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ようやく行き先がきまりましたっ

 

 アーローは魔王がいる方角に向かえば、姫もいると信じていた。


 伝説の剣を背負っているからだ。


 剣に導かれ、彼女は倒すべき魔王のもとに向かっているだろう。


 ある意味、それは当たっていた。


 ただ、一直線に魔王に向かいすぎて、もう出会ってしまっていたのだが。


 その魔王とフェリシアはお会計したときに一緒になったおばあさんとなんとなく仲良くなり、話していた。


 伝説の勇者を探している、と言うと、おばあさんは、

「伝説の勇者様なら、魔王の被害に遭っている場所に向かっているんじゃないかしら?」

と言ってきた。


 さすが、年の功。

 そうかもしはれない、とフェリシアは思う。


「魔王の被害に遭っている場所とは何処だ」

と魔王が訊く。


 鼻筋の通った超イケメンで高貴な感じのする魔王に話しかけられ、あら、とおばあさんは赤くなる。


「私が知っているのは、魔王のチカラで(けが)された湖かしらね」


「ほう。

 湖が魔王のチカラで。


 行ってみるか」


 魔王は即断した。


 行ってみるのはいいんですが。

 なんで、そんな他人事なのですか。


 あなたの力で侵食された湖なのではないのですか。

 把握はしていないのですかとフェリシアは思う。


 とりあえず、これから進むべき道筋を示してくれたおばあさんに礼を言う。


「ありがとうございます。

 私たちもそこに向かってみます」


 フェリシアは思っていた。


 魔王のチカラにより侵食された悪魔の湖で苦戦している伝説の勇者。


 そこに到着する我々。


 今だっ、と伝説の剣を投げ渡す。


 悪魔の湖に打ち勝つ勇者。


 お互いウィンウィンで完璧ではないか。


 ……いや、伝説の勇者が魔王本体ではなく、侵食された湖程度で苦戦していいのかはともかくとして。




 深々と礼をし、去っていくフェリシアたちを見送るおばあさんは遅れて席からやってきたおじいさんに言った。


「なんか高貴な人たちだったわ」


「まるで女神様のようだなあ」


 眩しげに魔王たちと話すフェリシアの横顔を見て、おじいさんは言う。


「これから、伝説の勇者様のところに行くそうだよ」


「もしや、あのお二人は大聖女様と伝説の魔導師様じゃないのか?」


 大、とか伝説の、とかついてしまったのは、二人の放つ雰囲気が只者ではなかったからだ。


 ありがたや、ありがたや、と二人は去っていくフェリシアと魔王たちを拝む。


「いつかこの日を思い出し。

 孫たちに語る日が来るだろう――」


 そんな予言めいたことをおじいさんは言い、おばあさんは、


「きっとあの方たちがこの世界にはびこる悪を倒してくださいますよ。

 魔王とか」

と微笑んだ。





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