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私はカタリヤの聖女、ウィリカです


「私は、カタリヤの聖女、ウィリカです。

 あなたの罪を暴きます」


 そんなことをウィリカはララサンダーに向かって言う。


 そもそも、聖女って、罪を暴くものでしたっけ? と思いながらも、口を出すのも怖いので、みな黙って眺めていた。


「私の罪?

 私がなにをしたと言うのです」


「あの、おしずまりを。

 お二方」


 ララサンダーが激昂しかけたので、さすがに城の高官が割って入ろうとしたが、ララサンダーは、


「おだまりなさい」

とぴしゃりと言って、下がらせる。


 ……いや、あなた、今、侍女なんですけど、と全員思っていたが、やはり、ここでも突っ込めなかった。


 ララサンダーの家は公爵家であるだけでなく、歴代当主が多大な功績を残し。

 また、国の産業の発展に尽力し、交易でも力を持っているからだ。


 だが、そんなことは他国の王女であるウィリカには関係ない。


「ララとやら。

 あなたはお義姉様の荷物に勇者の剣を入れ、お義姉様が後宮に留まれないよう、画策したのではないですか?」


 その言葉をララサンダーは鼻で笑う。


「あら、私が何処からその勇者の剣を持ってきたって言うのよ」


「伝説の何処からか引き抜いてきたんじゃないの?」


「伝説の何処からって何処よっ。

 それに、それじゃあ、私が勇者になるじゃないのっ」


「自分が勇者になりたくなくて、お義姉様に押し付けたんじゃないのっ?」


「なんですって?

 よく聞きなさいよ、小娘っ」


 ……その方、他国の王女です。

 王家の血は引いてないようですが、とみんな青くなる。


「私は生まれてこの方、人に誇れるような立派なことは、なにひとつしていないわっ。

 こんな私が勇者に選ばれるはずないじゃないのっ」


 ララ様、威張って言うことではありません……。


「この侍女の座につくのにも、邪魔だった前任の侍女を故郷に追い返してついたのよっ。

 そんな人間が勇者の剣を抜けると思うのっ」


「なんて悪どいっ。

 お義姉様が邪魔だと思いながらも、ただ嫌味を言い続けていただけの私の方がずいぶんマシだわっ」


 ……どっちもどっちでは、とそこに、そっと現れていた王も一緒に思っていた。


「この城ではほとんど話してないけれど。

 フェリシア姫はカリスマ性があり、慈愛に満ちた方だと聞くわ。


 フェリシア姫の方が勇者に相応しいに決まってるじゃないのっ」


「そうね、それは確かにっ」


「……納得しないでください、ウィリカ様」

 断罪はどうなったんです、とダニエルが言う。


 だが、ウィリカは意外と的を射たことを言った。


「どういう過程をたどったとしても、剣はそれを持つのに相応しいもののところに行ったということかしら」


 二人は納得し合う。


 王を振り返り、ウィリカとララサンダーは言った。


「やっぱり、お義姉様は勇者ですわ」

「所詮、ここには留まれぬ方でしたのよ」


「誰か。

 この二人、もう家に帰らせろ」

と王は役人たちを振り返って命じる。





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