『同じ土、違う旗』
そして、歩き出す。
泥の上を。
同じ土の上を。
違う旗の下で。
『同じ土、違う旗』
① 共産党兵士
靴の中まで泥だ。
雨は止んだのに、地面はまだ俺を離さない。
一歩進むたびに、ぬるりと音がする。
「もうすぐだ。」
隊長が低く言う。
村が見える。
小さな、どこにでもあるような村だ。
俺は銃を握り直す。
この戦いは、未来のためだと教えられてきた。
土地を分け、飢えをなくし、
誰もが同じように生きられる世界。
そう信じている。
……いや、信じようとしている。
腹が鳴る。
理想より先に、現実がくる。
② 国民党兵士
弾は、あとわずかだ。
ポケットの中で数えるたびに、現実になる。
三発。いや、二発かもしれない。
「持ちこたえろ。」
上官の声が響く。
守るべきものがある。
国だ。秩序だ。これまでのすべてだ。
そう教えられてきた。
だが——
目の前の村は、あまりにも静かだ。
子どもの声も、犬の鳴き声もない。
ただ、風だけ。
俺は銃を握る手に力を込める。
③ 交差
銃声は、突然始まる。
乾いた音が、空を裂く。
俺たちは撃つ。
相手も撃つ。
泥が跳ねる。
息が詰まる。
誰かが倒れる。
叫び声。
怒号。
そして——すぐに、静けさ。
短い。
あまりにも短い。
④ その後
俺は、倒れている男のそばに立つ。
敵だ。
だが、顔は——
自分と変わらない。
同じくらいの歳。
同じくらいの汚れた服。
同じように、痩せている。
男の手には、小さな袋が握られていた。
中には、乾いた饅頭が一つ。
俺はそれを見つめる。
腹が鳴る。
遠くで、誰かが叫ぶ。
「前進しろ!」
俺は袋を戻す。
そして、歩き出す。
泥の上を。
同じ土の上を。
違う旗の下で。
俺は、倒れている男のそばに立つ。
敵だ。
だが、顔は——
自分と変わらない。
同じくらいの歳。




