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王様へのお手紙


「なにをしている? フェリシア」


 フェリシアは魔王にそう問われた。


 街道にある高い街路樹の葉を一枚むしっていたからだろう。


「いえ、いいものを見つけたので。

 これ、文字が書けるんですよ」

とフェリシアはその細長い葉っぱを見せる。


「ペンがなくても、こうして引っ掻くだけで、文字が書けて、しかも長く残るんです。

 使者の方にも言われたので、王様にお手紙を――」


 ほう、という魔王の目が笑っていない。


「それを誰に託すのだ?」


「そうですね。

 使者の方も帰ってしまいましたし。


 次の街で配達を請け負ってくれる方にでも託しましょうかね?」


「……王宮へのメッセージをか」


「だって、ドラゴンもいませんし。

 まだ寝てるんですかね?」


「起こしたらどうですか?」

とサミュエルに言われ、


「まあ、疲れてるんじゃない? 結構飛んだし」

とフェリシアは言う。


 書きかけの葉っぱを大事にしまった。


 それを魔王がじっと見ている。


 いや、なんなんですか、と思っているうちに市場に出ていた。


 ここの市場は華やかな布製品や可愛い小物などがたくさんある。


 カラフルな糸を撚り合わせたものがドレスの裾にヒラヒラとたくさんついていて。

 その中の幾つかに小さな鈴がついている服がある。


 歩くと音がするようだ。


「そうだ。

 この服、ウィリカに送ってやりましょう」


 なにかいい衣装があったら送れとか言ってたな、と思い出しながら、フェリシアは言う。


「そうだな。

 それを着せておけば、あの娘の到来がわかっていい感謝されるだろうな」


 みんなあれが現れる前に逃げられていいだろう、と魔王が言う。


 ……なんだか、あなたより、ウィリカの方が魔王みたいですね、

とフェリシアは思っていた。


 服を買って歩いていると、足にふわっとくすぐったいものが当たった。


 足元の煉瓦と煉瓦の間にぶわっと半円に植物が生えている。


 赤茶色の細い茎に小さな葉がたくさんついているようだ。


「これ、よく見るわよね。

 あちこちに、わしゃわしゃ生えてる」


 サミュエルが、

「フェリシア様、それお好きじゃないですか。

 それの蕾、ソースや肉料理なんかに入ってますよ」

と教えてくれた。


 塩や酢につけてある小さな蕾だ。

 いろんな料理に風味づけなどのために入っている。


「それ、あちこちの隙間に生えてくるんですよ。

 とても良い香りがする白い花が咲くんですが、大抵は蕾のうちに収穫して食べてしまうので、花を見る事はほぼないですね」


「あのビリッとした味のやつね。

 消化に良いって聞いたわ」


 植物もいろいろ役に立つのよね、そういえば、とこのとき、語っていたのだが――。





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