わたしの名前はふじりきゅう
そうだ、字書きアカウント、つくろう。
ふとそう思ったわたしは、長らく読み専として使っていた小説家になろうアカウントを引っ張り出した。
読む側ではいたのに引っ張り出したというのはいかなることか?
そう、こちらのアカウント、気まぐれにログインしたりしなかったりして全く活用できていなかったのである。
登録してあった名前も昔使っていたハンドルネームで……これ変えて……うん……名前、考えてなかった……どうしよ…………
何も気兼ねせず適当に書き散らかしたくてアカウントを分けることにしたわけなので、まずペンネームを決めることに。
ここで問題になるのが自分のネーミングセンスで、昔も今も使っているハンドルネームが、シンプル。
例とすると「かえで(仮名)」みたいなそのままある言葉を平仮名でひらたくしたものなど。
モブネーム上等(※同じ名前の方いらっしゃいましたらすみません)で、かぶって集団に埋没したいタイプの人間のため
陳腐で月並みでありきたりで、そこらへんにいそうであればあるほど好き。
(でも「さくら(仮名)」みたいな真正面ド王道は外していく。やわらか陰キャである)
でもペンネームってたぶん、それだと不便なはず。エゴサとか……(自分しなそう)
わたしのほうはかぶってOKでも、知らず知らずのうちに先人の名前にかぶせていたらいけないし。
しかも今まで使ってた昔のハンネは本名をもじったやつ。そのまま使うのは一番あかん。
じゃあどんな名前にしたらいいんですかね……
………
……
…
名前が決まらないので、字書きアカウント、完!!
…になりかけたので、やけっぱちで仮の名前としてペンネームってそのまま入れて書き始めたらいいかと思って入れてみると……
すごい怪しい!botっぽさがすごい!!
何とかしなければ……
ちょっともじって……
ペンネM
そのまますぎる!
ペンネ……ペンネアラビアータ的な?
Mだからペンネ……マリナーラ?
おなかすくわ!
もうちょいきゅっとひねった感じで……
あっ、ねじねじしたパスタありましたよね
フジッリ。
きゅっとひねるので…MじゃなくてQ
フジッリQ
探◯学園Qか!?
いや、Qが悪い。音はそのままに表記を変えれば……
リQ。利休。じゃあ……
富士利休
……
「ペンネーム」をもじるためだけに無駄に脳内でこねてしまった。
字面からはこれがペンネームという意味しか持っていないようには見えないのがまた味わい深いじゃないか。
いいね気に入った、これ使おう。
――10分後――
この名前、落ち着かない。
それもそうなのである。
いままでひらたい名前のモブネームモブオブモブとしてネットに生息してきた。
ペンネームという意味しかないとしても、急にこんな「富士利休」なんてカチカチの名前になりましても。
単に、ネットの海のアノニマスとしての字書きアカウントがほしかっただけ。
ペンネームにはシグネチャーとしての、アカウントを識別出来るようにするという機能的な意味しかないはずだった。
それでも、中にいるのは「わたし」という人間で、「これはわたしだ」という感覚、納得するような感覚を得るためには
機能性だけではなくて、自分らしさみたいなものも必要なのだなあと何となく腑に落ちるものがあった。
意味があるようで実はほとんどないという、富士利休という名前のアンビバレント性というか、ギャップのある面白さは気に入っていたので
結局表記を「ふじりきゅう」とひらがなにして字面の堅さだけ変えることにした。
朝三暮四といっていいくらい単純なアレンジ。それでもだいぶしっくりくるようになった。
うーん、人間の感性っていうのは理屈じゃない。
わたしの名前はふじりきゅう。
まだちょっと馴染みきっていないけど、けっこう気に入っている。
一瞬ペンネマリナーラになりかけたのは、わたしとこの文章を読んでくれた人だけの秘密だ。
後からマリナーラってピザじゃない?と思って調べたんですけど、
語源としては航海中でも日持ちのするシンプルなトマトソースがもとになってる(諸説)みたいなので、ペンネと合わせることもきっとあるはず。
まあその名前にはならなかったのですが。




