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第4話 宇宙での激突 (後編)

『大尉、ガンネ隊の戦艦を発見。予め味方には範囲に近づかないように話しておりますから、こちらの艦隊による集中攻撃が可能です』

出撃準備中、ヨデルからの無線が聞こえた。


「報告ありがとう」

『いえ。……大尉、ご武運を』


起動させたドペルの指示機に、ギリシは乗り込む。

(今回、新兵6人を含めて15機……相手に対して無理な配置だが、何とか食い止めなければ)


機体状態の確認を終え、発進コンベアに乗る。


「……出撃する!」

その言葉で、彼は勢いよく出ていった。


▫▫▫


「ドーマ、聞こえる?」

出撃前、前方のシロヴィンに乗っているドーマに話しかける。


『……は、はは、は、はい!少佐!』


明らかに、彼の声が震えている。

模擬戦はしていたものの、今回が初の戦場(いくさば)だ。


「落ち着いて攻撃をする、囲まれたら退避、『基本のき』の姿勢でお願い」

『わ、わか、りました。がんばり、ます!』


(あの子、本当に大丈夫かしら……)

新人の初戦を何度か見届けているが、ここまで緊張をする兵士は彼が初めてだ。


『ドーマ、い、行きます!』

ドーマが出撃をする。


それを見届けたキャンベルは、前に機体を進める。


「……行くしか、無いわね。スタンバイ!ガンネ隊キャンベル少佐、行きます!」

『スリー、ツー、ワン!出撃!』


▫▫▫


「相手は、ドペル15機の編成。シロヴィン2機で大丈夫ですかね」

ニッケラがレーダーを見ながら、呟く。


「その為にイルバ大尉も居る。彼女らに託すしかない」

ガンネイドがそう返す。


「……なら、良いんですが……」


▪▪▪


キャンベルは、勢いよく敵陣の方へ飛んでいく。


(ドペルの編成で、ざっと10機以上……でも動きを見ると半分近くは新兵ね)

そう敵を素早く分析をする。


「ドーマ、そろそろ敵陣の攻撃範囲に入る。注意せよ!」

『は、はい!』


少し落ち着いたドーマの声を聞いて、キャンベルはひとまず安堵する。


そうこうしているうちに、敵の発砲が始まった。

2機のシロヴィンは攻撃を避けるかのように、左右に別れる。


キャンベルの目線に、見覚えのあるやや焦げ茶色の機体が見えた。


(……あの時の、指示機!)

これで、この奇襲に近い襲い方をする理由が分かった。


「ドーマ、聞こえる?」


『……は、い。少佐』

「私が敵陣の中に突っ込む!ドーマは自機の周りにいる機体に攻撃を」


ドーマの返答を待たずに、キャンベルは機体を傾かせる。

直線で降りるには通れないが、斜めならギリギリ間を縫える。


カンカンカン、と相手の実弾が翼に当たる音がする。


(……指示機に一回でも攻撃を……!)


ビームを放とうとした瞬間、相手の指示機は避けてくる。


「流石に手を打ってきた……わね」

キャンベルがそう呟いた瞬間、後ろで爆発音が鳴った。


『……し、し、し……しょう、さ!そ、操縦、不能、です!』

ドーマの声が、聞こえてくる。


「ドーマ、落ち着いて!早く翼から操縦ピットを切り離して脱出!」

『い、今は、む、む、無理!です!』


キャンベルが急いで体勢を立て直してドーマの方を見ると、ドペル5機に囲まれており、片翼から煙が出ている。

私自身で何機か敵を倒せるが、それよりも先にドーマが落とされる……と思った、その時だ。


目の前から、ビームの光が何発か見えたかと思うと、囲んでいた内の3機が撃破された。

レーダーを見ると、その方向の遥か先にあるニベア試作機が撃っているようだ。


『お主らの戦い方はハラハラして見てられん。後方の護衛は任せろ!』

「……はい、お願いします。大尉!」


キャンベルはもう一回旋回をし、残っているドペルに対して攻撃をする。


(とりあえずは、集中しろ……!私!)


▫▫▫


それから戦闘が続き、相手の機体が5機までに減った。

(あの後、ドーマは何とか脱出出来たと報告があった)


(流石に、これじゃキリがない)

戦闘が長引くにつれ、シロヴィンの武器の少なさが攻撃し辛い事が露呈する。


(余計なことを考えるな、目の前の敵を優先……!)


さらに攻撃をしようとした瞬間、指示機が黄色の信号を出している。

黄色は撤退を意味する。これ以上は無理だと思ったのだろう……そのまま敵戦艦に帰っていった。


▪▪▪


「襲撃回避、お疲れ様であった」

ガンネイドに言われ、3人は頷いた。


「そ、その。大事なシロヴィンを大破されて……そして、大尉に迷惑をお掛けしてすいませんでした」


皆に頭を下げるドーマに、イルバは肩を叩く。


「お前、今回が初戦と聞いたぞ。誰でも初めはこんなもんじゃい。そう肩を落とすな、次じゃ次」

「……はい」


ドーマは代わりのシロヴィンが届くまで、予備隊員として戦艦に乗ることになった。


「あの、中佐」

キャンベルはニッケラに声をかける。


「はい、何でしょうか」


シロヴィンの武器について、現状では長期戦は厳しいと話した。


「そうですか。それなら、ネルベイに話を通してみます」

「お願いします」


▪▪▪


『例のシロヴィンを目標に襲撃に出たと聞いた。どうなったか、ギリシ大尉』

ゴルセットが言う。


「一先ず、シロヴィン1機を撃破は出来ました……が」

ギリシは解析班からの情報、そして戦場の事を話した。


『そうか……帰ったら、この事を元に作戦を練るぞ』

「はい、分かりました」


―――こうして、ガンネ隊の襲撃は終わった。

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