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君と歩む世界  作者: 沙由梨
Chapter3
25/44

悲しき過去、途切れない友情

今回はシリアス&煉馬がむちゃくちゃ喋りますよ~♪


煉馬ファン、必見!←


『ねぇ……まだ戻らないの? このままずっと、皆に会わないつもり?』


『……………』


『っ……何か言えよっ! 実乃里ちゃん、泣いたんだぞ!? 記憶喪失のふりした僕を、小鳥遊透を見て、泣いたんだぞ!? なのに、戻らないつもりかよ!?』


『んなわけないだろ! 俺だって戻りたい! でも、無理なんだよ……。お前だってわかってるだろ……? 俺は、俺達の体は――――』


 *


「皆……ごめんね、黙ってて……」


「その、悪かった……」


2人は頭を下げて私達に謝った。


だけど私は、いくら謝られても許せなかった……いや、わからなかった。


「どう、して……? な、んで、言ってくれなかったの……?」


友達だと、思ってた。でも、2人は友達だと思ってなかった……? ただの、同級生だった……?


気がつくと私は泣いていた。泣いたって真実は何も変わらないのに。意味のないことなのに。


そんな私を見て2人は慌てたが、先に決意をした小鳥遊君はゆっくり目を閉じた。


そして目を開いて私達を見る。どこか悲しみの混じった目で。


「本当に、ごめんね……。確かに僕は記憶を失っていなかったよ。でもね? 僕は皆の知っている『17歳の小鳥遊透』じゃない。偶然現れてしまった『8歳の小鳥遊透』なんだ。だから、記憶喪失のふりしてたんだ……。どんなに戻りたくても、戻れないし……」


そう言って小鳥遊君はため息をつくと、すぐに表情を変えて霧谷君を見た。


「僕が黙っていた理由はこれだけ。それよりも知りたいのは煉馬君、君の方だ。どうして君は僕の、僕達の記憶に存在していない? 君の本名はおそらく『小鳥遊煉馬』だろう? そんな名前の人、僕達は知らない……いや、その前にどうして小鳥遊家の家系に(・・・・・・・・)すら存在していない(・・・・・・・・・)の?」


小鳥遊君の言ったことに、私達は疑問を持った。


それに気づいたのか、小鳥遊君は私たちの方を向いて説明してくれた。


「僕達小鳥遊家は昔から複雑な家系だったんだ。裏切り者やスパイが現れたわけでもないのに、小鳥遊家として生まれた人の名前がわかるように記録している。そして生まれた人はある程度言葉が理解できるようになったらすぐにそれを見せられる。それを僕もされていた。だから小鳥遊家として生まれていれば彼の名前も記入されているはずなんだ。だけどそれがないってことは――――」


小鳥遊君は1回言葉を区切り、衝撃的な一言を放った。





















「――――ないってことは、生まれていないか、もしくは小鳥遊家の人間に知られる前にどこかに捨てられている(・・・・・・・)ということなんだ」











「捨て、られている……?」


私がそう小さく呟くと、霧谷君は自嘲気味に笑って口を開いた。



「……そうだよ。俺の名前は『小鳥遊煉馬』。透の双子の弟だったけど……――――俺は生まれてすぐに、教会の前に置き去りにされてるよ」



衝撃の事実に、私達は目を見開いた。


まさかいつもあんなに楽しそうに笑っていた霧谷君に、そんな過去があるなんて思わなかったから。



……ううん、霧谷君はわざと楽しそうに笑っていたのかもしれない。


そんな過去を、私達に知られたくなかったから。自分自身も、今すぐに忘れ去りたかったから。



そんな私達をよそに、霧谷君は言葉を紡いでいく。


「最初はさ、どうして俺だけを捨てたんだと思った。どうして捨てられたのが透じゃなくて俺なんだと思った。すっげー母親を、透を憎んだよ。復讐だってしてやろーかと思った。でもさ、霧谷家の皆は、こんな俺を明るく受け入れてくれたんだ。裏も何もなく、心からさ」


その時のことを思い出しているのか、霧谷君は愛おしそうに微笑んだ。


「そしたら捨てられたことも復讐することもどうでもよくなった。むしろ霧谷家の人間にしてくれてありがとうって思った。でも、どうしても、小鳥遊家の1人だったら双子の兄である透に会いたかったんだ。だから透のことを調べて、追うようにして同じ学園に入った。その時の透は今みたいにイケメンでもなかったし友達も少なかったからな、すぐに仲良くなれたよ」


それを聞いて小鳥遊君は顔を俯かせた。


今は8歳の小鳥遊君ではないけど今までの記憶はあると言っていたから、きっとその時のことを思い出しているのだろう。


そんな小鳥遊君を見て、霧谷君は申し訳なさそうにしながら話を続けた。


「しばらくして、俺の家は透と同じように事故で両親が死んだことにしたんだ。そして俺が『相手を憎まなかったか?』って聞いたんだよ。そしたら透、なんて言ったと思う?」


霧谷君は顔を呆れたように、だけど羨ましそうにしながら言った。




「『事故なんだから仕方ない。それに、今の俺には煉馬がいるから、悲しくなんてない』」




「何してんだろうな、俺……。悲しくなんてないはずなのに、辛いはずなのに、そんな過去を思い出させて……。だけど、そんな透が羨ましかった。もっともっと、近づきたいと思った。失いたくない、守りたいと思った。『霧谷煉馬』として、親友になりたいと思った」


霧谷君はそう言うと、小鳥遊君に近づいて言った。


「なぁ、透……こんな俺でも、お前の親友でいてもいいか?」


すると小鳥遊君は、優しく霧谷君を抱きしめた。


「っ……当たり前でしょ……!? 僕達はもう、親友以外になんてなれないんだから……!」


「ありがとな、透……」


そう言って、2人は涙を流した。


それを見ていた私達も、つられて泣いてしまった。


(よかったね……小鳥遊君、霧谷君……)


私は心の中で、そう呟いた。




――――なぁ! お前の名前ってなんだ?――――



――――……小鳥遊透――――



――――俺は霧谷煉馬! これからよろしくな、透!――――



――――ああ、よろしくな、煉馬――――



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