はじまりの地
吹き渡る風の中、もちもちのピザをフェリシアは魔王と共に食べていた。
「すべてはここからはじまったんですよね」
「そうだな。
お前の食い意地からはじまったんだったな。
……あのまま真っ直ぐ勇者としての道を進んでいれば、今頃、立派な勇者となり――」
勇者となり――
あなたを倒しに来ていたでしょうね、とフェリシアは思う。
「あのお前の代わりに勇者となった男はどうした?」
「アーローですか?
立派な勇者になってると思いますよ。
頼りになる強い仲間を集めて――」
「――強い仲間を集めて?」
……あなたを倒しにやって来ようとしているところでしょうね、とフェリシアは思う。
「ま、まあ、肝心の勇者の剣はここにありますから」
「だが、それでなければ私を倒せないというものでもなかろう」
確かに、なんでも倒せそうな雰囲気はありますね。
「アーローが違う剣であなたを倒したら、それが新たな勇者の剣となるわけですよね。
……増えてくじゃないですか、勇者の剣。
じゃあ、この勇者の剣もいらないものだから私の荷物に入ってただけなんですかね?」
「そんな、いらないから、ここ入れとこうとか、ゴミ捨て場みたいな嫁入り道具、大丈夫なのか?」
そう魔王が言ったとき、
「おねーさまーっ」
とウィリカがサミュエルたちを引き連れてやってきた。
いや、引き連れているのは、サミュエルだけではない。
「おねーさまっ。
ララサンダーがひどいんですっ」
「いいえ、大聖女さまっ。
あなたの妹、とんでもないんですよっ」
何故、二人仲良くやってくるのですか……。
「お久しぶりね、ララサンダー、ウィリカ」
「あっ、おねえさまったらっ。
私より、ララサンダーに先に声をかけるだなんてっ」
「あなたは身内じゃないの」
「そうよねっ。
私の方がおねえさまに近いわよね。
ほらご覧っ。
おねえさまの代わりにトレラント王の妃になれるのは私よっ」
「なんでそうなるのよっ」
とキレかけたララサンダーだったが、途中で恥じらうように止まると、サミュエルを見た。
サミュエルは、なんです? というようにララサンダーを見返す。
……いやあの、他国の公爵令嬢を物を見るように冷ややかに見ないで。
なにかの弾みに戦さになったらどうするの、と思う。
「ともかく、おねえさま!
助けてください!
ララサンダーがひどいんです!」
……いや、そこはララと結託しろ。
「ララサンダーと二人で私を陥れるとかしないの?」
「なんて卑怯な!」
「お姉さまはほんとうに勇者ですの!?」
ウィリカはララサンダーと手を取り合い、震えている。
いや、勇者ではない。
そして、なんなのですか、あなたたちは。
「あなたがたは、そんな半端な覚悟で私を陥れようとしていたのですか!」
怒り方がおかしい! とサミュエルたちに見られ、
「お前こそがラスボスっぽいぞ」
と魔王様に言われてしまった。




