第12話 宇宙へ再び(後編)
宇宙に出てから半日程が過ぎ、連携国の艦隊と無事に合流が出来た。
その間、キャンベルは体調が安定し司令塔の方へ戻る。
「お疲れ様」
キャンベルが言うと、ニッケラか頷く。
「航路的には大丈夫かしら」
「はい、今のところ敵に遭遇せずに進んでいます。当初の1日半で到着可能かと」
その時、レーダーにこちらの艦隊とは違う戦艦が表示される。
「……?中佐、この戦艦は何処のでしょう」
「ツァーラ艦……グロリアン国の戦艦です」
グロリアン国は敵陣営側だ。
(その戦艦がどうして)
その時、後方に居るニシジマ隊の戦艦から無線が入る。
「少佐、敵の戦艦がこちらを狙っているみたいです」
そうリンが言う。
「マーリィ王国の遊撃隊に、護衛を頼みましょう。ニシジマ隊では撃墜不可……」
そうキャンベルが言いかけた時、ニッケラが険しい顔をする。
「ワイベラスのギルギア艦のレーダー確認しました。あの時襲った艦です!」
キャンベルは驚いて、レーダー画面を見る。
こちらと同じ、グレン王国の方に向かっているみたいだ。
「ワイベラスの艦は、私が牽制します。リンは急いで遊撃隊に報告!」
「……は、はい!」
「主一人じゃ手に負えんだろう、ワシも出てええか」
イルバがキャンベルに聞く。
「そ、それれなら、僕も出ます!」
ドーマも言う。
「流石にドーマの技術では、戦艦相手に難題だわ。ここは私と大尉で出ましょう」
「でも……!」
ドーマが言い返そうとすると、イルバが彼の前へ手をやる。
「ここは、少佐の言う通り。あん時の二の舞になりかねん。……もう少し、技量を積んでからじゃな」
イルバにそう言われ、ドーマは静かに頷くしかない。
『こちら整備室。カンブロとニベア試作機の稼働完了です。いつでも出撃できます』
「……少佐、くれぐれも気を付けるんだぞ」
司令塔から出る前にガンネイドにそう言われ、キャンベルは頷いた。
▫▫▫
―――その頃、ギリシ側も敵陣営の艦隊に気が付いていた。
「大尉、例の艦隊を見つけました!」
レーダー師が言う。
「ツァーラ艦から報告です。敵陣営に攻撃開始をしている、との事です」
その言葉に重ねて、ヨデルが言う。
(ツァーラ艦には、こちらが出る前に攻撃要請を出していた)
「ネネントアームの戦艦3隻、マーリィとアジャンが1つずつ……か。ツァーラにはマーリィ、という形になりそうだな」
ギリシがレーダー画面を見ながら、そう呟いたその時。
『こちら第一主砲帯、敵の戦闘機が突っ込んで来ます!』
と無線が入る。
ギリシは司令塔の窓を見る。
「あれは……カンブロか?あんな中途半端な戦闘機で」
突如戦艦が揺れ、警報が鳴り響く。
「何があった!!」
ギリシの怒声が司令塔に響く。
『戦艦後方、何者かに狙い撃ちにされました』
そう整備師の無線が入る。
「おい、何に狙われた」
「……遠目に、『TAAXXXX4』というアーマーがあります。それに狙われたかと」
『TAAXXXX4』はニベア試作機の事だ。
カンブロで注意を引き付けて、スナイピング特化のニベア試作機で攻撃と、ギリシは考える。
そして、マイクを手に取り
「全隊員は救護簡易艦に乗り込み、脱出しろ。アーマーの事は後回しだ!」
と指示を出す。
「大尉、このままでよろしいのですか」
艦内が脱出準備中、ヨデルがギリシに聞く。
「このままやられるワケにもいかん。ドペルで例の2機となるべく交戦をする」
「私にも出させていただけませんか。あの時の屈辱を」
更に言おうとしたヨデルに、ギリシが肩を叩く。
「屈辱は今返すべきでは無い。今は身の安全が大事だ」
「……はい、分かりました。大尉、ご武運を」
▪▪▪
キャンベルは、カンブロに乗りながらギルギア艦を見渡す。
戦艦後方はニベア試作機の攻撃により、損傷しているのが見て取れる。
『もう少し攻撃した方が良いかね?』
イルバが無線で聞く。
「……そう、ですね……私が」
と言いかけたところで、キャンベルは嫌な気を察して急上昇をする。
それと同時に戦艦中腹からドペル1機がこちらに飛び出した。
(あれは!)
機体の色で察した。
―――この艦を率いる、ギリシ・シーランドがこちらに攻撃を仕掛けてきた、と。
「大尉、ドペル1機と交戦します。手助けお願いします」
『はいよ!』
キャンベルは、ドペルの周りを飛行しつつ攻撃のタイミングを見計らう。
ドペルは、サーベルをこちらに向かって振り回す。
(……くっ。シロヴィンじゃないから、判断に困るわ……!)
その一瞬、動きが止まったのをドペルは見逃さず、サーベルが翼に当たったのが衝撃で分かった。
『左主翼異常!左主翼異常!』とピット内にエラーが鳴り響く。
「動いて、動いて!動いて……ッ!!」
回復作業をするが、一向に直らずエンジンの推力は低下していく。
『……少佐!お助け!!』
そうドーマの声が聞こえたかと思うと、何かが取り付けられた衝撃を感じる。
「……ドーマ、どうして……!?」
『隊長からの指示です!』
取り付けられたのは、シロヴィンに搭載している『アーマー救護ロープ』だ。
引き上げられる途中、脇を見るとニベア試作機とドペルが戦闘をしている。
『ここは大尉に任せて、戻りましょう』
「……そうね」
▪▪▪
その後ドペルとニベア試作機の決着は着かず、ドペル側がその場を離れることになった。
ツァーラ艦の方も、『一時撤退』の信号を出して進行方向から去っていった。
こちらも無事とは言わず、キャンベルの乗っていたカンブロ含め遊撃隊のアーマーのほとんどが破壊、または一部故障で動けない状態になっている。
「戦艦が無事とは言え、戦力が削られてしまいましたね……大丈夫でしょうか」
ゲダイがガンネイドに言う。
「グレン王国の報告によればザンベル周辺の警備は固められているが、1箇所だけ薄いところがあると聞く」
中立国の特別権利として、首脳艦が出る宇宙域 (長さにして1500キロ) は飛び立つまで友好国関係なく自国以外の戦艦やアーマーの常時配備はしてはいけない、と言うものがあり、そこにアーマーは居ないという。
「そう言う際は、突入してもよろしいのですか?」
「『中立国法第8条項目4 中立国の承諾があれば、その区域から戦艦の出入りは可能である』と記されている。今回はそれを使ったのさ」
ガンネイドの言葉に、ゲダイは「なるほど」と言った。
▫▫▫
『大尉、全隊員の確認が取れました。無事でございます』
と、ヨデルから無線が入る。
「……分かった、ありがとう」
『戦艦とアーマーの方はどうされますか、大尉』
ギリシは少し考えた後に、無線を入れる。
「リベルア基地が近いだろう。そこで体勢を立て直す。あの戦艦の中にあったアーマーは仕方ないが、諦めるしかない」
『……はい、分かりました』
(しかし、だ)
あのカンブロに乗っていたのは、キャンベル・バイで間違いないだろう。
トドメを刺したかったが、ニベア試作機と助けに入ったシロヴィンではタチが悪い。
(……この因縁は、いつかヨデルと共に決着を付けようぞ)
そう思ったギリシは、仲間の元に戻っていった。




