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君と歩む世界  作者: 沙由梨
Chapter3
21/44

混沌、輝く絆

書いていませんが、今回からChapter3となります。


パソコンが使える状況になりましたら、即刻章を追加します。しばしお待ちを。


「うわぁ〜、すごいね! なんだか魔法を見てるみたいだよ!」


「ふふっ、喜んでくれてよかった♪」


私は今、小鳥遊君と花の花壇を見ている。


小鳥遊君に花の咲き方を話すと、私に向けて満面の笑みを浮かべた。


普通ならこの程度で喜んだり、満面の笑みを浮かべながら「魔法みたい」だなんて言わないだろう。だって私達は高校2年生なんだから。


だけど、今の小鳥遊君は――



 *



『きゃあーーーっ!! 可愛いーーーっ!!』


「えへへ……。お姉さん達も、可愛いよ♪」


「い、いいい今っ、かかか、可愛いって!」


「私、もう死んでもいいかも……」


「ごめんっ、鼻血出そうだからトイレに直行してくるわ!」




………………なにこの混沌(カオス)は。



あっれー? 皆に小鳥遊君の状態を説明するために、わざわざ学校に連れてきたんだよねー? 何でこんなことになってるのー?


ていうか何ちゃっかり写真撮影始めたりさっきの言葉を録音したり鼻血が出そうになったからトイレに直行したりしてるのー?


………もうこれ、怒鳴ってもいいよね? 怒鳴っても私は怒られないよね? 怒られないはずだ、うん。


私が覚悟を決めて息を吸った時、1人が爆弾発言をした。


「ねぇ、自己紹介してくれない?」



……………はい? 自己紹介、ですと?



えーと、私はまだ小鳥遊君のことについて何も話していない。というか話せなかった。

てことは、小鳥遊君が自己紹介をしたらまずいんじゃ……。


私が慌てて小鳥遊君の口を塞ごうとしたが、その時は既に遅かった。


小鳥遊君はもう、自己紹介を始めていたから。



「うんっ、いいよ! えっと……小鳥遊透、8歳です!」



『………え?』



その瞬間、一気に空気が凍りついた。



皆の視線が一斉に私へと向けられたのには気づいた。その視線と交わる前に、私は顔を俯かせる。


どうする。今ここで話してしまうか? そのために小鳥遊君を連れてきたのだから。でも……。


そう考えていると、突然誰かに腕を引っ張られた。


それに反応できなかった私は、その人物に引っ張られて廊下に出た。


顔を俯かせている私の視界には、自分を含めて5人分の足があった。


ゆっくり顔を上げると、私を睨んでいる逢歌とそれを心配そうに見ている小雪、そして無表情でその場に立っている霧谷君と不動院君がいた。


「え……」


なんで、と続けようとした私の言葉は、逢歌の大声によって遮られた。


「電話でも、メールでもいいっ! どうしてウチら4人にすら教えてくれなかったんやっ!」


「っ、そ、れは……」


ばつが悪くて私はつい目を逸らしてしまった。

それを見た逢歌はさらに眉を寄せて私の顔を掴んで無理矢理視線をあわせた。


「っ……」


「目を逸らすな。ちゃんとウチの目を見いや」


逢歌にそう言われ、私はおそるおそる視線をあわせた。


それを確認した逢歌は、口を開いて言葉を紡いだ。


「ウチが他人に言いたくない事があるように、実乃里が他人に言いたくない事があることはわかる。せやからその事に関しては首を突っ込んだりせえへん。

 けどな、今回は小鳥遊君の事態や。せやからたとえ全員は無理やとしても、いつも一緒にいるウチらにはきちんと詳細を話してほしいんや」


逢歌はそこまで言って言葉を区切ると、真剣な目で私にはっきりと告げた。




















「そういうのが、友達とちゃうんか?」




その瞬間、私の目から涙が溢れた。



そうだ、そうだよ。ここにいる皆は私の友達であると同時に、小鳥遊君の友達でもあるんだ。


だから今回みたいな事があったなら、電話でも何でもいいから伝えなくちゃいけなかったんじゃないか。



それを理解した私は、震える声で呟いた。


「ごめ、なさ……。ごめん、なさい…っ!」


私は涙を拭わずに、今回の事を黙っていたこと、そして、友達という関係であるのを忘れていたことを謝罪した。


それを聞いた4人は息を呑んだ様子になったが、その場の空気はすぐに和やかになった。


目の前にいた逢歌は困ったような笑みを浮かべると、泣いている私を優しく抱きしめた。


「仕方ない子やなぁ……。次からは、きちんと連絡するんやで?」


「っ、うん…っ! 絶対に、連絡、する…っ!」



小鳥遊君、私達の周りには、こんなに優しい友達がいるよ。


だから、お願い。早く記憶を取り戻して。



学園祭が近づいている季節、私は心の中でそう呟いた。




私達の知っている小鳥遊君に、この言葉が届いていることを願いながら。



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