学園祭準備
今回は短めです。
ある学園には、有名なジンクスがある。
『この学園の学園祭でカップルになれた男女は、永遠に幸せになれる』というものだ。
そのため、それを目当てにその学園の学園祭に来る男女は数多くいる。
しかしたくさんの男女がそのジンクスを楽しんでいる時も、真実は刻々と近づいていた――――。
*
熱い、熱すぎる。
今の季節は学園祭がある、少し肌寒い秋………のはず、なのに……。
「売り上げ伸ばすぞテメェらぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『うぉっしゃぁぁぁぁぁぁいっ!!』
熱血男女のせいで体感温度は余裕で夏です。しかもうるさい。
私達の花吹雪学園では、学園祭でのクラスの出し物で得た収入は、割り勘して自分達の財布に入れることができる。
そのため、生徒達にとって学園祭は『勉強しなくてもいいし、すごく得をする一石二鳥の日』となっている。
確かに勉強しなくてもいいのは嬉しいし、収入は多い方がいい。けど――
「めーざーすーは!?」
『億万長者!!』
無理に決まってる、というか欲張りすぎでしょ。
さてと、心の中で愚痴ってるなら、逢歌と小雪ちゃんのところにでも行こうかな? ていうか行こう、うん。
そう思って腰を少し浮かせた時、友達の1人がすごい笑顔で教室に入ってきた。
「大ニュースよ、大ニュース! なんと、私達のクラスは――小鳥遊君がいるクラスと合同で出し物をすることになりましたーっ!」
『キャァアアアアアッ!!』
それを聞いた瞬間、クラスの女子が黄色い声を出した。
私は黄色い声を出さずに呆然としていると、いつの間にか近くに来ていた逢歌に話しかけられた。
「実乃里、よかったやん♪」
「逢歌……うんっ、うんっ!」
「燐と一緒に……出し物…!」
私達は喜びをかみしめながら、いい学園祭にするために気合いを入れた。
*
あの後小鳥遊君達のクラスと話し合い、出し物は『コスプレ喫茶』に決定した。
それで小鳥遊君が燕尾服を着るのはいい。というか見たい。でも、でも…っ!
「どうして私がメイド服なのーっ!?」
メイド服なんて、私より逢歌や小雪ちゃんの方が似合うに決まってるのに…! しかもスカートが若干短いし…!
そう思いながら落ち込んでいると、誰かが私の肩に手を置いた。
振り返って顔を上げると、そこには可愛らしく首を傾げている小鳥遊君がいた。
ビタンッ
それを見た私は、思わず体を床につけてしまった。当たったところが地味に痛い。
「え、え!? 実乃里ちゃん、大丈夫!?」
「だ、大丈夫……。心配しないで……」
「今のを見て心配しない人はいないと思うよ…?」
小鳥遊君にそう言われながら、私はゆっくり立ち上がった。
そして未だに可愛らしく首を傾げている小鳥遊君に、私は微笑みながら言った。
「似合ってるよ、小鳥遊君」
「……! あ、ありがとう!」
そう言って満面の笑みを浮かべた小鳥遊君を見てから、私はガッツポーズをした。
(よしっ! 私達の知っている小鳥遊君じゃないけど、一緒に頑張ろう!)
私はそう、決意した。
「――…ふーん、家に来た時みたいに抱きしめてはくれないんだぁー……」
小鳥遊が小さく、そう呟いたことに気づかずに――――。




