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『同じ土、違う旗』

作者: 蒼山ホタル
掲載日:2026/04/30

そして、歩き出す。

泥の上を。

同じ土の上を。

違う旗の下で。

『同じ土、違う旗』

① 共産党兵士

靴の中まで泥だ。

雨は止んだのに、地面はまだ俺を離さない。

一歩進むたびに、ぬるりと音がする。

「もうすぐだ。」

隊長が低く言う。

村が見える。

小さな、どこにでもあるような村だ。

俺は銃を握り直す。

この戦いは、未来のためだと教えられてきた。

土地を分け、飢えをなくし、

誰もが同じように生きられる世界。

そう信じている。

……いや、信じようとしている。

腹が鳴る。

理想より先に、現実がくる。

② 国民党兵士

弾は、あとわずかだ。

ポケットの中で数えるたびに、現実になる。

三発。いや、二発かもしれない。

「持ちこたえろ。」

上官の声が響く。

守るべきものがある。

国だ。秩序だ。これまでのすべてだ。

そう教えられてきた。

だが——

目の前の村は、あまりにも静かだ。

子どもの声も、犬の鳴き声もない。

ただ、風だけ。

俺は銃を握る手に力を込める。

③ 交差

銃声は、突然始まる。

乾いた音が、空を裂く。

俺たちは撃つ。

相手も撃つ。

泥が跳ねる。

息が詰まる。

誰かが倒れる。

叫び声。

怒号。

そして——すぐに、静けさ。

短い。

あまりにも短い。

④ その後

俺は、倒れている男のそばに立つ。

敵だ。

だが、顔は——

自分と変わらない。

同じくらいの歳。

同じくらいの汚れた服。

同じように、痩せている。

男の手には、小さな袋が握られていた。

中には、乾いた饅頭が一つ。

俺はそれを見つめる。

腹が鳴る。

遠くで、誰かが叫ぶ。

「前進しろ!」

俺は袋を戻す。

そして、歩き出す。

泥の上を。

同じ土の上を。

違う旗の下で。

俺は、倒れている男のそばに立つ。

敵だ。

だが、顔は——

自分と変わらない。

同じくらいの歳。

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