お前の罠かっ!?
「サミュエル、なにをやってるの?」
フェリシアは戻ったピザ屋のテーブルの上で、地図に薄布を被せているサミュエルを見る。
「いえ。
直接この地図に描き込むのは悪いかなと思うので」
それは、あの像の印がある地図だった。
サミュエルは透ける布の上から赤いインクで矢印を描き足している。
「今、この像からこちらに向かって光が放たれたんですよ」
面白いです、とサミュエルは言う。
「他の像にあの目玉の水晶玉を嵌め込んでも、同じように光を放つのか。
また、放った場合、どちらの方角に向かって光が飛ぶのか。
興味あります」
「そう。
じゃあ、これらの像を巡ってみましょうか?
魔王様はどうされます?」
と振り返りフェリシアが訊くと、魔王は衝撃を受けたような顔をする。
「どうされますかってなんだっ。
私を置いていく選択肢があるのかっ!?」
「……だって、魔王様、帰ってきちゃいましたしね」
だから、ここに戻ってくるのは嫌だったんだっ、と魔王は叫び出す。
「私を置いていこうというお前の罠かっ。
所詮、私は魔王っ。
さては、仲間のフリをして、私のことを疎んでいたのだなっ。
おのれっ、勇者めっ」
……落ち着いてください。
どれだけ置いていかれたくないのですか。
外の世界がそんなに楽しかったんですか?
と思いながら、フェリシアは言った。
「いえ、私別に勇者じゃないですし。
魔王様がここに用がないのなら、一緒に来られていいんですよ。
せっかく戻られたのだから、ゆっくりされるのかなと思って」
「私は魔王だぞ。
ここに用があるのときは、ひとっ飛びで戻って来られるから別にいいのだ!」
魔王はそう主張するが。
……いや、あなた、しょっちゅうチカラがエンプティになって飛べなくなるではないですか、とみんな思っていた。
そのとき、近くで食べていた人間たちの話が聞こえてきた。
「いや~、こっちに戻ってきたら、やっぱり、このピザだよな」
食べたくて仕方なかったよ~とおじさんが笑って言っている。
「そういえば、勇者の一行に途中で出会ったんだけど。
立派な方たちだったねえ。
前会ったときより、仲間も増えてたよ。
あれなら魔王も倒せるかもしれないねえ」
その声が聞こえたらしい魔王が文句を言っている。
「そもそもなんで私が倒されないといけないのだ!
私は生まれたての魔王だぞっ!
まだなにも悪いことなどしていないのにっ!」
いや~、この魔王様、100年先でもなにも悪いことしそうにないですけどね……。
そこで、フェリシアはふと思い出していた。
そういえば、この魔王様、最初に言ってたな、と。
『私はそこからそこまでのこの森を統べる魔王』
……まさか。
ほんとうにそれだけの存在なのでは。
「お前、今、なにか失礼なことを考えているだろう」
とピザを追加した魔王に言われる。
「わ、私は本物の魔王だぞっ。
お前の剣でちゃんと倒されるぞっ!」
……倒されたいのですか。
「えーと。
王様本人がここに来るとは思えないですけど。
ウィリカたちが城から誰か呼んで厄介なので、そろそろ逃げましょう」
とフェリシアは立ち上がる。




