしてるらしい」
「………燐、お前何で知ってんだよ?」
「まーまー気にしねーの。それよりもどんな子かなーっ? あらよっと………っ!?」
「「?」」
煉馬が窓に手をかけて下を覗きこむようにして見た途端、目を見開いて硬直した。
それを見ていた透と燐が首を傾げて煉馬に近づいた……その時だった。
「ぉ、おいっ! 霧谷はいるか!?」
教室の扉が勢いよく開き、1人の男子生徒が煉馬のことを呼んだ。
それを聞いた煉馬は「やっぱりあいつか…!」と呟いてから窓に身を乗り出した。
それを見ていた透達含む全員がギョッとしたが、そんなのもお構いなしに煉馬は2階から飛び降りた。
「おいおい、この学校の2階は、他の学校の3階の高さだってのに…! 燐は来るなら安全を考慮してきちんと昇降口から来い! 俺は先にこっちから行く!」
「……っ!? おい透、何言って……透!?」
透は早口でそう言うと、煉馬と同じように窓から飛び降りた。
それを呆然と見ていた燐は、2人の鞄も一緒に持って、実乃里達に伝えるために教室を飛び出した。
「……? なんだか隣の教室も騒がしいね?」
「そうね……何かあったのかしら?」
「逢歌もさっき教室を飛び出していったし……」
既に逢歌が去った後の教室で、実乃里と小雪はのんびりと話していた。
すると突然教室の扉が開いたと思うと、燐が少し汗をかきながら2人のところへ来た。
「燐! 汗かいてるけど、どうしたの? 何かあったの?」
「それに鞄が3つある……もしかして、透と霧谷君の? 2人はどうしたの?」
「……落ち着いて聞いてくれ。実はさっき、2人が窓から飛び降りたんだ」
「っ!? 嘘っ、透…!」
それを聞いた実乃里は顔を真っ青にして立ち上がり、慌てて教室を飛び出した。
燐はそれを止めようと思ったが、自分達も外に向かおうと思い、小雪に2人の鞄を持つように言った。
*
「あーもーっ! バカじゃねーのバカじゃねーのバカじゃねーの!? 来んなってあれほど言っただろーがバカ黎馬ーっ!」
「うっ、ごめん兄ちゃん…! 色々あって、つい…!」
「逢希、あんたもやで? 高校に来られると騒ぎになるってちゃんと言ったやろ?」
「ご、ごめん……。まさかここまで騒ぎになるとは思わなくて……」
「………何なんだ、この状況は……」
近くで見ていた透は、そう呟いた。
窓から飛び降りた煉馬ときちんと昇降口から出てきた逢歌は、それぞれ1人ずつ説教をしていた。
透は逢歌ならともかく煉馬が説教しているのを見ているので、さらに訳がわからなくなってしまった。
「透ーっ!」
「ん? ああ、実乃里か……どうし、たっ!?」
すると後ろから実乃里に呼ばれたので振り向くと、透に突進していたので慌てて受け身をとって抱きしめた。
透はどうしたのかと思い実乃里を見ると、実乃里は透の制服をギュッと握り、ポロポロと涙を流し始めた。
「お、おいっ、実乃里!? ど、どうしたんだよ!?」
「だ、て………透が、窓から飛び降りたって…!」
「あー、それか……。すまん、補足が足りなかったな。悪かった」
「え……?」
実乃里が俯かせていた顔を上げると、そこには苦笑をしている透がいた。
「え? どういう、こと?」
「あっ、それは俺が説明するぜ!」
すると横から煉馬がヒョイと現れ、透を庇うように抱きついた。
それを見た実乃里は涙をピタリと止めて若干黒いオーラを出したが、それに気づいていない煉馬は話を続けた。
「いやー、実は飛び降りたはいいものの、なんか透も来そうな気がしたんだよなー。だから念のためで待ってたら予想通り透も飛び降りてさー! だからこんな風に透を受け止めたってわけ!」
「ちょっ、こんなに強くは受け止めてないだろ……? ていうか苦しいんだが……」
「だーめ☆ これも愛情表現の1つだと思って受け止めてくれよー……って、のぅわっ!?」
「は?」
「モウ霧谷君テバ何シテルノカナ? サッサトソノ手ヲ離シナヨネ?」
煉馬がそう言って頬をスリスリすると、遂に我慢できなくなった実乃里が煉馬に膝かっくんをした。
それを見た煉馬は「ひいっ!」と間抜けな声を出し、そんな実乃里を逢歌は止めた。
それを見ていた燐と小雪も止めようと近づいたが、その前に黎馬と逢希が透と実乃里に駆け寄った。
「あ、あのっ! もしかして小鳥遊透さん……ですか!?」
「え? あ、ああ、そうだが……?」
「ということは、あなたは神崎実乃里さんですね! うっわ、すごい感動!」
「感動って……えっ?」
突然駆け寄られて状況がわからない透と実乃里は瞬きを何度もした。
そんな2人の心情を煉馬と逢歌は察したのか、苦笑をしながら2人に近づいた。
「わりー透、実は透のことを黎馬に話したんだよなー」
「ウチは実乃里のことを。そしたらなんか『会いたい!』って騒ぎだしてなぁ……」
「え? えと、つまり……?」
「なるほどな……。2人に俺と実乃里の想像ができあがり、本当に会ってみたいと思い立ったってことか……」
「「そゆこと」」
「さすが透さん! 頭の理解が速いですね!」
「実乃里さんのその呆然とした顔も素敵だぜ!」
「「んだとテメェ!?」」
「「…………」」
黎馬と逢希は完璧に当初の目的を忘れて透と実乃里、どちらがモテるのかという勝負を始めてしまった。
そして本人達含む6人は、何のために来たんだろうと、心の中で思っていた。
結局、2人の勝負には決着がつかず、逆に勝負が1つ増えてしまったのでした。




