紅茶で覚醒
「んぅ、お兄ちゃん?」
イザヨイと話していると、メリエルが目を覚ました。
「おはよ、メリエル。おやつの時間だよ」
起きたメリエルは部屋の中に折りたたみ式のテーブルを出す。
準備の終わった頃を見計らって下の階で買ったクッキーを渡す。
「ありがとう、お兄ちゃん」
ひまわりのような笑顔が俺に降り注ぐ。クッ、可愛い!直視できない!
手を頭に載せて撫でる。目線はベッドに流しておく。
メリエルがクッキーに目を移した瞬間にイザヨイをポケットに入れる。もちろん暴れているが気にしない。
「お兄ちゃん、今日はなにしてたの?」
俺の飲みかけのジュースを飲んでいるメリエル。いつの間に・・・。
「魔物狩りかな、ギルド行ってた。お菓子とジュースは俺一人での初報酬だぞ~」
えっへんと胸を張って言う。
顔が崩れたのが分かるがそんなことは気にしない。気にしないったら気にしないのだ。
「疲れた?私が肩たたきしてあげる!お父様にも褒められたんだから!」
機嫌よく背後に回ったメリエルが肩たたきをしてくれる。無論、俺はされるがままだ。
「気持ちいい?」
「うん、とっても気持ち良いよ。メリエルは肩たたき上手いなぁ」
うん、正直言うとくすぐったいです。でも気持ちが俺の殺しの後の心を癒してくれる。
「うふふ、もっとやってあげるね」
その後1時間の間、メリエルは肩たたきを続けた。途中で止めても悲しそうな顔をされるために諦めたのだが!
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「メリェ~ル!!」
エディの悲しみに暮れた声が聞こえる。
肩たたきの邪魔をされたメリエルが不貞くされてベッドの中に引きこもってしまった。
「うーーーーーー!!」
顔を出してエディを威嚇するメリエル。そして怯むエディ。それを見て優雅に紅茶を飲む俺。
肩たたきから解放された後、ダイニングルームに行ってお湯を沸かして紅茶を入れた。
もちろんメリエルとエディの分もある。まだ熱いのでしばらくエディを放置しよう。
「メリェ~ル!!」
「うーーーー!!シャーーーーーーー!!」
「メリェ~ル!」
噛み付かれたエディは嬉しそうにメリエルを抱きしめようとする。
メリエルは抱きつきを回避して俺の後ろへと隠れた。
「メリェ~ル・・・」
がっくりとうなだれたエディを放置して優雅に紅茶を飲む俺。まだ熱いな。
「タカ・・・助けてくれ・・・」
「お兄ちゃん!お兄ちゃんは私の味方だよね!」
助けようと口を開いた瞬間にメリエルの言葉が飛ぶ。
「エディ、メリエルを裏切るなんて出来ない。エディなら分かるはずだ」
極めて真剣にエディへと語りかける。エディはそれで納得したのか、肩を深く落として紅茶に口をつける。
「あっつ!」
手を離したカップは、見事な放物線を描いて俺へと飛来してくる。
後ろに居るメリエルを庇いながら俺は熱湯を浴びることになった。
「っーーー!!」
すぐさま部屋を飛び出してシャワールームへと走りこむ。
帰ってきた冒険者達を強制的に押しのけて入ったために何を言われるかは分からないが・・・。
すぐさま銀貨を入れてノブをひねり、温度を下げる。
シャワーの水が俺の体と服をずぶ濡れにしながら排水溝へと落ちていく。
熱い、熱い、熱い!
もっと冷たく、もっと冷やす!
そして体の中の魔力が抜けていき、水を氷へと変える。
シャワールームが急速に冷えていき、凍る。
白き氷が舞う。まるで雪のように。
「って、ぇ?」
意識がその氷に向いた瞬間、氷が砕けた。
「つめたっ」
一斉に氷のように冷えた水を体中に浴びる。
「うー、さむっ」
体を震わせながら、今起こした現象に俺の意識は持っていかれていた。
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シャワールームを出ると、冒険者達の冷えた視線が突き刺さる。
それも一瞬の事。濡れ鼠となった俺に頭を冷やしたのか、俺が乱入者だったからなのか、皆視線が疑問の視線へと変わる。
「ごめん、ちょっと火傷しちゃって」
一応謝っておく。いざとなったらエディに責任を押し付ければ万事解決だ、うん。
「あ、ああ。大丈夫だ。いや、大丈夫か?それと、その髪と目、どうしたんだよ」
言われてふとシャワールームの鏡を見る。
そこには白雪のように真っ白な髪と、白と黒の反転した瞳が映っていた。
「なんだ、これ・・・」
本当は学校で発現する予定でした。
ちょうど話しの流れ的にいいのでは?と出しちゃいましたけどね!
白と黒が逆転した目って怖くないですか?髪が白いからそんなには怖くないでしょうけど^^;(黒だと異常に怖い)
うむ、気にしたら負けだ!