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君と歩む世界  作者: 沙由梨
Chapter3
29/44

奇跡、望んでいた幸せ

「あうぅ〜……恥ずかしい……」


「あはは、実乃里お疲れさん」


あの後私はさっさとステージから降りて、待っててくれた皆のところへ向かった。


そして私はふと疑問に思ったことを逢歌に聞いた。


「ねぇ、小鳥遊君は?」


「透なら『この紙を実乃里ちゃんに渡して』って言ってどこかに行ったぞ?」


「紙……?」


私はその紙を霧谷君から受け取り、カサカサと音をたてて開いた。


紙を見てみると、そこには『この大会が終わった後に、僕達が2年になって最初に出会ったところに来て』と書かれていた。


(私達が2年になって、小鳥遊君と最初に出会ったところ……?)


その場所はどうしてもあそこしか浮かばなくて、それよりも早く小鳥遊君に会いたくて……。


私は皆の制止を無視して、校舎内のある場所へ向かって走り出した。


 *


「最初に出会ったところって……ここ、だよね?」


私は小鳥遊君が伝えたかった場所であろう空き教室の前に来た。


1度深呼吸をして教室に入ろうとした瞬間、突然誰かに腕を引かれた。


「っ、え……!?」


「しっ! 静かに!」


驚いて思わず声を出すと、囁くかのように小さく話す声が真上から聞こえてきた。


この声に聞き覚えがあったのでまさかと思い、顔を覗くようにして上げた。


するとそこには予想通り、私を呼んだ小鳥遊君がいた。


小鳥遊君は睨むようにして扉を見ており、しばらくすると私の方を見た。


「………久しぶり(・・・・)だな、神崎(・・)


「え、久しぶり……? 神崎……? っあ、まさか!」


私はその2つの言葉に疑問を抱いたが、次の瞬間ある答えが脳裏をよぎった。


「もしかして……戻ることができた、の……?」


「ああ。()は神崎が、そして煉馬達と一緒に日々を過ごしてきた小鳥遊透だよ」


「っ、小鳥遊君…っ!」


私はポロポロと溢れる涙を気にせずに、勢いよく小鳥遊君に抱きついた。


小鳥遊君はえ、と声を漏らして驚いていたが、私の頭を撫でてから優しく抱きしめてくれた。


「神崎……さっきの告白、ありがとな。あの告白のおかげで、俺は戻ることができた」


「っ、ううん…! 私はただ、本心を口にしただけだよ…!」


「それでも、いいんだ。俺は神崎にお礼を言いたかった。それから、あの告白の返事も」


そう言って小鳥遊君はゆっくり回していた手を離し、真剣な目で私を見た。


そしていつもとは違う、とても優しくてとろけるような笑みを浮かべて言った。




















「神崎……いや、実乃里(・・・)……俺でよければ、付き合ってくれませんか?」




その言葉に、私は最初から用意していた言葉を言った。




「もち、ろんです……っ! ()……っ!」






私達は笑いあい、再び抱きあった。






小鳥遊家の過去によって、この幸せは長く続かないとも知らずに。




そして、そのせいであんな未来が訪れることになるとも知らずに――――。




 *


『あーあ、フラれちゃった』


『っ、神崎…! ってお前、体が透けて…!』


『………あ、どうやら戻れるみたいだね。よかったじゃん』


『それはよかったが……お前は、どうなるんだ?』


『ん? 普通に消えるんじゃないかなぁ? 一応異端者なわけだし……』


『そう、か……』


『もう……そんな顔しないの! 久しぶりに実乃里ちゃん達に会うんだから笑顔で、ね?』


『………ああ、わかった。行ってくる!』


『うん! いってらっしゃい! ちゃんと幸せにしてあげなよ!』


『ああ!』








『――――まぁ、それまで生きていられたらの話だけどね』






この次に閑話(という名のコラボ作品)を入れて、長いようで短いChapter3は終了となります!


そして次からのChapter4は透達の1年の頃の話や新カップルの登場の話など、本編に関係あるのかないのかよくわからない話を書いていきます!


なので「○○と■■の過去話を知りたい!」とかリクエストがありましたらお待ちしております♪


それでは、閑話、そしてChapter4以降もどうぞよろしくお願いします!


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