表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙(そら)の果て  作者: 桜橋あかね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/13

第6話 それぞれの思惑

「……で、だ。例の『範囲外の機体』については分かったのかね」

そう、ゴルセットは言う。


「いえ、詳細な事はまだ解析班の情報待ちでありますが、かなりのスナイピング技術があると見ています」

ギリシが、返す。


すると扉の向こうから

『失礼してもよろしいでしょうか?』

と、班長の声がする。


「ああ、構わんぞ」と、ゴルセットが言う。


「失礼します」

と、タブレットを持った班長が一礼をする。


「範囲外の機体の件ですが、特定出来ました」

と班長が言い、タブレットの写真を見せる。


「……この機体、アスベリーゼの主力機では無いな」

ギリシが言うと、班長は頷く。


「『ニベア試作機』と呼ばれる機体で、スナイパー専用で開発された物です。……搭乗者は今現在、まだ解析中です」


「大尉の言う通り、スナイピングに長けていた……か。この状況、どうする」

と、ゴルセットが言う。


「二正面作戦で、ネネントアームの軍本部基地と、他の国を同時に攻めようと思う」


「二箇所同時は、不利な作戦と言われています……大丈夫でしょうか」

班長が不安そうに言う。


「確かに不利な作戦ではあるが、ネネントアームの軍基地を制圧する訳ではない。あくまでも、シロヴィンやニベア試作機を出させないようにする為だ」

ギリシはそう返す。


「彼の意見には一理ある。それで、作戦時に狙う国は―――…」


▪▪▪


―――その頃、ネネントアームでは。

朝食を食べ、部屋に戻ろうとするキャンベルに、ドーマが慌てる素振りで呼び止める。


「そんなに慌てて、どうしたの」

やや呆れ気味にキャンベルは返す。


「ニッケラ中佐から、です。ネルベイさんと話していたんですけど、少佐を呼んでこいの一点張りで」


「はぁ」、とキャンベルは溜め息を漏らす。

「仕方ないわね。部屋に案内して貰えるかしら」


ドーマは頷き、部屋へと案内する。

該当の部屋に着くと、ドーマは扉を叩く。


「中佐、キャンベル少佐をお呼びしました」

『済まない、入ってもらえるか』


キャンベルが扉を開け、入る。

それを見たドーマは、会釈をしてその場を去った。


『やーっと来なすったか!』

通話画面の向うに居る、ネルベイが言う。


「すいません、急にお呼び立てして」

ニッケラが小声で言う。


「仕方がないわ。気にしないで」

と返しつつ、キャンベルは椅子に座る。


「で?私を呼んだのはどうしてかしら」


キャンベルが言うと、ネルベイは声を荒らげる。


『中佐から聞いたんだが、お前は何考えてるんだ!』


キャンベルは、目を閉じる。

それを見た彼は、言葉を畳み掛ける。


『シロヴィンはな、俺が初めて設計したもんなんだ。子どもみてぇなやつでな、それをあんたらの所に信頼して預けている。それを破壊されただ!?しかも、装備を増やせって……今の機体じゃあ無理に付けると、バランスを崩す。そうなったら、「飛ぶ棺桶」になっちまう。俺はそんなの真っ平御免だぞ!!!』


『リーダー、少佐に対して言い過ぎです!』

側に居た整備隊の一人が、横から言う。


『お前は黙ってろ!これはこっちの話だ!』

『お、落ち着いて……っ!』


「飛ぶ棺桶、か」

キャンベルがそう呟くと、ネルベイがこちらを向く。


『ああ、無理な装備の増設は……』


「……貴方、今の状況を理解しているの!?」

『なっ』


キャンベルの一声で、ネルベイは一瞬言葉を怯ませる。


「今は戦争下、戦闘に破損は付き物、状況を鑑みて武器を増設しなければならない……そうでもしないと生き残れはしない。それを何ですって?生みの子を壊すな、増設は危険だ、飛ぶ棺桶だ……!?そんな戯言(たわごと)を言わないでちょうだい!」


キャンベルは「ふぅ」と一呼吸を置いて

「私だって、シロヴィンは愛用機よ。貴方の気持ちは分かります……が、こちらの意向にそぐわないのであれば、今すぐにでも辞めたって良いのです。設計者の変わりはたくさん居るわ」


それを聞いたネルベイは、諦めた表情で頭を掻きむしる。

『……だー、分かりましたよ!その代わり安全性は度外視しますけど、それで良いですね?』


「ええ、そう言って貰えて助かるわ」


ネルベイは

『お前ら、使えるモンを探せ!』

と部下に一言言ってから、こちらを再度見る。


『まったく、昔からあんたにゃ逆らえんですわ。それじゃあ』


そう言って、通話は切れた。


「……はぁ、まったく。これだから戦闘を知らない設計者は」

事が終わり、キャンベルはそう呟く。


ふと、昨日の夜の事を思い出した。


彼の言う事は分かる。

……実父は設計のミスで、死んだようなもの。そういう事故が起きない事も大切だから。


(……戦場で死ねるなら本望よ)

と心の中で言い聞かせる。


「そろそろ会議の時間ですね。急がないと」

ニッケラに言われ、我に返る。


「大佐が居なくて良かったわ。言葉遣いを指摘すると思うから」

先に出ようとしたニッケラに、キャンベルが言う。


「……ええ、そうですね。それでは先に行きますね」

そう言って彼は部屋を出る。


「さてと」

キャンベルも部屋を出ようとした、その時だ。


(……?)


嫌な感が働く。

廊下から外を見渡しても、何もない。


「……疲れ、かしら」

そう呟くと、自部屋の方へと歩いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ