奇跡、望んでいた幸せ
「あうぅ〜……恥ずかしい……」
「あはは、実乃里お疲れさん」
あの後私はさっさとステージから降りて、待っててくれた皆のところへ向かった。
そして私はふと疑問に思ったことを逢歌に聞いた。
「ねぇ、小鳥遊君は?」
「透なら『この紙を実乃里ちゃんに渡して』って言ってどこかに行ったぞ?」
「紙……?」
私はその紙を霧谷君から受け取り、カサカサと音をたてて開いた。
紙を見てみると、そこには『この大会が終わった後に、僕達が2年になって最初に出会ったところに来て』と書かれていた。
(私達が2年になって、小鳥遊君と最初に出会ったところ……?)
その場所はどうしてもあそこしか浮かばなくて、それよりも早く小鳥遊君に会いたくて……。
私は皆の制止を無視して、校舎内のある場所へ向かって走り出した。
*
「最初に出会ったところって……ここ、だよね?」
私は小鳥遊君が伝えたかった場所であろう空き教室の前に来た。
1度深呼吸をして教室に入ろうとした瞬間、突然誰かに腕を引かれた。
「っ、え……!?」
「しっ! 静かに!」
驚いて思わず声を出すと、囁くかのように小さく話す声が真上から聞こえてきた。
この声に聞き覚えがあったのでまさかと思い、顔を覗くようにして上げた。
するとそこには予想通り、私を呼んだ小鳥遊君がいた。
小鳥遊君は睨むようにして扉を見ており、しばらくすると私の方を見た。
「………久しぶりだな、神崎」
「え、久しぶり……? 神崎……? っあ、まさか!」
私はその2つの言葉に疑問を抱いたが、次の瞬間ある答えが脳裏をよぎった。
「もしかして……戻ることができた、の……?」
「ああ。俺は神崎が、そして煉馬達と一緒に日々を過ごしてきた小鳥遊透だよ」
「っ、小鳥遊君…っ!」
私はポロポロと溢れる涙を気にせずに、勢いよく小鳥遊君に抱きついた。
小鳥遊君はえ、と声を漏らして驚いていたが、私の頭を撫でてから優しく抱きしめてくれた。
「神崎……さっきの告白、ありがとな。あの告白のおかげで、俺は戻ることができた」
「っ、ううん…! 私はただ、本心を口にしただけだよ…!」
「それでも、いいんだ。俺は神崎にお礼を言いたかった。それから、あの告白の返事も」
そう言って小鳥遊君はゆっくり回していた手を離し、真剣な目で私を見た。
そしていつもとは違う、とても優しくてとろけるような笑みを浮かべて言った。
「神崎……いや、実乃里……俺でよければ、付き合ってくれませんか?」
その言葉に、私は最初から用意していた言葉を言った。
「もち、ろんです……っ! 透……っ!」
私達は笑いあい、再び抱きあった。
小鳥遊家の過去によって、この幸せは長く続かないとも知らずに。
そして、そのせいであんな未来が訪れることになるとも知らずに――――。
*
『あーあ、フラれちゃった』
『っ、神崎…! ってお前、体が透けて…!』
『………あ、どうやら戻れるみたいだね。よかったじゃん』
『それはよかったが……お前は、どうなるんだ?』
『ん? 普通に消えるんじゃないかなぁ? 一応異端者なわけだし……』
『そう、か……』
『もう……そんな顔しないの! 久しぶりに実乃里ちゃん達に会うんだから笑顔で、ね?』
『………ああ、わかった。行ってくる!』
『うん! いってらっしゃい! ちゃんと幸せにしてあげなよ!』
『ああ!』
『――――まぁ、それまで生きていられたらの話だけどね』
この次に閑話(という名のコラボ作品)を入れて、長いようで短いChapter3は終了となります!
そして次からのChapter4は透達の1年の頃の話や新カップルの登場の話など、本編に関係あるのかないのかよくわからない話を書いていきます!
なので「○○と■■の過去話を知りたい!」とかリクエストがありましたらお待ちしております♪
それでは、閑話、そしてChapter4以降もどうぞよろしくお願いします!




