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第2話 孤独の兵士を仲間に

翌朝、キャンベルは朝早くにガンネイドから呼び出しを受けた。

隊長室の扉を叩き、「おはようございます。キャンベルです」と声をかける。


「……ああ、入りなさい」

「失礼します、大佐」


ガンネイドが座っている所の机には、追加の資料と勲章が置いてある。


「今日から少佐、だな。よろしく頼む」

「承知しました」


2つを手にすると、ガンネイドは少し溜め息を漏らす。

それをキャンベルは見逃さなかった。


「……何か、心配事でもあるのでしょうか」


そう言うと、ガンネイドは苦笑いをする。

貴女(きじょ)には隠し事が出来んな」


話によると、宇宙空間に於ける敵の数が増えているらしい。

ネネントアーム国までに、シロヴィン2機だけで太刀打ち出来るかが問題との事だ。


「それでだ。出向までに、頼み事をしてくれるか」

「はい、よろしいですが……」


ガンネイドは少し前に身体を倒す。

貴女(きじょ)は、『ニベア試作機』の事は存じているな」


『ニベア試作機』―――

それは秘密裏で造ったという、ビーム兵器系のトイルアーマーだ。


「はい、存じております。確か、1機……テストパイロットが居るとか」

「ああ。そのパイロットに、戦力が乏しい我が隊の護衛として一緒に行けないか打診をして欲しいが」


ガンネイドは、再び溜め息をつく。

「そいつはだいぶ曲者(くせもの)でな」


ガンネイドの一つ下の後輩であるのだが、規律を乱す存在として窓際の部隊に追いやったという。

しかし、今は戦争下。規律を乱す者でも率いれなければならない。


「……分かりました。なるべく説得してみます」

「済まないな」


キャンベルは、隊長室を出た。

当の兵士は昨日呼び出して、使われていない寮の第二棟に居るとの事だ。


▫▫▫


資料をニッケラに渡し、キャンベルは第二棟へと向かう。

事前に知らされた部屋に向かい、扉を叩く。


「こちらにニベア試作機の搭乗兵が居るとお伺いしました。入っても宜しいでしょうか」


少し間が開き、「おーよ、入ってもよいぞ」と男性の声が聞こえた。

扉を開くと、お酒のツンとする匂いがした。


(一体これは、何なの……!?)


奥へ進むと酒の空き缶が入った袋が散乱しており、椅子の方に男性がお酒を呑んでいる。


「あなた、こんな時間からお酒を呑んでいらっしゃるのですか!」

キャンベルは思わず、そう言ってしまう。


「おいおい、自己紹介も無しにいきなり説教かい」

「は……も、申し訳ありません」


キャンベルは、改めて姿勢を正す。

(わたくし)、ガンネ隊少佐のキャンベル・バイと申します」


相手の兵士は、「うん」と頷く。

「……ワシぁ、イルバ隊の大尉、イルバ・ドムだ」


▪▪▪


イルバは酒を呑みつつ、

「一応話はガンネイドから聞いている。だが、わざわざあんたを来させたって事は、奴はあんたを()()()()って事だな」

と言う。


「あの、試してるとは」


キャンベルがそう返すと、イルバは手に持っている缶をこちらの方に向ける。

「あんた、なんで兵士をやっている」


『何故そう聞くのか』という発言を飲み込み、キャンベルは口を開く。

(わたくし)は、ガンネイド大佐に助けられた身。そのご恩を返すため、自分自身がその立場になれるようにしたいから、です」


イルバは、じっとこちらを見ている。

キャンベルは何も言い返せない。上の人間とは別の雰囲気をかもし出しているからだ。


「お前は礼儀が正し過ぎるのぉ」

と彼は言った。


「は……礼儀が正しすぎる?」

キャンベルがそう返すと、


「始めの仕草、質問の返答……普通の兵士なら、着いていく。じゃが、ワシはそういうヤツは嫌いじゃ。他にも立派な兵士なんぞ沢山おるから、もう帰ってくれ」


キャンベルは手を握る。

……このまま、引き下がってはいけない。


「そう、ですか」

キャンベルはそう呟き、腰を落とし膝と手を付いた。


「……私は成り上がりの兵士、礼儀正しく堅苦しい口調になるのは分かります。ですが、今は貴方のお力が欲しくて私はここにいます」


そして、頭を下げる。

「私の態度が嫌であれば、口をきかなくても構いません。どうか……どうか、同行をお願いします」


イルバは「よっこら」と立ち上がった。

「その言葉、本当かい」


キャンベルは顔を上げる。

「……はい」


「ほんだら、ちょっと着いてこいさ」


2人はそのまま、新兵用のシミュレータ室へと入っていく。


「なぜシミュレーター室に?」

キャンベルが聞く。


「ワシは筋を通すかは、実戦で拳を合わせてから決める。お前さんが頭を下げたとき、拳を合わせたいと思ったわ。納得出来る戦いが出来たら、着いていく。それでいいか?」


ここまで来たのなら、引き下がる訳にはいかない。


「分かりました、手合わせ願いたいです」

「おう」


お互い、シミュレーターの起動をする。


『準備はよろしいかな』

無線からイルバの声が聞こえた。


「はい、完了しました」

とキャンベルは返す。


『それでは、行くぞ!』

「……はい!」


▫▫▫


今回の模擬戦で使う機体は陸専用機のギルヴィン、接近専用サーベルであるドンベクのみで真正面から戦うという。


(さて、イルバ大尉の実力は……)


キャンベルがそう思ったのも束の間、イルバ側の機体がドンベクを持ちながら迫ってくる。


間一髪でキャンベルは後方へ避ける。

(……は、早い。でも、私も本気を出さなければ!)


相手のギルヴィンの上を飛び越えようとする。

しかし、それを見越したかのように片足を掴む。


『逃がすものかァ!』

「……ッ!!」


成す術もなく、そのまま横向きに倒されてしまった。


「……まだ、終わっていない!」


力一杯レバーを引き、仰向け状態に戻す。

そして、手に持っていたドンベクがお互いの機体に当てるような形になった。


『少佐になっただけ、あるな』

このままの体勢で、無線からイルバの声が聞こえてきた。


「私はやれることをやりました……悔いはありません」

キャンベルはそう返す。


『……ワシの敗けだ。あんたに免じて、ガンネ隊の手助けをいたそう』

イルバはそう言って、手を差し伸べてきた。


キャンベルはその手を取った。

「あ、ありがとうございます!」


▪▪▪


「……そうか、ありがとう」

ガンネイドはそう言うと、内線を切る。


「キャンベル少佐からですか」

ニッケラが言うと、ガンネイドは頷く。


「イルバの許可が出たそうだ。これで一応は戦力を賄える」


ニッケラは不安そうな顔をする。

「……しかし、あのイルバ氏の力を使わないといけないのは、少し心配であります」


「それは仕方の無い事だ。今を乗り越えることが大事だからな」


▫▫▫


事が終わったあと、キャンベルは別の部隊にいる情報通の同期を呼び止める。


「何?キャンベル」

イルバの事を知りたい、と伝える。


「ああ、大尉の事ね」と彼女は呟く。

そして、キャンベルに耳打ちをする。


「あまり大きな声では言えないのだけれど、大尉は過去に仲間を戦場で亡くしたと聞いたわ。自分が助けに行こうとしても、上官に止められて行けれなかったのが今でも根に持っているって」


成る程、通りでああいう風になるのか……と思った。


「話、ありがと。今度何か奢るわ」

「はいよ。キャンベルも少佐の仕事頑張ってね」

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― 新着の感想 ―
なんか癖のありそうなのが出てきましたよ(; ・`д・´) そうか、そうゆうことが でもなんか頼りがいありそうです。
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