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25話
7月10日より毎日6話ずつ投稿させていただいています。7月16日に完結します。
辺境伯エリック視点
今日は街に視察に来ている。
半年間、砦に行っていた間に新しい商店が随分と増え、今迄に無い食材が隣の領地から入って来ていると言う。
此方の領地では気温が低く過ぎて、育たない物だ。
それに珍しい香辛料も数多く並んでいた。領民の生活が少しでも豊かになるよう、此方の領地でも特産品があれば良いのだが、どうしても国境沿いの街というのは紛争に備える事を重視してしまっている。
馬車に揺られながらそんな事を考えていたら、窓の外にレカンで働いている女性の姿が目に留まった。
一緒にいるのは確かレカンの店主だ。今日は定休日なのか二人で楽しそうに歩いている。手には大きな荷物を持って、二人で買い物でもしているのか? あの二人はそうか、そういう関係なのか。
そんな光景をみながら、がっかりしている自分がいた。
まだ、会ったこともない書類上の妻がいる自分が持ってはいけない感情だ。




