7話
7月10日より毎日6話ずつ投稿させていただいています。7月16日に完結します。
お腹が満たされた私は、この街に興味を惹かれ、少し散策することにしました。
本当に沢山のお店が所狭しと軒を連ねています。そして暫く歩いて行くと、色々な種類の草花が数多く植えられたガーデンの様な場所があり、その周りにはベンチが並んでいます。
私は空いているベンチに腰掛けてこれからどうすべきか考えました。
もしかしたらこのまま忘れ去られて放って置かれる可能性が大きいのでは無いかと不安にかられました。
そしてそれが故意にされているのか、本当に忘れられているだけなのかはあまり今の私には関係がないのです。
だってどちらにしても実家の男爵家に帰る事は出来無いのですから。
さて、困りましたね。
持ってきたお金が底をつく前に何とかしなければと考えていると目の前の小綺麗なパン屋さんから小さな子供が飛び出して来て、私の前で転んでしまいました。
私は直ぐに駆け寄りその子を起こしてあげたところで、後からお腹の大きな妊婦と思われる女性が追いかけて来て
「こら、勝手に出て行ったらダメじゃないか」
そう、男の子を叱りながら私に
「済まないね、ありがとよ」
と言って下さった。
私は、女性に
「大丈夫です、それより妊婦さんの様ですがそんなに走って平気なのですか?」
と尋ねると、
「そうなんだよ、今、九ヶ月でね。なのにこの子がヤンチャで少しも言う事を聞いてくれなくて」
と笑ってらっしゃる。そして、「子供がいると、産んだ後の方が大変なんだよだから子供が産まれてから暫くの間だけ誰か私の代わりに働いてくれる人を探しているんだが、短期間だけの仕事なんで中々人が見つからなくてね」
と仰ったので私は思わず
「良かったら、私を雇って頂けませんか?」
と口に出してしまった。すると女性は
「そんな短期間だけなんてこっちの都合の良い条件なのにいいのかい?」
と言うので
「私は、つい最近この街に来たばかりでここで働かせて頂いている間に次のお仕事を探すので、その繋ぎで構わないので宜しければお願いします」
と返すと女性は
「助かるよ、じゃあ直ぐにうちの旦那に紹介するから付いてきておくれ」
そう言って私をパン屋さんの中へと通してくれました。