ペア変更、謎の任務
「なぁ、あれって……」
「え? あれ……どうしたのかな?」
「………気になるか?」
「ふぇ!? あ、いや、その………うん……」
「俺も気になってるから気にするな。じゃあ……」
「うん、そうだね……」
「「――……一肌脱ぎますか!」」
*
「っ、はっ……!」
清海の言葉を聞いた俺は、その場にいたくなくて思わず逃げてしまった。
その時清海は俺のことを呼んでたが、今の俺にはそれに反応することができなかった。
「はっ……何、してんだよ、俺は……。くそっ!」
悔しくてたまらなくて、俺は寄りかかっていた壁を何度も殴りつけた。
しばらくして落ち着くと、目線の先に誰かの足が見えた。
(この足は……男子じゃなくて女子だな……。でも清海のじゃなかったはずだし……じゃあ誰だ……?)
そう思って俯かせていた顔を上げると、そこには透とデートしているはずの神崎がいた。
「え、神崎……? どうしてここに……つか、透は!?」
「あはは……。ほら、ここって人が多いでしょ? だから最初は腕をくんでたんだけど、人混みのせいで腕から手になって、最終的には手すら離れちゃって……」
「あー、なるほど……それで透と離れちまったんか……。やっぱナンパされたのか?」
「うん、まぁ……。だから透もナンパされてるんじゃないかと思うと………ドウシテモ落チ着ケナクテネ……フフフ…♪」
「神崎、それすっげーこえーよ……」
透、ナンパされんじゃねーぞ……。じゃなきゃ相手の命があぶねぇ……。
そう思っていると、神崎が「だからね」と話しかけてきた。
「ん?」
「もしよかったら、霧谷君も一緒に探してほしいの。お願い霧谷君、一緒に探シテクレルヨネ……?」
「はっ、はいいいいいいっ!!」
神崎の嫉妬の恐怖に負けた俺は、一緒に透を探すこととなった。
この時神崎が、俺の見えないところで口元を緩ませていたことに気づかずに――――。
*
秋ちゃんから頼んでいた物をもらったウチは、とてつもなく後悔していた。
(やっぱりあの時、霧谷君を追いかけるべきやったのかな……?)
確かにウチの初恋は秋ちゃんやった。その事実は変わらへん。
でも秋ちゃんはただの初恋の人であって、今は……。
「……っ、ああもう! 人の話を最後まできちんと聞けっつーねん!」
「うわっ!?」
「………へ? 今の声、まさか……?」
聞き覚えのある声が路地裏から聞こえ、ウチはそこに目を向けた。
するとそこには、今は実乃里とデート中であるはずの小鳥遊君がいた。
「あれ? 小鳥遊君、どーしてここにおるん? 実乃里は?」
「ああ……実は人混みのせいで離れちゃってな……。しかも実乃里と離れて1人になった途端に逆ナンされまくってさ……」
「なるほどな、そんで人のこない路地裏に逃げとったんか」
「そういうことだ。あ、それから気になってたんだが……煉馬はどうしたんだ?」
「っ……」
小鳥遊君にそう聞かれ、ウチは思わず俯いてしまった。
小鳥遊君は自分のことに関しては鈍感やけど、人のことに関してはかなり敏感やから、きっと今ので何かあったと気づいてしまったやろう。
しばらくの痛い沈黙。それを破ったのは小鳥遊君やった。
「あー……じゃあ、さ。清海も一緒に実乃里を探してくれないか?」
「へ……? うん、いいけど……?」
「決まりだな。ほら、早く行こうぜ」
「あ、うん……」
小鳥遊君が踵を返して歩き始めたので、それに続くようにウチも歩き始めた。
それを見た小鳥遊君が小さく「任務続行、だな」と呟いたことに気づかずに――――。




