表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/71

あそこが人生の分かれ道でしたね


「お疲れ様です~。

 こんなところまで来てたんですね」


 サミュエルが肩になにかを担いできたと思ったら、絵柄の入った陶器の丸いデキャンタだった。


「はい」

とデキャンタと揃いの柄のカップでワインをみんなにくれる。


「ありがとう。

 気が利くわね」


 ちょうど喉が乾いてたのよ、とフェリシアは言った。


「そうじゃないかと思って、デキャンタごと井戸水で冷やしてもらったんですよ。

 あ、これ、もしかして、ベッドの上に敷くつもりですか?」

と川辺に集めた綿毛を見てサミュエルが言う。


「そうそう。

 ああでも、魔王様のマントの上にはこれ以上収まらないわ。


 なにか袋がいるわね」


「あとでとってきますよ。

 ……っていうか、魔王様のマントを綿毛入れにしてもいいんですか?」


 無礼極まりないですね、と何故か魔王サイドに立って言ったあと、サミュエルは、


「そういえば、ここにも袋がありますよ」

と言いながら、手にしていた清潔そうな白い布袋から白いパンのようなものを出してきた。


 みんなに配る。


 白くて薄くて、ふかっとした平らなパンみたいなものに、甘辛く煮た子牛の肉が挟まれている。


「美味しいっ」


「うむ。

 美味いな」


「聖女様たちにって」

とサミュエルは、さっきの岩の塔を指差す。


「……ここまでしてもらったら、他にもいろいろしてあげないといけない気になるわね」


「餌付けされてますね。

 餌付けできるんですね、聖女様って」

とサミュエルが言い、魔王が、


「そういえば、我らの最初の出会いもピザ屋だったな」

と言う。


「旅に出て、まず、魔王様に餌付けされたんでしたね」


「……いいのですか、聖女様がそれで。

 あ、聖女様じゃなくて、勇者様でしたっけ?」

と言うサミュエルに、


「勇者はアーローじゃない?

 かなり勇者っぽくなってたわよ。


 魔王を求めて旅をしている間に、仲間を作り、強くなり――。

 あれこそ、勇者のあるべき姿よね。


 ……あの分かれ道で、ピザを選んだ私と、魔王を追って行ったアーロー」


 運命が分かれたわよね、とフェリシアは言うが、


「でも、魔王様に出会ったの、フェリシア様の方ですけどね」

とサミュエルは言った。


「回り道が正解ってこともあるのかもね。

 魔王様は倒せそうにないけど」


「なにを言う、あの剣で、とすっとやれば、今すぐにでも私を倒せるぞっ!」


「倒されたいのですか……」

と楽しく揉めているころ、ウィリカがトレラントに向かい、出発していた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ