表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

第6話 それぞれの思惑

「……で、だ。例の『範囲外の機体』については分かったのかね」

そう、ゴルセットは言う。


「いえ、詳細な事はまだ解析班の情報待ちでありますが、かなりのスナイピング技術があると見ています」

ギリシが、返す。


すると扉の向こうから

『失礼してもよろしいでしょうか?』

と、班長の声がする。


「ああ、構わんぞ」と、ゴルセットが言う。


「失礼します」

と、タブレットを持った班長が一礼をする。


「範囲外の機体の件ですが、特定出来ました」

と班長が言い、タブレットの写真を見せる。


「……この機体、アスベリーゼの主力機では無いな」

ギリシが言うと、班長は頷く。


「『ニベア試作機』と呼ばれる機体で、スナイパー専用で開発された物です。……搭乗者は今現在、まだ解析中です」


「大尉の言う通り、スナイピングに長けていた……か。この状況、どうする」

と、ゴルセットが言う。


「二正面作戦で、ネネントアームの軍本部基地と、他の国を同時に攻めようと思う」


「二箇所同時は、不利な作戦と言われています……大丈夫でしょうか」

班長が不安そうに言う。


「確かに不利な作戦ではあるが、ネネントアームの軍基地を制圧する訳ではない。あくまでも、シロヴィンやニベア試作機を出させないようにする為だ」

ギリシはそう返す。


「彼の意見には一理ある。それで、作戦時に狙う国は―――…」


▪▪▪


―――その頃、ネネントアームでは。

朝食を食べ、部屋に戻ろうとするキャンベルに、ドーマが慌てる素振りで呼び止める。


「そんなに慌てて、どうしたの」

やや呆れ気味にキャンベルは返す。


「ニッケラ中佐から、です。ネルベイさんと話していたんですけど、少佐を呼んでこいの一点張りで」


「はぁ」、とキャンベルは溜め息を漏らす。

「仕方ないわね。部屋に案内して貰えるかしら」


ドーマは頷き、部屋へと案内する。

該当の部屋に着くと、ドーマは扉を叩く。


「中佐、キャンベル少佐をお呼びしました」

『済まない、入ってもらえるか』


キャンベルが扉を開け、入る。

それを見たドーマは、会釈をしてその場を去った。


『やーっと来なすったか!』

通話画面の向うに居る、ネルベイが言う。


「すいません、急にお呼び立てして」

ニッケラが小声で言う。


「仕方がないわ。気にしないで」

と返しつつ、キャンベルは椅子に座る。


「で?私を呼んだのはどうしてかしら」


キャンベルが言うと、ネルベイは声を荒らげる。


『中佐から聞いたんだが、お前は何考えてるんだ!』


キャンベルは、目を閉じる。

それを見た彼は、言葉を畳み掛ける。


『シロヴィンはな、俺が初めて設計したもんなんだ。子どもみてぇなやつでな、それをあんたらの所に信頼して預けている。それを破壊されただ!?しかも、装備を増やせって……今の機体じゃあ無理に付けると、バランスを崩す。そうなったら、「飛ぶ棺桶」になっちまう。俺はそんなの真っ平御免だぞ!!!』


『リーダー、少佐に対して言い過ぎです!』

側に居た整備隊の一人が、横から言う。


『お前は黙ってろ!これはこっちの話だ!』

『お、落ち着いて……っ!』


「飛ぶ棺桶、か」

キャンベルがそう呟くと、ネルベイがこちらを向く。


『ああ、無理な装備の増設は……』


「……貴方、今の状況を理解しているの!?」

『なっ』


キャンベルの一声で、ネルベイは一瞬言葉を怯ませる。


「今は戦争下、戦闘に破損は付き物、状況を鑑みて武器を増設しなければならない……そうでもしないと生き残れはしない。それを何ですって?生みの子を壊すな、増設は危険だ、飛ぶ棺桶だ……!?そんな戯言(たわごと)を言わないでちょうだい!」


キャンベルは「ふぅ」と一呼吸を置いて

「私だって、シロヴィンは愛用機よ。貴方の気持ちは分かります……が、こちらの意向にそぐわないのであれば、今すぐにでも辞めたって良いのです。設計者の変わりはたくさん居るわ」


それを聞いたネルベイは、諦めた表情で頭を掻きむしる。

『……だー、分かりましたよ!その代わり安全性は度外視しますけど、それで良いですね?』


「ええ、そう言って貰えて助かるわ」


ネルベイは

『お前ら、使えるモンを探せ!』

と部下に一言言ってから、こちらを再度見る。


『まったく、昔からあんたにゃ逆らえんですわ。それじゃあ』


そう言って、通話は切れた。


「……はぁ、まったく。これだから戦闘を知らない設計者は」

事が終わり、キャンベルはそう呟く。


ふと、昨日の夜の事を思い出した。


彼の言う事は分かる。

……実父は設計のミスで、死んだようなもの。そういう事故が起きない事も大切だから。


(……戦場で死ねるなら本望よ)

と心の中で言い聞かせる。


「そろそろ会議の時間ですね。急がないと」

ニッケラに言われ、我に返る。


「大佐が居なくて良かったわ。言葉遣いを指摘すると思うから」

先に出ようとしたニッケラに、キャンベルが言う。


「……ええ、そうですね。それでは先に行きますね」

そう言って彼は部屋を出る。


「さてと」

キャンベルも部屋を出ようとした、その時だ。


(……?)


嫌な感が働く。

廊下から外を見渡しても、何もない。


「……疲れ、かしら」

そう呟くと、自部屋の方へと歩いていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ